5月に訪ねてから半年振りだ。南牧川の川筋を辿って歩く。とてもワクワクする。
歩くのは、もちろん、車の頻繁に通る県道側ではなく、川を挟んだ対岸に続く裏道だ。
5月に来たときは、民宿月形園から道の駅オアシス南牧までは歩いた。今回はその先も含めてすべてを歩く考えなんだ。
今日は下仁田駅から南牧村の月形園まで歩き、明日は同じ道を引き返す計画だよ。
なぜそんなに南牧川にこだわるのか。5月に来たときの南牧川の美しさと、川沿いのその道の静かな雰囲気がたまらなく気に入ったからだよ。
上信電鉄・下仁田駅に着いたのは昼少し前だ。
着いたらまず、タンメンと餃子を食べようと決めていた「一番」というラーメン店へ向かったが、今日はあいにく休みだったんだ。
さてそれではどこの店に入ろうかと悩んでいたときに、地元の人に「きよしや食堂」を教えていただいた。
教えていただいた道を行ってみると、店の前にはすでに人が並んでいた。この店はカツ丼が人気のようだ。
店に入ると、自分たちも人気の「下仁田カツ丼」を頼んだんだ。
どんぶりのご飯の上に、上州豚肉のカツが贅沢に2枚ものっている。肉はとてもやわらかく、味は申し分ない。人気店のわけがわかる。
カツ丼に満足し、店を出て路地を進むと、こんな六地蔵があった。龍栖寺というお寺のようだ。手を合わせ、旅の安全をお願いして歩き出す。
さあ、出発だよ。南牧村の民宿・月形園まで、10キロほどの道のりだ。
八千代橋からの鏑川の景色だよ。
さらに道を進む。左の大きな塊は大崩山というらしい。
いよいよ県道を離れ、南牧川をはさんで県道と平行して続く裏道へ入るよ。車もバイクも入ってこない静かな道だ。
少し行くとこんな水場があったよ。山の水だろうがあまり冷たくない。
とてもいい感じの古い吊り橋だが、すでに橋面の板が落ちている。
静かな道は続く。対岸の県道を走る車の音もほとんど聞こえてこない。
古い庚申供養塔がある。年月を感じさせるね。
11月に入ったので紅葉も始まっているだろうと期待していたが、今年は気温の高い日が続いていたせいか、山の上の方で葉の色がいくらか色付いてきているくらいだ。
段差を勢いよく落ちる本流の向こうに見えるのは魚道というのだろうか。あんな急流を魚は遡上できるんだろうかね。
南牧川の水の色は、5月に見たときとは違う。まだ台風の名残が消えてはいないようだ。とても濁っているよ。最初に見た鏑川の水の色とはぜんぜん違うね。
養蚕が盛んに行われていた頃を偲ばせる造りの家が多く見られる。今は養蚕はおろか、人も住んでいない家が多い。
道の舗装は切れて、土混じりの砂利道に変わった。左手は崖のような急斜面に杉の木が立ち並んでおり、下のほうに南牧川の急流が見え隠れしている。道の端が崩れそうで怖い。山側によって歩く。
700~800メートルも歩いたろうか、ようやく未舗装の暗い道を抜けてホッとしたよ。
台風の雨で崩れたのか通行止めとなっていたけれど、横をすり抜けて通った。
水は相変わらず濁っている。地元の人にきくと、
「こんなことは今までになかったね。いままでは濁っても水はすぐにきれいになったよ。こんなことは珍しい」
と、腕組みをして流れを見ている。
見覚えのある美容室があったよ。
月形園のおかみさんのお姉さんとご主人が笑顔で出てきた。
「お茶を一杯飲んでいってください」
しきりに勧める。
「怖かったですね。水と一緒に石がごろごろ転がる音が響いてくるんですよ」
台風の大雨で南牧川の水かさが増したときの様子をそう語った。
「水は川幅一杯に、道のすぐ下まで来ていました。この辺の人はみんな避難したんですが、私たちは家の横の川がいつ溢れるか心配で家にいたんですよ」
家のすぐ横に、山から急流で流れてくる細い川があり、家の前の南牧川に落ちている。
「いつでもすぐ避難できるように車にいろいろ積み込んで様子を見ていたんですよ」
30分ほどお邪魔して失礼すると、ふたたび歩き出したよ。距離はまだ半分もある。暗くならないうちに宿に着きたい。
小沢橋から道は黒滝山のほうへ向かう県道202号に合流するが、500~600メートルほど行ったところで大塩沢川に架かる小さな橋を渡ると、また南牧川に沿った道にもどる。
その橋の手前に、「住吉の滝」という道標があったので降りていくと、岩の間を落ちている滝があったよ。落差はおよそ5メートルと小さいが勢いがあり、水の音も静寂を割るすさまじさだった。「南牧村滝巡り」ガイドのパンフレットにも載っている滝の一つだ。
足が少し疲れた頃、先方に14%勾配の上り坂が現れたよ。
そして同じ勾配の道を今度は下り、夕暮れせまる静かな景色の中を行くよ。
5月に来たときにはちゃんとあった橋だが、台風の大雨に壊されたんだろうか。
対岸の県道には車やバイクがものすごいスピードで走っていく。しかしこちらへはその音もほとんど届かない。とても静かだ。
安養寺の六地蔵だよ。
県道へ渡る橋だ。人は通ってもだいじょうぶそうだね。
橋の上から上流を望む。だいぶ暗くなってきたよ。
県道側の橋の袂が崩れていた。なるほどこれが通行止めのわけだったんだね。
大日向の県道はすっかり日が暮れて暗くなっている。
虹の大橋を渡れば民宿・月形園はもうすぐだよ。
「お疲れ様。先回りしていましたよ」
先ほどお会いした月形園のおかみさんのお姉さんが笑顔で迎えてくれた。そのあとでおかみさんもニコニコした顔を見せた。元気そうでよかった。
きれいな部屋に通された。コタツが用意してあったのはうれしい。
夕食はやっぱりすばらしい。おかみさんとおかみさんのお姉さんの、温かい心のこもった手料理だよ。
おっ切り込みうどんも、鮎の塩焼きも、上州豚肉もとてもおいしい。
柚子味噌をつけて食べたえび芋はみみ爺にはじめてだった。大きな花豆は甘くやわらかく煮てある。
ずらりと並んだお料理はすべて上品な味付けで、濃くも薄くもない。家内とおかみさんの料理話はいつまでも尽きることがなかった。
もちろん翌日の朝ごはんも言うことなしだ。なかなか手に入らないという山くらげは噛んだときの触感も味付けも特別だったよ。
みみ爺は若い頃、塩鮭の細い骨がのどに刺さって、自分ではどうにもならず医者にとってもらったことがあるんだ。それ以来鮭の切り身はどうも苦手になった。家で食べる鮭の切り身には必ず隠れている細い骨があるのに、この塩鮭には不思議と骨が一本も隠れていない。やわらかくて味のしっかりした美味しい鮭だ。焦げ目もなく、どうしたらこんなふうにおいしく焼けるのか不思議だよ。
それに、ベーコンエッグに野菜サラダ。たっぷりのおかずでご飯が進む。
やっぱり月形園の食事は最高だよ。
昨日は曇っていたけれど、今朝は晴れて青空だ。
今日もまた同じ道を駅まで歩くつもりだよ。昨日とはまた違う景色が見られるだろう。
おかみさんとおかみさんのお姉さんに見送られて出発したよ。
民宿の前、川向こうの姿の良い2本の銀杏の木はほんの少し色付いてきていた。
すっかり黄葉するのももうすぐだろう。
空気はかなり冷たい。
虹の大橋から西の空を見ると、空に槍を突き立てたような碧岩、大岩の姿が目を引く。
川は相変わらず今日も濁っている。おかみさんも言ってた。
「こんなにいつまでも濁りが取れないなんてことは一度もなかったですね」
昨日渡った通行止めの橋だ。この橋の上からも碧岩、大岩がきれいに見えるよ。
昨日は寄らなかった安養寺だよ。そして昨日も見た六地蔵。
5月に来たときもこの場所で同じ景色を写していたが、そのときの写真と比べてみてもやはり水の色が全然違う。いま目の前の川の姿はなんとなく殺伐としている。
それでもこの道を歩くのは楽しい。南牧川を包んだ景色が次々と変化するんだ。飽きることがないよ。
これもかつて養蚕が行われていた家だね。今は誰も住んでいないようだよ。
いい道だなあ。
道の真ん中に蛇がいたんだ。小石を投げたり、地面をけったりして驚かそうとしたが、まったく動く気配がない。仕方なく、道の端を恐る恐る通ったよ。家内はもちろんみみ爺もおっかなびっくり。蛇は嫌いだ。
このあたりからは未舗装の山道になる。それこそまた蛇に遭遇しそうでなんとなく怖い。
杉木立の斜面の下には南牧川の濁ったの水面が見えるよ。滑り落ちないように山際をそろそろ歩く。
(未舗装部分は西北西側から山が迫ってきているあたり)
案内板のそばに地元の人がいた。説明してくれたが、素人にはなかなかわからない。
その人は高崎に仕事と家があり、
「休みにはこの近くの実家にもどってきているんですよ」
指差す方を見ると対岸の県道側に家々の屋根が密集している。
「たくさん家があるんですね」
と家内。
「家はあっても人がいないんですよ」
ほとんどが空き家になっているという。
「子供たちは町へ出て行って、ここに残され年をとった親たちも自然にいなくなる」
自然にいなくなる、という言葉には悲しい響きがこもっている。
流れは濁っているけれど、景色はとてもいいよ。行きと帰りではまた景色も違う。
5月に来たときに岩の上でおにぎりを食べた青岩公園だ。岩の上には台風の大雨で流されてきた大小の石がのっかっているよ。大雨の川の水は、巨大な岩を呑み込むほどだったんだね。
昼少し前に下仁田の町に着いた。電車に乗る前に駅に近い「コロムビア」という店で食事をした。帰りには必ずここへ寄ろうと決めていたんだ。テレビドラマの「孤独のグルメ」という番組に出てきた人気店だ。この店も常に行列ができているそうだよ。
一番人気の上州豚肉のすき焼きだよ。値段もリーズナブルだ。
次に来るときは、昨日食べられなかったラーメン店「一番」のタンメンと餃子をぜひ食べたいね。
みみ爺が勝手に決めたハイキングルート。歩いてそれほどきつくもなく、そして決して飽きることのない景色がつづく。そんな南牧川の川筋に沿って歩くルートはとても楽しかったよ。
歩くのは、もちろん、車の頻繁に通る県道側ではなく、川を挟んだ対岸に続く裏道だ。
5月に来たときは、民宿月形園から道の駅オアシス南牧までは歩いた。今回はその先も含めてすべてを歩く考えなんだ。
今日は下仁田駅から南牧村の月形園まで歩き、明日は同じ道を引き返す計画だよ。
なぜそんなに南牧川にこだわるのか。5月に来たときの南牧川の美しさと、川沿いのその道の静かな雰囲気がたまらなく気に入ったからだよ。
上信電鉄・下仁田駅に着いたのは昼少し前だ。
着いたらまず、タンメンと餃子を食べようと決めていた「一番」というラーメン店へ向かったが、今日はあいにく休みだったんだ。
さてそれではどこの店に入ろうかと悩んでいたときに、地元の人に「きよしや食堂」を教えていただいた。
教えていただいた道を行ってみると、店の前にはすでに人が並んでいた。この店はカツ丼が人気のようだ。
店に入ると、自分たちも人気の「下仁田カツ丼」を頼んだんだ。
どんぶりのご飯の上に、上州豚肉のカツが贅沢に2枚ものっている。肉はとてもやわらかく、味は申し分ない。人気店のわけがわかる。
カツ丼に満足し、店を出て路地を進むと、こんな六地蔵があった。龍栖寺というお寺のようだ。手を合わせ、旅の安全をお願いして歩き出す。
さあ、出発だよ。南牧村の民宿・月形園まで、10キロほどの道のりだ。
八千代橋からの鏑川の景色だよ。
さらに道を進む。左の大きな塊は大崩山というらしい。
いよいよ県道を離れ、南牧川をはさんで県道と平行して続く裏道へ入るよ。車もバイクも入ってこない静かな道だ。
少し行くとこんな水場があったよ。山の水だろうがあまり冷たくない。
とてもいい感じの古い吊り橋だが、すでに橋面の板が落ちている。
静かな道は続く。対岸の県道を走る車の音もほとんど聞こえてこない。
古い庚申供養塔がある。年月を感じさせるね。
11月に入ったので紅葉も始まっているだろうと期待していたが、今年は気温の高い日が続いていたせいか、山の上の方で葉の色がいくらか色付いてきているくらいだ。
段差を勢いよく落ちる本流の向こうに見えるのは魚道というのだろうか。あんな急流を魚は遡上できるんだろうかね。
南牧川の水の色は、5月に見たときとは違う。まだ台風の名残が消えてはいないようだ。とても濁っているよ。最初に見た鏑川の水の色とはぜんぜん違うね。
養蚕が盛んに行われていた頃を偲ばせる造りの家が多く見られる。今は養蚕はおろか、人も住んでいない家が多い。
道の舗装は切れて、土混じりの砂利道に変わった。左手は崖のような急斜面に杉の木が立ち並んでおり、下のほうに南牧川の急流が見え隠れしている。道の端が崩れそうで怖い。山側によって歩く。
700~800メートルも歩いたろうか、ようやく未舗装の暗い道を抜けてホッとしたよ。
台風の雨で崩れたのか通行止めとなっていたけれど、横をすり抜けて通った。
水は相変わらず濁っている。地元の人にきくと、
「こんなことは今までになかったね。いままでは濁っても水はすぐにきれいになったよ。こんなことは珍しい」
と、腕組みをして流れを見ている。
見覚えのある美容室があったよ。
月形園のおかみさんのお姉さんとご主人が笑顔で出てきた。
「お茶を一杯飲んでいってください」
しきりに勧める。
「怖かったですね。水と一緒に石がごろごろ転がる音が響いてくるんですよ」
台風の大雨で南牧川の水かさが増したときの様子をそう語った。
「水は川幅一杯に、道のすぐ下まで来ていました。この辺の人はみんな避難したんですが、私たちは家の横の川がいつ溢れるか心配で家にいたんですよ」
家のすぐ横に、山から急流で流れてくる細い川があり、家の前の南牧川に落ちている。
「いつでもすぐ避難できるように車にいろいろ積み込んで様子を見ていたんですよ」
30分ほどお邪魔して失礼すると、ふたたび歩き出したよ。距離はまだ半分もある。暗くならないうちに宿に着きたい。
小沢橋から道は黒滝山のほうへ向かう県道202号に合流するが、500~600メートルほど行ったところで大塩沢川に架かる小さな橋を渡ると、また南牧川に沿った道にもどる。
その橋の手前に、「住吉の滝」という道標があったので降りていくと、岩の間を落ちている滝があったよ。落差はおよそ5メートルと小さいが勢いがあり、水の音も静寂を割るすさまじさだった。「南牧村滝巡り」ガイドのパンフレットにも載っている滝の一つだ。
足が少し疲れた頃、先方に14%勾配の上り坂が現れたよ。
そして同じ勾配の道を今度は下り、夕暮れせまる静かな景色の中を行くよ。
5月に来たときにはちゃんとあった橋だが、台風の大雨に壊されたんだろうか。
対岸の県道には車やバイクがものすごいスピードで走っていく。しかしこちらへはその音もほとんど届かない。とても静かだ。
安養寺の六地蔵だよ。
県道へ渡る橋だ。人は通ってもだいじょうぶそうだね。
橋の上から上流を望む。だいぶ暗くなってきたよ。
県道側の橋の袂が崩れていた。なるほどこれが通行止めのわけだったんだね。
大日向の県道はすっかり日が暮れて暗くなっている。
虹の大橋を渡れば民宿・月形園はもうすぐだよ。
「お疲れ様。先回りしていましたよ」
先ほどお会いした月形園のおかみさんのお姉さんが笑顔で迎えてくれた。そのあとでおかみさんもニコニコした顔を見せた。元気そうでよかった。
きれいな部屋に通された。コタツが用意してあったのはうれしい。
夕食はやっぱりすばらしい。おかみさんとおかみさんのお姉さんの、温かい心のこもった手料理だよ。
おっ切り込みうどんも、鮎の塩焼きも、上州豚肉もとてもおいしい。
柚子味噌をつけて食べたえび芋はみみ爺にはじめてだった。大きな花豆は甘くやわらかく煮てある。
ずらりと並んだお料理はすべて上品な味付けで、濃くも薄くもない。家内とおかみさんの料理話はいつまでも尽きることがなかった。
もちろん翌日の朝ごはんも言うことなしだ。なかなか手に入らないという山くらげは噛んだときの触感も味付けも特別だったよ。
みみ爺は若い頃、塩鮭の細い骨がのどに刺さって、自分ではどうにもならず医者にとってもらったことがあるんだ。それ以来鮭の切り身はどうも苦手になった。家で食べる鮭の切り身には必ず隠れている細い骨があるのに、この塩鮭には不思議と骨が一本も隠れていない。やわらかくて味のしっかりした美味しい鮭だ。焦げ目もなく、どうしたらこんなふうにおいしく焼けるのか不思議だよ。
それに、ベーコンエッグに野菜サラダ。たっぷりのおかずでご飯が進む。
やっぱり月形園の食事は最高だよ。
昨日は曇っていたけれど、今朝は晴れて青空だ。
今日もまた同じ道を駅まで歩くつもりだよ。昨日とはまた違う景色が見られるだろう。
おかみさんとおかみさんのお姉さんに見送られて出発したよ。
民宿の前、川向こうの姿の良い2本の銀杏の木はほんの少し色付いてきていた。
すっかり黄葉するのももうすぐだろう。
空気はかなり冷たい。
虹の大橋から西の空を見ると、空に槍を突き立てたような碧岩、大岩の姿が目を引く。
川は相変わらず今日も濁っている。おかみさんも言ってた。
「こんなにいつまでも濁りが取れないなんてことは一度もなかったですね」
昨日渡った通行止めの橋だ。この橋の上からも碧岩、大岩がきれいに見えるよ。
昨日は寄らなかった安養寺だよ。そして昨日も見た六地蔵。
5月に来たときもこの場所で同じ景色を写していたが、そのときの写真と比べてみてもやはり水の色が全然違う。いま目の前の川の姿はなんとなく殺伐としている。
それでもこの道を歩くのは楽しい。南牧川を包んだ景色が次々と変化するんだ。飽きることがないよ。
これもかつて養蚕が行われていた家だね。今は誰も住んでいないようだよ。
いい道だなあ。
道の真ん中に蛇がいたんだ。小石を投げたり、地面をけったりして驚かそうとしたが、まったく動く気配がない。仕方なく、道の端を恐る恐る通ったよ。家内はもちろんみみ爺もおっかなびっくり。蛇は嫌いだ。
このあたりからは未舗装の山道になる。それこそまた蛇に遭遇しそうでなんとなく怖い。
杉木立の斜面の下には南牧川の濁ったの水面が見えるよ。滑り落ちないように山際をそろそろ歩く。
(未舗装部分は西北西側から山が迫ってきているあたり)
案内板のそばに地元の人がいた。説明してくれたが、素人にはなかなかわからない。
その人は高崎に仕事と家があり、
「休みにはこの近くの実家にもどってきているんですよ」
指差す方を見ると対岸の県道側に家々の屋根が密集している。
「たくさん家があるんですね」
と家内。
「家はあっても人がいないんですよ」
ほとんどが空き家になっているという。
「子供たちは町へ出て行って、ここに残され年をとった親たちも自然にいなくなる」
自然にいなくなる、という言葉には悲しい響きがこもっている。
流れは濁っているけれど、景色はとてもいいよ。行きと帰りではまた景色も違う。
5月に来たときに岩の上でおにぎりを食べた青岩公園だ。岩の上には台風の大雨で流されてきた大小の石がのっかっているよ。大雨の川の水は、巨大な岩を呑み込むほどだったんだね。
昼少し前に下仁田の町に着いた。電車に乗る前に駅に近い「コロムビア」という店で食事をした。帰りには必ずここへ寄ろうと決めていたんだ。テレビドラマの「孤独のグルメ」という番組に出てきた人気店だ。この店も常に行列ができているそうだよ。
一番人気の上州豚肉のすき焼きだよ。値段もリーズナブルだ。
次に来るときは、昨日食べられなかったラーメン店「一番」のタンメンと餃子をぜひ食べたいね。
みみ爺が勝手に決めたハイキングルート。歩いてそれほどきつくもなく、そして決して飽きることのない景色がつづく。そんな南牧川の川筋に沿って歩くルートはとても楽しかったよ。