「高齢者の自殺の原因の多くがうつ病である」とする国の研究機関の根拠となる数字は
他には見つかりませんので多分、警察庁の「自殺統計」でしょう。
この中の、「年代別」の「原因・動機」は
遺書、書き込みなどに寄って“明らかなもの”を集計しているとされています。
その分類の一つが「健康問題」で
「=病気の悩み・影響(うつ病)」と但し書きが付いているのです。
これは何とも分かり難い書き方で、(うつ病)がどこに掛かるのかが不明です。
ただ、「健康問題」が数字的に7割を占めるのですから
「原因・動機の“多く”がうつ病」とするには「健康問題=うつ病」と解釈するのが適当なのでしょう。
いずれにしろ、うつ病なるもの、れっきとした病気であるとは言われているにしても
1度でも医師の診察を受けていたのならいざ知らず、本人の書いた遺書や書き込みの“文章だけ”で
うつ病に罹患していることを断定していることになります。
もちろん、周囲の人々にも聞き取り調査などはしているにしても
所詮、いわゆる状況証拠の域を出ません。
この断定の仕方ってこれで良いのでしょうか?
また一方では、今になって自殺未遂の治療に際し、保険治療が出来るように
「すでに精神疾患を患っていたため自殺に及んだ」とする便宜を
病院が図ってくれることが少なからずある、という事実を知りました。
その場で死亡が確認されない自殺未遂者が緊急搬送される時
それを受け入れる病院にとっては初めての患者であることが多いはずで
その見ず知らずの人に対して自由診療で高額な請求を上げることは
ある種、不良債権の危険を伴うことになりますので、それを避けたい病院と
他方では、本人または親族には、精神的なダメージに加えて上がることになる
高額な治療費の請求が避けられるのですから、これはこれで両者の思惑が一致するのでしょう。
こうして、未遂とは言え自殺に及んだ原因・動機はうつ病だったと記録として残るわけです。
つまり、死亡した人数の10倍にも達すると言われる自殺未遂者の“少なからず”は
便宜的にうつ病などの精神疾患に罹患していたことにされているのです。
残した遺書や書き込みを基に病気の悩みや影響が見られるとされる7割の人をうつ病とし
具体的な数字は不明にしても、少なからず含まれている未遂者の便宜的な診断書をプラスして
国などの研究機関では「高齢者の自殺の原因の多くがうつ病である」と
言い切ることにはやはり合点がいきません。
ただし、以前書きましたように、早く診察を受けて長期の投薬治療を受けさせれば
生命保険の免責期間の考え方と同じように、死にたい気持ちを
時間が変えてくれる効果を期待するもの、と私なりに無理やり解釈していますので
「高齢者の自殺の原因の多くがうつ病である」とし、予防には
この病気の早期発見が必要である、とする方向性には異を唱えるものではありません。