面白くて眠れなくなる素粒子
竹内薫 2013 PHP
学校で物理学を学んだのは高校1年が最後。大学は文系の教養課程で物理も選択し、テキストは朝永振一郎の「物理学読本」だったが、数式や計算問題も出てこなかった。それから60有余年。門外で知った物理学は学校で教わったことと全く違うことばかり。
この本も数式が一行もなく、これでいいのかと疑いたくなるが、成程、成程と核心部分を説得させられた気になった。
大勢のいろいろなサイエンスライターから何時の間にか叩き込まれたのか、自分で勝手に思い込んでいたのか、少なからず間違ったイメージを抱いていたと軌道修正させてくれた。
以下はその抜書き:
§ ヒッグス粒子は粒じゃない。
素粒子物理学の理論は、素粒子の質量がゼロでなければ計算がうまくいかなかった。
実際には多くの素粒子に質量がある。
1964年、ピーター・ウエア・ヒッグス(1929~)は、質量を与える素粒子の存在を予想。
正しくは「宇宙全体にヒッグス場が一様に満たされていて、素粒子はヒッグス場と相互作用する。その相互作用の強弱が質量。」
空間の一点にエネルギーを集中させると、そのヒックス場が隆起する。その隆起した状態を「ヒッグス粒子」と言っている。
CERNはLHC:Large Hadron Colliderで陽子と陽子を衝突させ、ヒッグス由来の光子を測定し、126GeVの辺で光子が増えているのを発見。
§ 光子:力を伝える素粒子。
電気や磁気の力を伝える。
昔の人は「電気の力」「磁気の力」があると思っていた。
現在では「電気と磁気は同じもの」ということが分かっている。
物体の間では光の粒子が飛び交っている。
私たちは「光子」を直接見ることは出来ない。
2つの磁石の間が光っている訳でない。
「光っているのが見える」ためには光子が眼の中に入らないといけない。
§ 重さがゼロの素粒子は光速で飛ぶ。
重さがゼロだと止まることができない。
全ての素粒子に重さが無かったら、互いに飛び回っていて固まることが無く、
陽子や中性子などが出来ることもなく、宇宙に物質は存在しない。
光子は光速で飛び、何かに衝突し、相互作用して消滅する。
§ ブラックホールには毛が無い。
「重さ」「回転」「電荷」の3種の性質しか持たない。
もし3つの性質が同じなら、互いに区別つかない。
素粒子にも毛が無い。
素粒子は基本的にブラックホール。時空に空いた穴。
あまりに小さいところに重さが集中し、時空に穴が開いた。
超ひも理論では「素粒子は穴」ということになる。
§ 素粒子の本質は量子場
量子場はデジタルな場。デジタルと言う説明も比喩。
エネルギーが1点に集中し、そこに小さなデジタルな波が生じる。
励起、excite。それが素粒子。
素粒子を「粒」とする捉え方は、本当はインチキ(益川俊英)。
§ 素粒子論は相対性理論をも含む。
磁石が有り、その周りに砂鉄が有ると、磁場ができる。電場は無い。
しかし磁場を動きながら見ると「電場も有る」。
相対運動さえ有れば、そこに磁場の他に電場も有る。
顔を正面から見ていると横顔は見えない。
動きながら見ていると横顔も見える。
なぜ動くと横顔が出てくるかとは質問しない。
電場は、いわば磁場の横顔。
観測者と観測対象との関係によって、何が観測されるかが変わる。
「相対性理論」の計算の枠内であれば、様々な観測結果が有り得る。
「不確定性」が入ってくるので、観測結果は客観的・絶対的には決まらない。
§ 素粒子に不確定性がなければ世界は潰れてしまう。
素粒子はいつも不確定。
原子は大きさを持っている。人間が原子の上に乗れば潰れてしまう。
それなら何故、私たちが立っている床は潰れないのか。
引用:「ファインマン物理学V:量子力学(砂川訳)」p.74。
§ 超対称性粒子。
クオークにはスカラークオーク、レプトンにはスカラーレプトンの超対称性粒子。
超対称性粒子は「回転」が逆。
電子の相棒(スカラー電子)は回転が1/2でなく、ゼロ。
光子の相棒(フォティーノ)は回転が1ではなく、1/2。
フェルミオンの相棒はボソン、ボソンの相棒はフェルミオン。
ヒッグス粒子の相棒はヒッグシーノ。
超ひも理論は、こうした超対称の世界を記述する、長さを持った素粒子の理論。
§ 超ひも理論の主役は「Dブレーン」。
超ひもの振動は境界条件で決まる。
それがDブレーン ( ディリクレ境界条件)。
11次元のDブレーンの間を「ひも」が繋いでいる。
竹内薫 2013 PHP
学校で物理学を学んだのは高校1年が最後。大学は文系の教養課程で物理も選択し、テキストは朝永振一郎の「物理学読本」だったが、数式や計算問題も出てこなかった。それから60有余年。門外で知った物理学は学校で教わったことと全く違うことばかり。
この本も数式が一行もなく、これでいいのかと疑いたくなるが、成程、成程と核心部分を説得させられた気になった。
大勢のいろいろなサイエンスライターから何時の間にか叩き込まれたのか、自分で勝手に思い込んでいたのか、少なからず間違ったイメージを抱いていたと軌道修正させてくれた。
以下はその抜書き:
§ ヒッグス粒子は粒じゃない。
素粒子物理学の理論は、素粒子の質量がゼロでなければ計算がうまくいかなかった。
実際には多くの素粒子に質量がある。
1964年、ピーター・ウエア・ヒッグス(1929~)は、質量を与える素粒子の存在を予想。
正しくは「宇宙全体にヒッグス場が一様に満たされていて、素粒子はヒッグス場と相互作用する。その相互作用の強弱が質量。」
空間の一点にエネルギーを集中させると、そのヒックス場が隆起する。その隆起した状態を「ヒッグス粒子」と言っている。
CERNはLHC:Large Hadron Colliderで陽子と陽子を衝突させ、ヒッグス由来の光子を測定し、126GeVの辺で光子が増えているのを発見。
§ 光子:力を伝える素粒子。
電気や磁気の力を伝える。
昔の人は「電気の力」「磁気の力」があると思っていた。
現在では「電気と磁気は同じもの」ということが分かっている。
物体の間では光の粒子が飛び交っている。
私たちは「光子」を直接見ることは出来ない。
2つの磁石の間が光っている訳でない。
「光っているのが見える」ためには光子が眼の中に入らないといけない。
§ 重さがゼロの素粒子は光速で飛ぶ。
重さがゼロだと止まることができない。
全ての素粒子に重さが無かったら、互いに飛び回っていて固まることが無く、
陽子や中性子などが出来ることもなく、宇宙に物質は存在しない。
光子は光速で飛び、何かに衝突し、相互作用して消滅する。
§ ブラックホールには毛が無い。
「重さ」「回転」「電荷」の3種の性質しか持たない。
もし3つの性質が同じなら、互いに区別つかない。
素粒子にも毛が無い。
素粒子は基本的にブラックホール。時空に空いた穴。
あまりに小さいところに重さが集中し、時空に穴が開いた。
超ひも理論では「素粒子は穴」ということになる。
§ 素粒子の本質は量子場
量子場はデジタルな場。デジタルと言う説明も比喩。
エネルギーが1点に集中し、そこに小さなデジタルな波が生じる。
励起、excite。それが素粒子。
素粒子を「粒」とする捉え方は、本当はインチキ(益川俊英)。
§ 素粒子論は相対性理論をも含む。
磁石が有り、その周りに砂鉄が有ると、磁場ができる。電場は無い。
しかし磁場を動きながら見ると「電場も有る」。
相対運動さえ有れば、そこに磁場の他に電場も有る。
顔を正面から見ていると横顔は見えない。
動きながら見ていると横顔も見える。
なぜ動くと横顔が出てくるかとは質問しない。
電場は、いわば磁場の横顔。
観測者と観測対象との関係によって、何が観測されるかが変わる。
「相対性理論」の計算の枠内であれば、様々な観測結果が有り得る。
「不確定性」が入ってくるので、観測結果は客観的・絶対的には決まらない。
§ 素粒子に不確定性がなければ世界は潰れてしまう。
素粒子はいつも不確定。
原子は大きさを持っている。人間が原子の上に乗れば潰れてしまう。
それなら何故、私たちが立っている床は潰れないのか。
引用:「ファインマン物理学V:量子力学(砂川訳)」p.74。
§ 超対称性粒子。
クオークにはスカラークオーク、レプトンにはスカラーレプトンの超対称性粒子。
超対称性粒子は「回転」が逆。
電子の相棒(スカラー電子)は回転が1/2でなく、ゼロ。
光子の相棒(フォティーノ)は回転が1ではなく、1/2。
フェルミオンの相棒はボソン、ボソンの相棒はフェルミオン。
ヒッグス粒子の相棒はヒッグシーノ。
超ひも理論は、こうした超対称の世界を記述する、長さを持った素粒子の理論。
§ 超ひも理論の主役は「Dブレーン」。
超ひもの振動は境界条件で決まる。
それがDブレーン ( ディリクレ境界条件)。
11次元のDブレーンの間を「ひも」が繋いでいる。