2014年6月に土台の設置が確認された海洋プラットフォーム(第6基)=(防衛省提供)
南シナ海のスプラトリー(中国名・南沙)諸島で人工島を造成し、国際的な批判を受けている中国が、日本の沖ノ鳥島を持ち出して反論している。自らの行いを正当化するために、「沖ノ鳥島を『人工島』にしようとしている日本には、われわれ中国を批判する資格はない」といっていることになる。だが、その中国は早くから沖ノ鳥島の戦略的重要性に気がつき、虎視眈々とその権益を奪い取ろうとしているという。
中国が注目する島
「日本はコンクリートで沖ノ鳥島を人工島に仕立て上げ、それを根拠に排他的経済水域を主張している。他国を批評する以前に自分の行いを見つめるべきだ」
今年8月にマレーシアのクアラルンプールで開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラム(ARF)閣僚会議で、中国の王毅外相が南シナ海における人工島埋め立てに懸念を表明した日本をこう牽制(けんせい)した。
国連海洋法条約では、島の場合は領海、排他的経済水域(EEZ)、大陸棚を設定できるが、岩の場合は領海は設定できるものの、EEZと大陸棚は設定できない。沖ノ鳥島に関しては、日本が島だとしているのに対し、岩だと反論してきた中国はここにきて、人工島だと言い始めたことになりかねない。
ちなみに人工島の場合は領海は設定できない。王毅外相の発言は、これまでの岩だとする主張を転換し、中国政府が「沖ノ鳥島は人工島だ」との見解に変更する意図があるかは今のところ不明だ。
だが、その中国は沖ノ鳥島の戦略的重要性に誰よりも着目している。沖ノ鳥島は東京から約1700キロ、小笠原諸島の父島から約900キロ離れたわが国最南端の島で、東西約4・5キロ、南北約1・7キロ、周囲約11キロのサンゴ礁だ。
日本政府は沖ノ鳥島の周囲に海洋資源を独占できるEEZを設定しており、その面積は国土面積(約38万平方キロメートル)を上回る約40万平方キロメートルにもなる。漁業資源ばかりでなく、レアメタル(希少金属)などの存在が期待されている。
沖縄本島から1100キロ 軍事的戦略的な価値
ただ、中国が沖ノ鳥島を評価しているのは海洋資源の存在だけでない。むしろ、その軍事戦略的な価値に注目しているといっていい。中国は沖ノ鳥島周辺のEEZで海洋調査活動を続け、2010年4月には計10隻の中国海軍艦艇が沖ノ鳥島西方海域で軍事訓練を実施した。
また、福島の原発事故による放射性物質の影響を調査するということを名目に2011年6月に海洋調査船を沖ノ鳥島周辺に派遣した。この同時期に中国海軍艦艇計11隻が沖ノ鳥島南西海域で射撃や洋上給油などの訓練を行った。
中国は空母機動部隊などを擁する米軍の接近を阻止する「Anti-Access(接近阻止)/Area-Denial(領域拒否):A2AD」という戦略をとっている。
日本列島から台湾、フィリピン、インドネシアなどを結ぶ第1列島線、さらに伊豆・小笠原諸島からグアムを含むマリアナ諸島などを結ぶ第2列島線を設定し、軍事防衛上のラインとしている。
沖ノ鳥島はその第1列島線と第2列島線の間にあり、沖縄本島から約1100キロ、米領グアムから約1200キロとほぼ中間に位置している。沖縄本島と宮古島の間の海峡を通過した中国海軍艦艇がそのまま進むと沖ノ鳥島周辺海域に出ることになる。2004年11月に中国の漢級原潜がグアムへの偵察行動を展開した際には、原潜が沖ノ鳥島近海を通過していることが確認された。
海洋調査→資源採掘→海軍艦艇の派遣という海洋進出パターン
中国の海洋調査は資源探査だけでなく潜水艦の航行に必要な海底の地形、潮流、水温などに関するデータの収集を目的としているという。
中国は2000年代に入って西太平洋で海洋調査を実施しており、すでに十分なデータを収集しているとみられる。
沿岸諸国の非難を無視しての海洋調査、そして資源採掘の強行、さらには資源採掘保護を名目にした海軍艦艇の派遣というのが中国の海洋進出のパターンだ。沖ノ鳥島がその標的にならないという保証はない。
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