記憶のスクラップ・アンド・ビルド

当然ながら、その間にタイムラグがあり、
それを無視できなくなることこそ残念です。

宇宙の果てまで・・・ その1

2019年04月19日 10時51分56秒 | Weblog
時間・空間は仮想現実であって、実在ではないのではないか。
そのように考えられたら今まで分からなかったことで理解可能になることも有るのではないか。
時々そんなことを夢想するが、その先がなかなか進展しなかった。
宇宙の果てから量子の振る舞いまでを少し違ったキイワードで見直している本でも有ればと思いながら書店をぶらついていたら、ブックカバーに
“量子の非局所性から「空間のない最新宇宙像」へ”
とあるのが眼についた。それが副題。
主題は
「宇宙の果てまで離れていても、つながっている」
直ぐには何のことか分かり難い。少し読むと「量子もつれ」のことと推測された。
ジョージ・マッサー(著)、吉田三知世(訳)インターシフト(2019刊)。
原著(George Musser 2015)の題名は
“Spooky Action in a Distance.”
これも直ちには意味が分からない。
もしかしたらアインシュタインが何かで云った言葉かも。
Spookyとは俗に幽霊の出そうな気味悪い感じがするということらしい。
「距離」が幽霊みたいに振る舞うと言いたいのだろうか。
こちらにも副題が有って、
“The Phenomenon That Reimagines Space and Time,
and What it Means for Black Holes, the Big Bang, and Theories of Everything.”

邦題をピッタリ言い当てている現象に「ペンローズのねじれた三角形」がある。
彼が少年時代に考案し、遺伝学者の父親と英国の心理学誌に投稿した図形。
京都のナカニシヤ出版は心理学教材として3片の木材を互いに直角に組み立て立体化し、特定の角度から見ると閉じた平面の三角形に見えることが容易に確認できるようにしている。
エッシャーはその三角形の仕組みを様々な図案の中に組み込み、一見自然だがよくみると矛盾して奇妙だと感じる図案を幾つも考案し、錯視の一種として広く知られている。
その後、ペンローズはこの三角形を沢山平面に繋げた図形を描いて準結晶の構造を示し、さらにツイスターと呼ぶ空間モデルに発展させている。

「量子もつれ」という語は毛糸球をほどくときに糸がこんがらがった状態をイメージさせるが、それで良いような、良くないような。
「もつれ」を辞書で調べていたら
「蝶々や ほこりの中を 縺れゆく」
とあった。
本書を少し読んだら、「量子もつれ」だけでなく、物理のいろいろなパラドックスを非局所性の問題として述べている。

宇宙のインフレーションは超光速のスピードで膨張したと言うが、光速を超えることは認められない筈でないか。門外漢の私には納得できない疑問のひとつだったが、この本に寄れば、空間は物体でないからアインシュタインの原理に縛られないらしい。
銀河自体は超光速で移動していなくて、銀河の間に次々と超光速で新しい空間が生じていると考えるらしい。

古いところでは、ニュートンは仮説を作らないと言ったが、重力の原理自体が仮説ではないかと思われ納得できなかったが、ニュートン自身は重力の原因を分からないとしており、原因を説明する仮説は設けなかったということらしい。
物理学の歴史は局所性の原理と非局所性の考え方の間を行ったり来たり繰り返してきた、と述べている。

インターネットで www.intershift.jp/uchu を開くと、目次とともに
“はじめに あらゆる謎の根源”
の章が公開されていて、キィワードは「非局所性nonlocality」だと紹介している。
われわれの経験する世界では、すべてのものに場所が有る。
われわれは場所について、場所と場所との関係について、はっきりした感覚を持っている。それが局所性locality。
局所性は、われわれの思考や感覚が自分のものだという自信の基盤だった。
ところが量子力学をはじめとして、いろいろな物理学の分野で場所も距離も存在しないかもしれないと言う説が提案されている。それが非局所性の主題。
著者が多くの研究者にインタビューしたときの様子や要旨などがネットで見られる:
https://spookyactionbook.com.

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