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TPPに尻込みした韓国の摩訶不思議、中国優先のツケ?環太平洋同盟から脱落の危機

2015年10月19日 | ニュース

【経済裏読み】

 環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉の大筋合意を受けて、お隣の韓国が神経をとがらせ始めた。韓国は、TPP交渉には不参加で、このままでは域内の関税の引き下げによるメリットを受けられず、厳しい経済環境に置かれる恐れがあるためだ。世論に押されるように韓国政府はTPP参加検討の意向を表明したが、12カ国による喧々がくがくの議論の末になし得た大筋合意の直後だけに、タダ乗り同然の行為にも映る。そもそも韓国はなぜ、日米を中心としたTPP交渉の参加をためらってしまったのか。その大きなツケはいま回ってきた。

「同盟」築くTPP

 TPP交渉の大筋合意後の韓国では、TPP参加を促す意見が相次いだ。

 「中国のような国に世界経済の秩序を書かせない」との交渉合意後のオバマ米大統領の強烈なメッセージから、TPPが単なる自由貿易協定の枠組みではなく、米国を中心とする経済上の「安全保障同盟」である位置付けが、はっきりしたからだ。

 「環太平洋経済同盟の落伍者にないかねない」

 朝鮮日報(日本語電子版)は、大学有識者の声を引用し、孤立化への懸念が出ていることを伝えた。さらに同紙は社説で「日米が手を握り、中国の影響力拡大に対抗するという政治的・地政学的な意味もある」と指摘。TPPへの参加を急がせた。

 韓国の政策当局によると、TPP発行から10年間、韓国がTPPに参加しなければ、国内総生産は0・12%減少する一方、逆に参加すれば1・8%程度押し上げられる。自動車関連や電子製品部品など韓国の主力産業が、日本との競争で劣勢に立ち、経済力の低下につながるとの警戒感も強い。

中国とのFTAに「精魂」

 TPPが推進されれば、こうした問題が顕在化するのは以前から韓国でも知られていたことだ。それでもなぜ、交渉を尻込みしたのか。そこには通商交渉に対する韓国の誤算もうかがえる。

 韓国は、巨大経済圏の貿易協定よりも、2国間の自由貿易協定(FTA)を優先する通商外交を展開してきた。2国間の協定は、交渉相手が少なく、多国間に比べて、妥結に持ち込みやすいとされる。利害が対立する条件は、棚上げしやすく、そもそも組みたい相手を選ぶことができる。

 2国間の交渉のメリットを享受するように韓国は、米国や欧州連合(EU)を含む11のFTAを発効し、中国を含む4カ国とも交渉を締結。これにより、「もはや、TPP参加への必要性は乏しい」との認識が広がった。

 「中国が最大貿易国だという理由で韓中FTAだけに精魂を尽くし、TPPに大きな関心を持たなかった」。韓国経済新聞(電子版)は社説でこう振り返った。

 同紙によると、TPP参加の非公式な打診は米国から韓国に2012年末ごろにあったといわれる。しかし、当時は強い韓国内の反対意見を押し切って推し進めた韓米FTA発効直後。このうえ、TPP交渉にまで踏み込めば、「反米感情が増幅されないか」(韓国・通商関係者)と心配する声もあり、複雑な国内情勢への配慮がタイミングを逸する事態を生んだようだ。

通商戦略は転換の岐路に

 韓国の崔●(=日の下に火)煥・経済副首相兼企画財政相は10月6日、TPPに「参加する方向で検討していく」との政府の姿勢を明らかにしたが、やすやすと加われるわけではない。

 参加には、12カ国すべての同意が必要なうえ、交渉時でルール作りに加われなかった韓国は、同国にとって不利な条件でも飲み込まざるを得ないとの見方が強い。

 自動車関税の撤廃で、日本車が韓国市場を圧倒する事態にならないか。競合する貿易品が多い日本への市場開放には慎重だ。

 痛みを覚悟して、TPPへの参加を決断するのか。米国を中心とする経済同盟からの脱落の道を選び、中国との蜜月を深めるのか。韓国の通商戦略は、岐路に立っている。

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