ご存じの方は意外に少ないと思うのですが、救急車を要請するため119番に電話すると
折り返すように間もなく110番から逆に電話が入ることを何度か経験しています。
かつて、宅配便のお兄さんがトラックから荷物を下ろす際
リアゲートに立て掛けて積まれていた鉄パイプの存在を忘れて開けたため
それが倒れて頭に当たり出血するケガを負った時、119番に電話し
まだ救急車が到着しないうちに警察から電話があり状況を説明しろと言われたことがあります。
また別の一件ですが、会社の看板の付け替え作業中、看板屋のオジサンが足場から足を踏み外して
3mほどの高さから地面に落下した際も同じことを経験しています。
もちろん、どちらも110番の警察になど電話はしていません。
その時の警察の説明では労災保険の関係で状況を訊いてくるとのことでしたが
だとすればそんなに急ぐ必要はないのですから、多分
同時に緊急配備などの必要性を含めた事件性の有無を探っているのでしょう。
ケガでさえそうなのですから、家族や医師に看取られる場合は何の問題もないのですが
自殺を含め、犯罪性がないと即断できない限りは
人が死ぬと警察により周辺の状況などを事細かに調べられます。
朝ちっとも起きて来ないので寝室に行ってみたら布団の中で息をしていない
畑から帰って来ないので迎えに行ったら倒れていた などなど
高齢者の多い私の周辺などは何人かこういう方がいて
必ず警察が来て事情を訊かれ「大変だった」と皆さん口を揃えて言います。
平たく言えば、例え家族でも殺人や傷害などの事件性を探られるのでしょう。
今になって警察沙汰になっている大津市の中学生の自殺ですが
これは間違いなく自殺なので“事件性なし”として警察で処理されたものの
自殺に至った経緯に刑事事件としての疑いがあるとして強制捜査にまで発展しているのです。
ところで、原則として医師以外の者が患者の死亡を宣言する権限はありませんので
自宅で首を吊っている状態の者を発見した時などはもちろん、倒れている場合なども
生きている、もしくは生き返るかもしれませんので
110番よりまずは119番で救急車を呼ぶことが正解なのでしょう。
ちなみに交通事故においても、交通路の確保、けが人の救援を優先し
警察への連絡はその後で良いとされています。
これも私の車同士の衝突事故での経験ですが、けが人はなかったのですが
燃料が漏れていて119番で消防車を要請、この燃料の処理をしている間に
気が付くとまだ連絡していないはずの警察がちゃんと現場に来ていました。
なお、119番の救急業務規程の中では
「明らかに死亡している場合」や「医師が死亡していると診断した場合」には
救急隊は患者を搬送しないと定められているそうです。
つまり、救急隊は死亡判定はできませんが不搬送とすることができ
それ以外の場合は患者が生存している可能性があるものとして
取り扱うことが求められているのです。
「明らかに死亡」とは、無体温・死後硬直・死斑・断頭・体幹部の離断・腐敗・炭化・ミイラ化
その他の明らかに生存状態とは矛盾する身体への損害(いわゆる社会死状態)をいいます。
社会死要件を満たさない場合、救急隊員は救命措置を開始し
医師の診断を受けるまでそれを止めてはならないとされています。
そして病院到着時の診察で死亡が確認されることを「病院到着時すでに死亡」と言います。
実数は不明ですが、救急車到着の際にすでに「明らかに死亡」しているため
後を警察に引き継いで病院に搬送されない人の数は半数以上はいると聞いています。
なぜ搬送しないのでしょう?
もちろん、“誰が見ても死亡している状態”なのですから“何をやっても助からない”わけで
治療のため病院に搬送する意味はないからです。
(ただし、現実には後になって問題になるケースもあるようです)
他方、絶対に事件性が無いとは言い切れないので現場保存のため
また、救急車を別の要請に回すため、ともされています。
このように、一般人が自殺者を発見した時は速やかに119番通報すれば良いのですが
病院に搬送されて無事命を取り留めた、つまり自殺が未遂に終わった場合
家族や親族には“治療費は健康保険が使えない自由診療による実費”という
思いもかけない事態が待っているというお話は後日に回します。