このブログをアップするのが随分久しぶりになってしまいました。だからという訳ではないけれど、先日のギグは何だか「久しぶり」なことが多かった。
まず場所。もうかれこれ3年はギグをしていなかったイーストビレッジ。共演したのは、2年3ヶ月振りになるジャズギタリスト/ピアニスト/作曲家のベレードさん。彼とは知り合ってから2年に一度の割合で演奏している。そして共演したベーシストは、なんと二十歳!年齢が自分より上のミュージシャンだったら、干支で一回りどころか二廻り半くらいの方と共演した事はあったけど、自分より一回り以上若いミュージシャンと一緒に演奏したのは、数年前まで講師をしていたナショナルギターワークショップでの生徒のキッズとくらいなものだった。いや、仕事で一緒になったミュージシャンとしては一番若いかもしれない。
まぁとにもかくにも、無事ギグは楽しく終わり、二週間後にまた同じ場所でやることになりました。こちらがベレードさんのお知らせページです。バンドはラテンジャズ、あるいはジャズロックという感じで、殆ど貸し切り状態で落ち着いて楽しんで頂けることでしょう。当然料理も美味しいです。賄いでご馳走になった僕が言うのですから間違いありません。
2月16日の木曜日は、その前々日のバレンタインデーにあまり気合いを入れず、二日にわけて楽しむようなつもりで御出で下さい。
Beledo Trio
ここからは少し話が変わります。
ニューヨークに越して来て直ぐの1995年から数年は、よくイーストビレッジでジャズライブをしていた。実は今も大したギャラを貰う仕事というのは、ニューヨークのローカルなギグでは滅多にないけど、イーストビレッジのライブジャズのギグは、本当にギャラが少なかった。賄いと酒とチップでもらった10ドル、なんてのはしょっちゅう。そんなギグのために、わざわざブルックリンからドラムセット引きずり出し、夜中の地下鉄を往復していたのである。
たとえ他の人のバンドで、ローギャラでもやっちゃう時もあります。ただそれは、今後またそのバンドで演奏できるという見込みがある時だけにしている。ノーギャラのギグは、友情出演とか、チャリティのためとかくらいかな。
「レギュラーのドラマーができないから、今回のギグだけ頼むよ。」という感じで引き受けたギグで演奏するうちに、いつしか自分がそのバンドのレギュラードラマーになってしまった、という経験もあるから、全ての「一回切りのトラのギグ」に正当なギャラを請求するのは、余り良くないかもしれない。「器が小さい。」と誰かに言われるかもね。(ちなみにトラ、というのは「エキストラ」から来ている。これは日本での業界語で、東海岸ではこういう代役のことは、サブと呼ぶ。これは "substitute"から来ている。)
でも、その一回こっきりのギグのために、他人の感性で作られた曲を憶えたり、数回リハーサルをするのに費やす時間と労力は、無視出来ない。そして、ワンステージをきっちりこなせる程に憶えた曲というのは、そう簡単に忘れられるもんでは無い。否応無しにしばらくは頭から離れない。こうなったら、やはり数回に渡って演奏したくなる。でも一回限りとして約束したら、再びその曲をやれる保証はまるで無い。
今までは、自分がバンドに入るという形の、サイドマンとしてのギグばかりしていた。そして近頃、細々ながらも自分がリーダーのバンドをやるようになってきて、今まで分からなかったことが少しずつ分かるようになってきた。何のことか?バンドメンバーの選び方についてである。バンドリーダーとしては音楽的に一番自分との演奏がかみ合って、再び一緒に演奏したい!とギグが終わる毎に思わせるくらい上手いプレイヤーをメンバーにしたい。また、自分のバンドをもっと世間に知らしめようとするなら、ネームバリューのあるメンバーをゲットするというのも大切だ。
ただこれは僕個人の場合にしか当てはまらないかもしれないが、どんなに凄いプレイヤーでも、一回演奏しただけでは、そのプレイそのものも、人柄も分からなすぎる。今の僕がリーダーのバンドには、まず「平川雄一というドラマーは今はそんな有名ではないし、ギャラを沢山くれる訳でも無いけれど、今日のギグは面白かったから、また今度一緒にやろう!」と思ってくれる人が必要なのだ。
そうでなければ、別にその場限りの「セッション」ということで、どんなステージになるかはその時になってからのお楽しみ!というギグにすれば良い。それはそれで楽しい。特にジャズは即興音楽だから。しかし、即興演奏を充分に繰り広げるには、実は沢山の音楽的約束事をクリアしていないと成り立たないことが多い。一番分かり易いところだと…。例えばピアノトリオでスタンダードを演奏するギグだったとする。もしピアニストとベーシストが共通の曲を知っていないと、このギグは成り立たない。
バンドリーダーとして一番「もう勘弁してくれい!」というタイプの人は二種類。まずこれは、もう演奏以前のそのまた前の基本的マナーのレベルなのだが、ギグを依頼した連絡に何の返事もしない奴。そういう輩の電話番号を、最近はなるべく素早く電話帳から削除するようにしている。もう一つは、「この曲、知っている?メロディー演奏出来る?」と訊いて「うん、知ってる、メロディーも弾けるよ。」と答えておきながら、本番で、ヨレヨレなことになり、メロディーを弾いてないドラマーの僕でさえ恥ずかしくなるような事態にしてくれる人。このタイプの電話番号も電話帳から消える日は近い。