初めて じいの頭蓋骨見た ~
飲みこんだ食べ物が どういう風に流れてゆくのか
よく判った
たまに 食道に 食べかすが残る
主治医が云うには
じいは 薬がよく働いていて ここまで頑張ってきた
普通は ALSの進行はもっと早いのです
発症2006年とあったから
今度の春で 11年ってこと?
未だに 食べ物だけは 自力で噛める 飲める
顎が咀嚼して 食道を滑ってゆく
なんか ああ 生きてるんだ
そう想ったら
訳の判らない衝動が襲ってきて
泣いてしまった
お父さんの莫迦たれ
私の方が もう限界だよ
なんでこんな病気になったんだよ
じじいになっても 山に入って
おいしい山菜やきのこ 採ってこいよ
私が完全に治るまで 看ていてくれるって 云ったくせに
嘘つき
そらや 姪っ子ちゃんの結婚式まで
シャンと立ってろ!
二人とも 父親がいないから
あんたが 代役で バージンロード 歩くんだよ!
もう 最近の身体の不調もあって
私の頭のなかは ぐしゃぐしゃになった
気持ち悪いと思ったら 過呼吸を起こしていた
やはり 最大のストレスは じいの病
最大の恐怖 不安
いつも 眼をそらしていたけど
直にみてしまうと こうなる
これからも少しずつ進行してゆく じいの病気
やがて訪れる 終末
私が 看取るんだ
嫌だよー
泣いても泣いても 病気は治らない
少し休ませてもらって 続きは明日になった
敗北
頭が凄まじく痛かった
吐き気もした
手が小刻みに震えていた
完璧なる 敗北。