plainriver music: yuichi hirakawa, drummer in new york city

ニューヨークで暮らすドラマー、Yuichi Hirakawaのブログ

ジャパナメリカ

2006年12月28日 | ニューヨークあれこれ
去年の春頃、僕の演奏を聴きに来てくれたことがきっかけでRoland Kelts, ローランド・ケルツさんと知り合った。アメリカでは作家であり編集者であり、また同時に東京大学の非常勤講師でもある。その彼が先月、"JAPANAMERICA: How Japanese pop culture has invaded the U.S."という本を上梓した。

最近アメリカでブームになっている日本産の漫画とアニメとゲームが題材。とはいっても幾つもの作品を事細かく紹介したガイドブックではない。主にアニメに関わる様々な人へのインタビューを軸にしての、業界のこれまでの軌跡と今後についての洞察が書かれている。そしてアメリカ人の父親と日本人の母親を持ち、幼少の頃から現在まで両国を頻繁に行き来してきたケルツさんならではの経験が大きく反映されている。

アメリカでは、つい最近まで国産の漫画とアニメとゲームが子供向けというコンセプトに捕われすぎたため、思春期以降の世代には見向きもされなかった。そのため時代的には後発だが、大人向けにも成りうる幾つかの日本産漫画とアニメが若者を中心としたアメリカ人にウケた。かつて自動車や電化製品で日本製品がアメリカを席巻した時と同じような調子で、これからは日本産漫画とアニメがバッシングを受けていく可能性がある。ケルツさんによればもう一部でバッシングは始まっているそうだ。

一方日本では、知的財産を取り巻く環境が先進国の中では劣悪なようだ。例えば世界一ヒットしたアーケードゲームとして、ギネスブックに掲載されているパックマン。25年前に開発したのは当時24歳だった一人のナムコ社員なのだが、世界中の殆どの人に知られていない。また全般的に日本の知的財産の価値があまりにも安く見積もられたため、次世代を惹き付けて育成する資本が枯渇しているそうだ。これは多くの日本人が持っている協調性が度を越して「個」を抑えつけ過ぎた結果なのだろうか?

「ジャパナメリカ」には秋葉原でアニメーター志望の少年にインタビューした件などで、メイドカフェやフィギュアショップなど旬(?)のアキバスポットがしばしば登場する。だからアキバ、と聞いただけで拒絶反応を起こす人には手に取りづらいかもしれない。しかしその拒絶反応さえなければ、1990年代以降のアニメについて何も知らない人でも楽しめる内容になっている。簡潔な英語で書かれているし、コムヅカしい単語やフレーズが少ないから、ネイティブスピーカーでなくても読みやすい。大雑把に言えば比較文化論なのだろうけれど、肩肘張らずに楽しめます。日本のアマゾンのサイトでも購入できるようなので、興味のある方は是非一度手に取ってみて下さい。

季節柄

2006年12月14日 | 音楽
今はクリスマスシーズンなのだから当然だけれど、今日は何年振りかでクリスマスソングを数曲演奏するようなギグをしてきました。室内用にしては割と大きいクリスマスツリーの隣の、プレゼントの箱に隣接しているのが僕のドラムセットですが、プレゼントではありません。



会場は不動産で有名なドナルド・トランプがマンハッタンに数個建てた高級マンションの一つの入り口ロビー。そこの上にはヤンキースの松井選手が住んでいるそうです。もっとも今の季節に彼がニューヨークにいることはまず無いけれど。

とにかく街中の道端でもみの木が売られ、カラフルに着飾れたクリスマスツリーが至る所にある。今はそんな季節です。でも今年は異様な暖かさで、今日は手袋どころかコートすら要らないほどだった。

張り替え時

2006年12月11日 | 音楽
先月は一度も記事を書けないでいました。でもそれよりもっと長い間更新していなかったのが、自分のドラムの皮。なので最近本当に久しぶりにドラムの皮を買ってみて、値段は上がったけれど、品質は目覚ましく良くなっていると実感した。皮といっても実際はプラスティックや合成繊維などでできている。

プラスティック製の皮は1970年代頃から主流になった。それまでの主流で、現在でも使われているのは成長しきっていない牛の皮製のもの。どちらにも長所と短所がある。
牛の皮製はちょっとした温度や湿度の違いで張り具合が急激に変わるので、こまめに緩めないと破れ易い。その点プラスティックや製は張り具合が安定し、余程理不尽な強さで叩かない限り、破れることはない。そして音色はと言うと、特に合成繊維のものが限りなく牛の皮製に近づいていると思う。

とはいってもプラスティック製の皮にだって寿命はある。最も頻繁に叩かれる皮の中心部付近がボコボコになったら明らかに終わりだし、たとえ皮の表面が平らでも、音に余韻が無くなってしまったらもう張り替え時。

個人的には新品の皮の音より、余韻が無くなる少し前の音が好きだったりする。それはなんとなく悪くなる寸前までよく寝かせたステーキの味のような感じかもしれない。