plainriver music: yuichi hirakawa, drummer in new york city

ニューヨークで暮らすドラマー、Yuichi Hirakawaのブログ

Back to my jazz gigs on Tuesdays

2008年08月29日 | 音楽
7月8月の出張シリーズが終わったので、今週からまた腰を据えて自分名義の火曜日のジャズギグに臨んでいきます。

先週共演したのはギタリストの増尾好秋さんとベーシストの奈良岡典篤君。

火曜日の午後7時スタートのこのギグは、ライブバンド目的というよりも仕事帰りにふらりと立ち寄って一杯ひっかけていくお客さんの方が多い。とはいえ、演奏している身としてはいくら演奏が自分的に良くても、お客さんが一杯も飲まずにとか、一杯だけ飲んでそそくさと帰ってしまうと大いに気になる。

嬉しいことにこの日は殆どのお客さんが長居して聴いてくれた。その中にはジャズピアニストのMihoさん、フルート奏者/エンジニアの志展さん、ピアニストの海野さん、そしてセカンドセット全曲でアルトサックスを吹いてくれた洋祐君がいる。

プロのジャズメンとして30年以上のキャリアを持つ増尾さんは、日本での学生時代に渡辺貞夫グループでプロデビュー。その2年後渡米して以来、今日までニューヨークを拠点に活躍している。その間ロイ・ヘインズ、チック・コリア、リー・コニッツ、エルビン・ジョーンズ、ラリー・ヤングなどの一流ジャズメンと共演してきた。それだけでも異例のことなのに、テナーサックスの巨匠ソニー・ロリンズのバンドに通算6年在籍という途方もない経歴の持ち主である。また今年は通算16枚目のリーダーアルバムを発表している。

演奏中はギターとベースの音に耳を傾け、自分でイメージできる範囲で明確なビートを叩く。または自分で叩いた音に反応した彼らの音をまた聴く。その結果バンドのサウンドがまとまり、一曲一曲にクリアーな表情がついた。まるで音に形があるように、楽器が鳴っている周りの空気が一瞬でピシッと引き締まったり、ふわ~っと広がるのが手に取るように感じる。こんな体験が楽しくない訳が無い。その一方であの曲のあの時に違うことを叩いていたらどうなったのか、というよう想像が尽きない。これは自分の演奏を違った角度から省みる良い機会になる。

長年のキャリアを持ちながら今でも精力的に演奏し続けている根っからのジャズギタリスト、増尾さんとの共演は来週も同じ火曜日に同じ所で予定していますので、NY在住の方は是非お越し下さい。

Arthur's Tavern

NGW 2008 is over

2008年08月20日 | 音楽
今年のNationak Guitar Workshopが全て終了した。僕が働いていた最終週の会場はコネチカット。その最終日の午後、ゲスト講師としてジョン・スコフィールド、スティーヴ・スワロー、ビル・ステュアートのトリオが訪れた。

このトリオの結成は10年以上前になる。それぞれが卓越したミュージシャンでなおかつ3人の息がピッタリ。2時間のクリニックでは最初と最後にそれぞれ予め決められた3曲を演奏し、その間にQ&A。どんな質問もくだらなくは無いと言い、その言葉を裏付けるかのようにスコフィールドさんは一つ一つの質問に誠意を持って答えた。講堂は200人ほど入る規模。生徒にはなるべく大きい声で質問をするようにとも言っていた。また彼ばかりにでなく、スワローさんやステュアートさんにも均等に質問が行くように仕切っていた。

このようなクリニックの進め方や気配りは講師として極当たり前のことだが、今年NGWに招かれたゲスト講師の中には残念ながらこの辺ができず、プロとしての責任感が感じられない人が多かった。その点スコフィールドさんはミュージシャンとしては勿論、講師としても金メダル級だった。マイルス・デイヴィスのバンドを卒業した彼がソロアーティストになってから25年以上経つけれど、今だにジャズギタリストとして高い人気を誇っている。その秘訣はまずミュージシャンとして一流であり、加えてビジネスセンスが良く、人付き合いにも気配りができるからだろう。

ちなみに上の写真は、NGWのトレードマークを実物化したもの。フォークギター、ロックギター、ジャズギターの異なった胴体を継ぎ合わせて作られたもので、演奏用ではありません。

2008 NGW final week

2008年08月14日 | 音楽
今年の夏は合計4回NGWのドラム講師を勤める。あともう少しで今年の最終日。朝夕には長袖長ズボンが必要なくらい涼しくて心地良い天気が続いている。



週毎に開催されるこのワークショップ一回の期間は5日半なので、先週の最終日から今週の初日までの束の間ニューヨークに帰還。期間中に数週間籠っている田舎町は、渋滞が無ければニューヨークから車でほんの一時間半で行ける。その町の隣接する丘の上にある全寮制高校の施設から突然マンハッタンに来ると、何やら調子が狂う。地下鉄に乗って地上に出た直後の一瞬、見慣れたはずの高層ビルに戸惑う自分に戸惑う。別に文明から隔離された密林の奥地にいたわけでもないのに。





マンハッタンでは人間の手で植えられた木や芝生、護岸された川だけが住民にとっての「自然」。僕が籠っているところでは、人間がこさえた芝生と雑木林と小さい丘でできている箱庭のようなキャンパス自体が、その役割を担っている。どちらも人工的に自然を模倣していることには変わりない。ただ緑の割合が違うだけ。そう判っていても、久しぶりに見たマンハッタンの密集した高層ビルは特殊に見えて仕方が無い。





たった1日半でもニューヨークならでは、な出来事があった。例えば店で店員が注ぐテイクアウト用コーヒーが細かい事をいちいち指定しないと、自分の欲しいのとはまるで別物になるということ。今回アッパーウェストサイドのベーグル屋で、大盛りアイスコーヒーを注文した時も例に漏れず。注文してからつい気を許して友人と話している間に注がれた僕のアイスコーヒーのカップの中身半分以上は氷で、色は過剰なクリームのせいで殆ど白。こうなるともうコーヒーではない。注文した時側にいた地元のおっさんに、"You're not gonna get what you want." と言われたとおりになった。おまけにそのコーヒーらしきものについてきたストローの先は塞がっていたし。この時点でこの街自慢の「文句言った者勝ちの法則」を思い出し、英語とスペイン語入り交じりで店員のアミーゴに頼んでコーヒーを注ぎ足してもらった。"Bueno, amigo?" "(Es)ta bien, tabien. Gracias!"・・・。



先週のワークショップはブルース特集だった。今週はジャズ特集で、最終日には特別講師としてジョン・スコフィールドさんが自身のトリオを連れて2時間のクリニックを行う。