想い事 家族の記録

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ぼくの手は、貴女の為に汚されることさえ赦されなかった。触れたら壊れてしまうものだったのか。それとも、最初からぼくは、選ばれることのない影だったのか。

2025-03-05 22:53:44 | 日記
雪国の掟と、大根おろしの最期


「今年最後の雪かな~」と思った矢先の大雪。
咲きかけの福寿草も、容赦なく雪に埋もれる。
春の訪れを待つ植物たちにとっては、まるで試練のようなこの光景。

銀世界も見納めかと思いながら、寒い早朝を歩いていると、
見えてきたのは雪かき中のご婦人。
「おはようございます」と挨拶を交わしながらも、
心の中では別のことを考えていた。

――この雪、まさか国道に投げたりしないよね…?



実は、うちの近所では雪かきの流儀がなかなか豪快なのだ。
もう本当に迷いがない。力強く、そして潔く、豪快に、

どんどん国道へ雪を放り投げていく。

それは、暴力的であり、狂気じみた光景だった。

もちろん、その雪は走る車に踏みつぶされる運命にある。
「これぞ自然な雪処理システム!」とでも思っているのかどうかは知れないが、
見ているこっちはヒヤヒヤだ。

以前、投げられた雪が車のバンパーに炸裂した瞬間を目撃したことがある。
さすがに運転手ブチギレ案件では…?と身構えたが、
意外にもそのまま走り去っていった。
慣れてるのか、それとも悟りを開いているのか。
雪国ドライバー、さすがである。

で、先ほどのご婦人は…?と振り返ってみたら、
きちんと道の端に雪を寄せていた。
おお、良識派! と、安心した。

さて、職場に到着し、シフト表を確認すると、
あるべき名前の部分が真っ赤に塗りつぶされている。
あの、ドタキャンの申し子、天使みたいだった子の名が…!
しかも、血のような真っ赤なマジックて。

「ついに解雇通達されたのか? 」

やはり、フェアリーは淘汰される運命にあった。
この社会の厳しさに、めげることなく、
彼には強くなってもらいたい。
とりあえず、まずは、心身共に立ち直って欲しい。
彼の未来に幸あれ、とそっと祈ることしかできなかった。

そして、食材管理問題。

仕事に取りかかろうとした矢先、またしてもこいつと眼が合った。
――解凍済み大根おろし(長期滞在組)。
ずっと冷蔵庫に居座り続けるこの大根おろし。
しかし、そろそろ決着をつけなければならない。

前に新店長に「解凍した食材ってどのくらい持ちます?」って聞いた時、
「袋に書いてある期限内ならOK!」と即答されたけど、
いや、それって冷凍保存前提の話では?
解凍した食材が半年も持つわけないと思うんだが? 
今日は意を決して、壁に貼ってある「使用期限サーマルシール一覧表」とやらをチェック。
該当の大根おろしナンバーを登録してみたところ、出てきた消費期限は――

「解凍後3日以内」

やっぱりアウトやん!
なんで今までスルーしてた?
ていうか、新店長、絶対料理しない。
料理をする人間なら、容易に想像がつく事だ。
きっと奥さんがご飯を用意してくれて、それを当然のように食べてるんだ。
「たまには肉が食べたい!」とか云いながら。

「解凍した食材はサーマルシールを発行し、期限内に使うように」
忌々しいと思いつつも、メモを貼りつけ、
大根おろしをゴミ箱に叩きつけた。

――さようなら、大根おろし。君のことは忘れない。














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