結局地下鉄はまだ動かず、車で移動しようにも、マンハッタンに入る橋は2時間待ちの渋滞。という訳で、クイーンズボローブリッジを歩いて渡って出勤しました。時刻は午後3時。まだ日も照っていたし、ラッキーな事に風が殆ど無かったので、吹きさらされることは無かった。早朝出勤した人はさぞ凍える思いをしたことと思う。
橋越えの所要時間約25分。自宅から目的地のスタジオまで、約1時間半。その後さらに小型ドラムセットをハンドトラックで押して、25分間で18ブロックほど移動。約1時間の演奏の後、今度は35分間で20ブロック移動。そしてニュージャージー州が運営するPATHトレインに乗り込み、ハドソン川の底を通って、ニュージャージーへ2本目のギグへ。帰りはこのギグで一緒だった、ニュージャージー在住のベーシストが親切にもマンハッタンミッドタウンのスタジオまで運転してくれた。たまたまマンハッタンに帰る彼のお友達を送るついでだった。ベーシストとそのお友達に感謝感謝。ミッドタウンから自宅へはさすがにタクシーに乗り、帰宅したのが、午前2時。運動不足の身体が悲鳴を上げていた。
ギグのダブルヘッダーはこの日に始まったことではない。時にはトリプルヘッダーだってあった。しかし今回程体力を使ったのはそう滅多に無い。
こんな1日の終わりに乗ったタクシーでさらに体力を消耗する事が。必要以上の料金を払えという運転手と、乗車してから降りるまでずっと言い争いをしなければならなかった。
今地下鉄とバスのストの対処策としてタクシーの料金制度が変更になっている。マンハッタン内を大まかに5つ程のゾーンに分け、その他のボローはそれぞれ1ゾーンにし、ゾーン内は一律10ドル。一つゾーンを超える度に5ドル増し。ただこれは「上限」なのであって、交渉すればそれ以下の料金でも良い。これはもう、誰もが知っている周知のルールなのだが、それでも余計に料金を取ろうとする運ちゃんが多いらしい。僕がこの日に乗ったタクシーの運ちゃんもその一人だった。orz
ミッドタウンで乗り込み、行き先を告げた途端、「いくら払ってくれる?」いくらもへったくれもない、もう決まってるだろ、ていうのに……。その事を告げると語調を激しくし、自分は昼間マンハッタンで規定よりも少ない料金しか受け取ってない、とか政府が決めた区域決めはおかしい、などとまくし立て、だから時間のかかるクイーンズに行く僕に余計払え、と。君の勝手な判断のツケをなんで俺が払わないかんの?と突っ込みそうになる。そのうち運ちゃんは「俺がこのルールが分からんくらいバカだと言うのか!」とかキレるし…。うん、これだけ簡単な英語で書いてあるこんな簡単なルールを分かっていないんだから、お前は馬鹿だ!とはさすがに言わなかったが、明らかに事実と違うことを言ってふんだくろうとするから、もう呆れた。
別に今のニューヨーク市政が完璧だとは思わないが、この非常時にマンハッタン内でのタクシー運賃は高めに、それ以外の広い地域では低く設定するのは道理だと思う。そうでもしなければ、あの狭いマンハッタンの道路は本当に渋滞だらけになってしまう。一方普段2ドルかけてブロンクスやクイーンズ、ブルックリン、スタッテン島から通勤する距離で正規の運賃を払ったらとんでもない額になってしまう。普段こういう地域からえっちらおっちら地下鉄で通勤する人達にはそんな正規運賃は大金だ。でも運ちゃんは往復に時間が掛かるマンハッタン外に行くのは嫌なのだ。儲けが少ないから。
別にストライキ中でなくても、例えば週末の夜半前など、マンハッタンからクイーンズに行ってくれるタクシーを捕まえるのは至難の技。そうやって日頃からあまり真っ当に運転していない輩が多いというのは分かっているが、こんな時にさえもまだ庶民からふんだくろうとは、まったく、とんでもない話である。その一方で乗客から普段の料金を訊き、それと同じしか請求しないという良心的な運ちゃんもいるということも記しておきたい。本当に様々な人が居る訳です、ニューヨークには。