珍しく気分のいい“スッキリ爽やかな”朝の目覚めに反して・・・朝から雨がパラついていて、出窓のブラインドとベランダのガラス戸のカーテン越しから差し込んでくる光の量がやけに少なく感じた。まるで何回目かの面接の今日を暗示しているかのようだった。
時折、部屋の中に流れ込んでくる風は冷んやりして気持ちがいいくらいなのに、Yシャツにネクタイという慣れないスーツに身を包んでしまうと、身体が発する体温の熱の逃げばがなくなって暑苦しくなって、手の平にも少し汗が滲んでくるのがわかる。
昨夜寝る前に書いた・・・無造作に枕元に広げたままになっていた履歴書と業務経歴書をクリアファイルに挟み、糊と証明写真も鞄に入れ・・・自宅の近所にポツンとある自販機で熱い缶コーヒーを買って飲みながら・・・ボクは駅へ急いだ。面接時間は11時だったが、面接場所の近くのファーストフードで一服がてら履歴書に写真を貼って全てを埋めようと思っていた。
目的地は西新宿5丁目だった。新宿西口から歩いて20分強ってところだろうか・・・
いつもなら平気で歩いていく距離ではあるが、雨交じりの中を傘を差して数十分も歩いていく気がしなくて、ボクは1区間だけ地下鉄に乗ることにした。その方が一服する時間も長く取れるからだ。地下鉄の駅から面接場所のビルまでは、徒歩でおよそ10分かかった。ボクはその場所を確認すると、近くにある大きなビルの1Fにあるマクドナルドに入った。
さすがに新宿西口から1キロもあると、10時過ぎではサラリーマンの姿は店内にほとんどなくて閑散とはしているが、近くの工事現場で働く人らしい一団が店の一角を占拠している感じだった。そんな店内だから、スーツ姿で年齢不詳なボクはクッキリと浮いているようだった。
一団に背を向けるように座席を選んで座り・・・履歴書の入ったクリアファイルをテーブルにおいて、タバコを取りだす。“あっ、しまった・・・まっいっか・・・”昨夜書いた時に使った水溶性のボールペンを持ってくるのをすっかり忘れている事に気が付いたのだった。ペンが違えば履歴書の雰囲気が全然違うものになって台無しの負け戦かもしれない。
だがまぁ、興味先行で目がとまって選んだ会社だったし、社内の雰囲気を掴みたかったと言う事もあるし“最初はバイトでもいいんです”と電話で伝えてあるから大丈夫だろう・・・そう言う勝手な解釈で気分を落ち着けて、普通のボールペンを握りしめた。その時だった・・・
“あんな突貫工事じゃ地震が来たら崩れるよなぁ~”後に座る一団の内の一人が確かにそう言ったのをボクは聞き逃さなかった。それに続いて“絶対に崩れるよな”“あれじゃぁ~ポシャるわな・・・”“だよなぁ~”“で、今日はどこまでがノルマなんだ?”“28Fじゃないっスか?”・・・面接時間が迫ってきている10時半の事だった。“もう1本吸ったらいくかな・・・”占拠していた一団はそれから5分ほどで席を立ってマクドナルドを出ていった・・・。 工事現場はどうやらこの近所らしい。そんなデカイ現場が近所に?・・・
耐震強度偽装マンションについては・・・昨年のちょうど今頃から話題に上りはじめたのではなかっただろうか?現在も公判中の1級建築士“姉歯”とヒューザーの社長“小嶋”で・・・報道でも時々取り上げられ続けてはいるが、やはり真実には霧の中って事だろうか??
現場で働く人間が“あれじゃぁ~”と言う工事とはいったいどんな工法なのだろうか?姉歯程じゃないとしても設計段階で建築士が“削っている”と言う事なんだと思わざるを得ない会話だった。日本全国を震撼させた事件だったのに・・・別のルートがいくつも存在していて、なんの改善もせず、一般には知らされず、そして今も続々と新しいビルやマンションが建築されている・・・彼らの会話はそれを想像せずにはいられないモノだった。ボクの脳裏に・・・崩れていく“ワールド・トレード・センター”が鮮明に浮かび上がった。それは・・・
聞き耳を立て始めてから数分後、灰皿の隅にタバコを軽く乗せた手の先の・・・そのタバコの少し長く連なった灰が、突然崩れるように落ちた事に見事に符合した一瞬だった。
ボクは・・・履歴書に写真を貼り付けてから“もう1本吸ってから”っとタバコに火をつけた。“さてと、行くか”と店を後にしてから面接場所のビルに入る前に、ボクは何気なくビルの壁と柱に目を向けた。外見は新しいビルだ。内装もガッチリしているようには感じる。
ボクはハッとした・・・“外見は小奇麗でも壁の中はスカスカなビルばっかりなんだよな~”“あちこち行くうちにそういう事もよく解るようになるぞ”以前お世話になった派遣先の先輩がニコニコしながらそう言っていた事を思いだした。“このビルは・・・大丈夫なのだろうか”
ボクがエレベーターに乗り込んだのは約束の時間の5分前だった。
時折、部屋の中に流れ込んでくる風は冷んやりして気持ちがいいくらいなのに、Yシャツにネクタイという慣れないスーツに身を包んでしまうと、身体が発する体温の熱の逃げばがなくなって暑苦しくなって、手の平にも少し汗が滲んでくるのがわかる。
昨夜寝る前に書いた・・・無造作に枕元に広げたままになっていた履歴書と業務経歴書をクリアファイルに挟み、糊と証明写真も鞄に入れ・・・自宅の近所にポツンとある自販機で熱い缶コーヒーを買って飲みながら・・・ボクは駅へ急いだ。面接時間は11時だったが、面接場所の近くのファーストフードで一服がてら履歴書に写真を貼って全てを埋めようと思っていた。
目的地は西新宿5丁目だった。新宿西口から歩いて20分強ってところだろうか・・・
いつもなら平気で歩いていく距離ではあるが、雨交じりの中を傘を差して数十分も歩いていく気がしなくて、ボクは1区間だけ地下鉄に乗ることにした。その方が一服する時間も長く取れるからだ。地下鉄の駅から面接場所のビルまでは、徒歩でおよそ10分かかった。ボクはその場所を確認すると、近くにある大きなビルの1Fにあるマクドナルドに入った。
さすがに新宿西口から1キロもあると、10時過ぎではサラリーマンの姿は店内にほとんどなくて閑散とはしているが、近くの工事現場で働く人らしい一団が店の一角を占拠している感じだった。そんな店内だから、スーツ姿で年齢不詳なボクはクッキリと浮いているようだった。
一団に背を向けるように座席を選んで座り・・・履歴書の入ったクリアファイルをテーブルにおいて、タバコを取りだす。“あっ、しまった・・・まっいっか・・・”昨夜書いた時に使った水溶性のボールペンを持ってくるのをすっかり忘れている事に気が付いたのだった。ペンが違えば履歴書の雰囲気が全然違うものになって台無しの負け戦かもしれない。
だがまぁ、興味先行で目がとまって選んだ会社だったし、社内の雰囲気を掴みたかったと言う事もあるし“最初はバイトでもいいんです”と電話で伝えてあるから大丈夫だろう・・・そう言う勝手な解釈で気分を落ち着けて、普通のボールペンを握りしめた。その時だった・・・
“あんな突貫工事じゃ地震が来たら崩れるよなぁ~”後に座る一団の内の一人が確かにそう言ったのをボクは聞き逃さなかった。それに続いて“絶対に崩れるよな”“あれじゃぁ~ポシャるわな・・・”“だよなぁ~”“で、今日はどこまでがノルマなんだ?”“28Fじゃないっスか?”・・・面接時間が迫ってきている10時半の事だった。“もう1本吸ったらいくかな・・・”占拠していた一団はそれから5分ほどで席を立ってマクドナルドを出ていった・・・。 工事現場はどうやらこの近所らしい。そんなデカイ現場が近所に?・・・
耐震強度偽装マンションについては・・・昨年のちょうど今頃から話題に上りはじめたのではなかっただろうか?現在も公判中の1級建築士“姉歯”とヒューザーの社長“小嶋”で・・・報道でも時々取り上げられ続けてはいるが、やはり真実には霧の中って事だろうか??
現場で働く人間が“あれじゃぁ~”と言う工事とはいったいどんな工法なのだろうか?姉歯程じゃないとしても設計段階で建築士が“削っている”と言う事なんだと思わざるを得ない会話だった。日本全国を震撼させた事件だったのに・・・別のルートがいくつも存在していて、なんの改善もせず、一般には知らされず、そして今も続々と新しいビルやマンションが建築されている・・・彼らの会話はそれを想像せずにはいられないモノだった。ボクの脳裏に・・・崩れていく“ワールド・トレード・センター”が鮮明に浮かび上がった。それは・・・
聞き耳を立て始めてから数分後、灰皿の隅にタバコを軽く乗せた手の先の・・・そのタバコの少し長く連なった灰が、突然崩れるように落ちた事に見事に符合した一瞬だった。
ボクは・・・履歴書に写真を貼り付けてから“もう1本吸ってから”っとタバコに火をつけた。“さてと、行くか”と店を後にしてから面接場所のビルに入る前に、ボクは何気なくビルの壁と柱に目を向けた。外見は新しいビルだ。内装もガッチリしているようには感じる。
ボクはハッとした・・・“外見は小奇麗でも壁の中はスカスカなビルばっかりなんだよな~”“あちこち行くうちにそういう事もよく解るようになるぞ”以前お世話になった派遣先の先輩がニコニコしながらそう言っていた事を思いだした。“このビルは・・・大丈夫なのだろうか”
ボクがエレベーターに乗り込んだのは約束の時間の5分前だった。
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