今回の帰国は文字通りの里帰り、仕事の予定は一本も無しで成田到着したのが先週末。
ところが急にレコーディングの仕事が入った。先週水曜日夜中の一時頃に仲良くしてもらっているサックス奏者Uから携帯に電話が来た。なんでもその日に録音した一曲がボツになり、急遽まったく別のアレンジでその曲を録音し直すことになったそうだ。「で、いつ録るの?」「え、いや今日だよ、今日の夜八時だってよ。」「あと20時間もないぢぁん!」「だからこんな時間に電話してんだよ!」「俺楽器持ってねぇよ。」「レンタルするから大丈夫だよ。」というような会話が。かなり急を要する展開になってきた。そもそもUにこの仕事の連絡が入ったのが前日水曜日の夜中十二時半。その後もUは段取りの電話の応対でほぼ徹夜。後から聞いた話によると、そのUを、会った事もないのに指名したレコーディングの音楽ディレクターB(米国人)も、十数時間後の録音の為に譜面を徹夜で仕上げていたらしい。
最近楽器を飛行機に持ち込むのは面倒になってきているし、日本でライブで演奏する予定も無かったので、今回本当になぁんも持って来なかった。東京の実家から持参できるのはスネアドラムとフットペダル、そして一組のスティックのみ。一ドラマーというより一太鼓叩き、という感じだ。演奏するのがバラードだった場合、ブラシが無いとシャレにならない、下手をすると数年前の二の舞いになるかもしれない(詳しくは
2月27日の日記をご参照下さい)。スタジオ入りの当日数時間前にブラシと予備のスティックをアタフタと購入。(俺は本当にプロなのかこんなんで?)
その後ちょいと腕ならしという感じで新宿ピットインの昼の部に飛び入りさせて頂いた。これもUがお膳立てしてくれた。まったく持つべきは良き友である。因にU自身も飛び入り要員だったわけだが、そこはこの道20年、自分+1が乱入しても温かく迎えて下さる出演者を選んでのことである。ただ、ピットインのスタッフ全員には説明が行き届かなかったらしく、「え、(今から)この人、(ドラムを)叩くの?」と狼狽した声が背後で聴こえた。どうもお騒がせしましてごめんなさい。
その後、タモリが「ここの水餃子は日本一旨い」と言ったらしい新宿二丁目(或は3丁目)の中華飯店で腹ごしらえ。水餃子約4個と大盛りのザーサイソバでもうタップタップの腹を抱えてソニースタジオへ。会場の1スタには、僕が第一希望としてリクエストしたグレッチのドラムセットがセットアップされていた。NYでもいつもこうだったら良いのに。orz
ほぼ同時刻にミュージシャン全員がスタジオ入りをした。各々楽器を調整しつつアレンジの説明を受ける。と書くとなんかかっこいいが実際はディレクターBがヲームアップがてらに吹くブルースに、僕とベースのSさんが何となく伴奏して、Uは持って来た二本のテナーサックスのどっちを使うか吹きながら選んでいただけだ。
そのうちUが「あのさぁ、英語でオタクみたいな奴を何て言うの? nerdってそんな感じ?」とか僕に聞いて来た。nerdかぁ、大体こんな挙動する奴かな、と少~し目線が浮いて口を尖らせた奴の物真似をしたらUにバカ受け。「他になんかそういう変な奴の呼び名は?」ていうから"spooky"とか"wacky"とか"weird"とか教えたらその都度大笑い。気がついたら録音体制が完璧に出来上がっていた。
演奏するのは、ソニー系のレコードレーベルから二枚ほどアルバムを出したNEさんが歌う一曲。前日だか前々日にかなりポップな曲調で録音したらしいが、誰も気に入らず(だったら録るなよっと突っ込みたくなるが我慢)まるで違う、ジャズ風にしたいとのこと。要するにホーンアレンジがしっかり決まったビッグバンドスタイルだった。久しぶりに譜面を読みながらの演奏、良い経験になりました。
たまに帰ってきた東京でこんな貴重な体験ができるとは思ってもいなかった。Uには感謝感激である。今度寿司でもご馳走しますよ、えぇ。