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プラモQ&A:第2回 パーツの白化ってなんなのさ?

2015年12月03日 18時53分23秒 | プラモQ&A

思いつきで始めた企画の第2回になりますが、なんと1回目の記事から1年半経っています(;・∀・)

もう笑うしかありませんね( ゜∀゜)アハハ八八ノヽノヽノヽノ \ / \/ \

 

さて、今回はパーツをニッパーで切出した時に発生する白化現象についてお話をしたいと思います。

特に素組み派にとっては憎いアイツです。

 

先に結論を述べておきます。

白化を軽減するためには次のことに注意してください。

①切れ味の落ちたニッパーを使用しない。

②刃の薄いニッパーを使用する。(先端薄刃ニッパー(ゲートカット専用)(タミヤ)、アルティメットニッパー5.0(ゴッドハンド)など)

③二度切りする。

目立つ白化が発生したら、爪で擦るかマーカーなどでタッチアップしましょう。

 

それでは、順を追って説明します。とりあえず下の写真を見てください。

写真の赤丸で囲ったところが白化した部分です。周囲と比べて色が白っぽくなっています。

専門的な話になりますが何が起こっているかと言うと、パーツを切出す際に「クレーズ」というものが発生しています。

「クレーズ」が発生する現象を「クレージング」と呼びます。「クレーズ」について少し説明したいと思いますが、ちょっと専門的になりすぎるので興味のない方は飛ばしちゃってください。簡単に言うとプラスチックをある程度の力で引っ張ると発生します。それだけ覚えておいてください。


ではクレーズとは何か、何故白く見えるのかについて説明します。が、ぶっちゃけた話、ここを読んだところで作品がレベルアップするわけでもないです。

興味のない方は少し下の方まで飛ばしても構いません。

それでは説明に入ります。

当然のことながら、プラスチックを引っ張ると伸びます。しかし、プラスチックは勝手に生えてくるものではないので、縦方向に伸びると横方向に縮みます。

そうするとどうなるかというと下の図のようにプラスチック内に隙間が出来てしまいます。

 

実際にはこんなにきれいに隙間が並んでいるわけではありませんが、この隙間が発生した図中の黄色い範囲がクレーズとなります。

あえて難しく書くと「局部的な分子鎖の配向により、密度が低く隙間を含んだ構造」です。

ちなみにこの隙間そのものは顕微鏡などでないと判別できないくらい小さいものです。

さて、肝心のなぜ白く見えるのか?

まず、色付きのプラスチックでも光は透過します。

そして、クレーズの内部には小さな隙間がたくさんありますから、隙間のある部分とない部分では光の屈折率に違いが出来てきます。

この屈折率の違いから見た目には白く見えてしまいます。


さて、クレーズについて説明が終わったところで、何故クレーズが発生するかについても説明したいと思います。

ニッパーでパーツをカットすることそのものに焦点を当ててみます。

④の寸前まではニッパーによってパーツを切断していますが、最終的には千切れてしまいます。

そして、この千切れた部分にクレーズが発生しています。

これはどんな手段、工具を用いても最終的にはこうなってしまいますが、発生するクレーズの程度は使用する工具、手段でかなり違ってきます。


これまで長々と説明してきましたが、白化を軽減するための方策について考えていきたいと思います。(一番最初に述べた結論と内容は重複します。)

①切れ味の悪くなったニッパーは使わない。

切れていないということはゲートをずっと押し伸ばし続けているということになります。

ということは、切れ味の悪いニッパーを使っていると、最悪の場合、ゲート跡全部にクレーズが発生します。

②刃の薄いニッパーを使う。

刃が薄いということはゲートに食い込む量が小さくなりますので、引っ張る力が減少し小さな面積でもゲートを保持できます。

結果的にクレーズの発生範囲も小さくなります。

この手のニッパーではタミヤの「先端薄刃ニッパー(ゲートカット専用)」、ゴッドハンドの「アルティメットニッパー5.0」がおすすめです。

③二度切りを行う。

本来はパーツをえぐったりしないための予防策的な手法ですが、通常ゲートは長方形ですので、

図のように長辺を挟むようにニッパーを当ててやると引っ張る力を多少減少することが出来ます。

また、ランナーについている状態だと長辺にニッパーを当てることが困難なため二度切りが必要になります。

他にも、5~6回に分けてカットする、ゲートを1~2mm位残してすべてヤスリで削り落とすなどの方法もあるようですが、手間が掛かり過ぎなのであまりお勧めしません。

最後に、白化した部分をどうするかということについて

①爪で擦る。

よく「熱で・・・」という説明をみますが、これは違うんじゃないかなと。

確かにクレーズは熱で処理すると消失しますが、ガラス転移温度以上で処理する必要があります。スチロール樹脂のガラス転移温度は100℃・・・

多分、単純にクレーズ内の隙間を押しつぶしているということではないかと。

(捕捉:ガラス転移温度・・・樹脂が急激に軟らかくなり始める温度と解釈してください。)

②タッチアップ

マーカーやビン入り塗料を白化した部分だけに塗布します。

あと、一応接着剤でも消えますが・・・失敗したら目も当てられなくなると思いますので、やめておいた方が良いと思います。

 

以上です。長々とお疲れ様でした。

なるべく専門用語を使わずに書いてみましたが、如何でしたか?質問等は店頭やコメント欄で。

(ぶっちゃけた話、実は高分子材料は私の専門外だったり・・・)

 

興味のあるかたは”高分子材料”や”材料力学”の文献を読んでみるのも良いかと。

図書館にいけばより取り見取りだと思います。


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