生活の知恵を無くした日本人
生活が豊かになるにつれ、日本人は物を大切にしなくなりました。無駄は裕福さの証明だと
言わんばかりに、物をすてるということに恐れを抱かなくなってしまいました。本来、内容物
を保護するための 包装ですら、外箱に小さな凹みがあっても事故品扱い。粉々に砕けたとい
うならまだしも、割れたせんべいや、縁が少し欠けたカステラ、ケ-キ、どら焼き等、不良品
として撥ねられる。これが我が国で正統派として堂々とまかり通るのです。
モノが悪くなっているわけではないのにと言うなら、コンビニで売られている弁当なんてそ
の典型ですね。賞味期限はおよそ半日。しかも保冷されたショ-ケ-スの中に置かれているの
に時間がくれば片っ端から捨てられていまう。
保冷ケ-スの中に並べられた弁当やおにぎりが、半日やそこらで悪くなるなら、70年前に
学校に行っていた我々世代の人間は、毎日食あたりを起していたでしよう。完全給食のなかっ
た頃なんて、学童や勤め人だってみんな弁当持参するものでした。学校はもちろん、職場にだ
って冷房が完備されていない時代、夏になっても朝つめた弁当を学校や職場に持って行き、机
の中に入れておいたんです。
だけど、食あたりする人間なんて、誰一人としていなかった。先人の知恵もあった。ご飯の
中に梅干しをいれておけば傷まない。おにぎりだって同じです。炊き立てのご飯を弁当箱に詰
める前には、きちんと湯気を取る。そうしておけば、ご飯は傷みにくい。
当たり前のことすら忘れ去り、少しの手間をかけるより、金で解決した方が手っ取り早いと、
どんどん捨てる。食材にしたって同じです。魚は切身、野菜は必要な量を必要な部分だけ。味
噌、梅干しや漬物、煮物、役物、揚物のおかずですら出来合いで済ませる。専業主婦ですら、
そういう人が多くなってきているんじゃないだろうか。
こんな生活状態を続けていたら、いつしか食材が手に入らなくなってしまうだろう。今はま
だ輸入するお金があるから買えていますが、こんな経済状態はいつまでも続かなくなってしま
うでしよう。真剣に考えれば誰でも解ることでありながら、目先の消費者に媚びを売り、消費
者もそれを求めている。食料自給率か゜30%程度といわれている我が国は後何年もつだろうか。