尾崎まことの詩と写真★「ことばと光と影と」

不思議の森へあなたを訪ねて下さい。
「人生は正しいのです、どんな場合にも」(リルケ)
2005.10/22開設

詩「かんがえるひとよ」

2012年11月18日 21時27分14秒 | 新詩集
かんがえるひとよ
めったなことで
ひとはがんがえることが
できないのだ
 
かんがえるひとよ
いまいちど
かんがえてごらん―
それは
かんがえているのではない
こころのなかで
つぶやいているだけだ

それはふしのない
うただ
あてさきのない
もーるすしんごうだ

いきているひとが
かんがえないかわりに
よるもひるも
しんでいるひとが
かんがえてくれているだろう
まんげつのあかりで
はまべのすなつぶを
かぞえるように

くものなかで みずのなかで
きのねんりんのまんなかで
くさをはむ やぎさんのなかで
くるったように かんがえている
うまれてくる
あかんぼうのために

海の底に
沈んでゆくレィディオが
さびたしたさきで
ひっしに
もーるすしんごうを
うつように
ちじょうの
ぼくらのために

だからかれらのように
かんがえてはいけない
いえのなかで といれのなかで
めしをくらう からだのなかで
やきたてのぱんのような
はだかのおんなのちぶさを
まえにして

はまべで
すなつぶをかえるように
うなそこで
でんぽうをうつように
ししゃたちの
くちをかたってはいけない

うまれているのだから
しんではいないのだから
かんがえるひとよ

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