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あくびの稽古

2015年10月04日 | 落語・民話

あくびの稽古

【主な登場人物】
 稽古事の好きな男  その友達  あくび指南の先生

【事の成り行き】
 趣味と言えるほどの趣味は多くありませんけど、趣味と言えない趣味は数
多く持ってます。

って日本語ちょっとおかしい。

小さい頃から興味の湧くものにはすぐ手を出す性質でしたから、ちょっとかじっては放ったらかし。

忘れた頃にまた手を出すの繰り返しです。

 その内、月謝を払ってお稽古したのは「習字」だけで、あとは全て独り自己流で学んできました。

お習字も通ったのは正味半年の間だけにもかかわらず、一応「崩し字」の読み書きはできます。

崩し字字典なんていうものがありましたんで、高校生の時分にシコシコ練習した賜です。

目的は、何に何を書くとき下手な字より上手な方が良かろう、という不純なもんでしたが……

 現在ではパソコンも立派なお稽古事の一つだそうでして、ご近所にもパソコン教室が雨後の筍状態で看板を上げておられます。

そして私の一番長く続く趣味がこの「パソコン」ということになりました。

もし今、このパソコンを一から習うとなったら、多分途中で投げ出していたことでしょう。

 パソコンの黎明期と時を同じく独学し始めた幸運が、途中たびたび一服期間をはさんでなお、何とか今について行ける体力を保たせてくれています。

それにしてもインターネットというのはよろしいですね。

この環境があれば、趣味を少しかじるぐらいの芸は朝ご飯を食べて、昼ご飯を食べて、晩飯前ぐらいでしょう。

 一日あれば、付け焼刃の知識が得られるほど情報が満載ですもん。

これを活用すれば「稽古屋」に通う手間なんか無いはず……、ですけれども、自分から進んで取り込もうという人は少ないようです。

安易に受身に「稽古屋」で教えてもらおう。

そらその方が簡単には違いない……(2002/05/05)

             * * * * *

●おい、えぇとこで会ぉた、ちょっと付き合ぉてぇな

■何やねん?

●稽古に行くねん、ちょっと付き合ぉて

■稽古の付き合いか、堪忍してもらうわ

●何でやねん?

■何でて、お前の稽古の付き合いずいぶんとしたで

●してくれたか?

■「してくれたか」て、したやないか。一番初めは何やった……、そぉ三味線や、わい懲りてんねん、お前の稽古の付き合いわ。

■「三味線の稽古すんねん付き合ぉて」言ぅたがな

●言ぅた言ぅた

■言ぅたやろ。

まぁ、稽古っちゅうもんはせんよりする方がえぇやろ思うさかい、うかうかっと付いて行てやったがな。

お前あの時、稽古してたん何やったなぁ?

●「春雨」や。♪チントンシャン、はるぅ~さぁ~めぇ~に♪ なかなか洒落た端唄やで。

■そぉや、洒落た端唄や。そののっけの「チントンシャン」ちゅうのがなかなか弾かれへんねんで、お前わ。

ぶっさいくなやっちゃで。

お師匠(おっしょ)はんが「チントンシャン」ちゅうやつをお前「ジャンジャンジャン」や「チントンシャン」ちゅうのに「ジャンジャンジャン」何べんやっても「ジャンジャンジャン」や。

■何やおかしぃなぁ思てふっと見たら三本の糸いっぺんに「ジャンジャン、ジャンジャン」無茶したらどんならんで。

お師匠はんが「何しなはんねん、一本ずつにしなはらんか」言ぅたら「いやいやお師匠はん、わたい三本ぐらいいっぺんに弾(はじ)かな頼よんのおます……」力尽くで三味線弾ぃてどぉすんねん。

●そぉそぉ、そんなことあったねぇ

■「あったねぇ」や、ないわい

●あら、じき止めたんや

■止めた方がえぇわい。

あんなもん何年やったかて上手になるかい。

それで次会ぉた時に「わい踊りの稽古してんねん付き合いして」や「またかいな」言ぅたけども、またうかうかっと付いて行てやった

●行てくれた。

■稽古してたんが「奴さん」や。♪チレンチンチリ、ゴンチチ、トッチチ、チンチン、ツン、ハァシタコラ♪ とね。

のっけは、こんな恰好(かっこ)しながらグルグルっと回って歩くだけのとこやで。

お前不思議な男やねぇ、歩くっちゅうことがでけへんねねぇ。

普通の人間は右手が出たら左足が出る、右足が出たら左手が出ると、互い違いになるもんや、だいたいわ。

■不思議な男やで、右手出したら右の足がおんなじよぉに付いて出る、左手が出たら左足が出る。

お師匠はんが「何をしてなはんねん、ナンバになってまんがな。ナンバだんがな」言ぃはったら、お前の言ぅことおかしぃで「お師匠はん、何言ぅてなはんねん。わたい難波より心斎橋の方が近こおまんがな」誰が電車の停留所聞ぃてんねん。

●そんなことあったねぇ

■「あったねぇ」やないわい

●あら、じき止めたんや

■止めた方がえぇわい、何十年やったかて上手になるかい。その次に行たんが……、浄瑠璃や「浄瑠璃の稽古してんねん付き合いして」「わいもぉ二へん懲りてるよってに堪忍してぇな」言ぅたら「いやいや、浄瑠璃だけはお師匠はんも見込みある言ぅてはんねん」言ぅから行てやったがな。

■稽古してたんが「太十(たいじゅ~)」太功記の十段目や。♪夕顔棚のこなたより、現われ出でたる武智光秀ぇ♪ お師匠はん、えらい声出しはったがな。

けどまぁ、お師匠はんはお師匠はんやから上手やけど「やってみなはれ」言ぅて、お前、赤い顔して頭のてっぺんから声出して何言ぅたんや「ゆゆゆゆ、ユユユユ、夕焼け小焼けで日が暮れてぇ……」

■無茶言ぅたらどんならんで、どこぞの世界に「夕焼け小焼けで日が暮れて」てな浄瑠璃があるか? 

お師匠はん思わずブ~ッと吹き出しはったがな。

余りのことにあきれ果てて「ちょっとおしっこ行って来ます」ちゅうてお便所行きはったわ。

お前、そんなことちょっとも堪(こた)えてないわ「現われ出でたる武智光へでぇ~」武智光ヘデてな人があるか?

■それがまた、えらい声や。お前の横手で猫が丸ぅなって昼寝してたんや、火鉢の横手で。お前のあの声でビャ~ッと一間ほど飛び上がって下へ落ちて「ギャン」ちゅうて動かんよぉになったんやで。猫てなもん大抵は少々のとこから落ちても、うまいことこぉなるもんやで。不意突かれたんやなぁ……、わしゃ、あれからあの猫の顔見んねで。

■お前、そんなことちょっとも堪えてへんわ「オガオガ、オガオガ、オガオガ、オガオガ」わけの分からんことやり始めたがな。お稽古のために三、四人連中さん待ったはったんや。ところが、お前の顔見て「とてもやないが、こっち順番回って来(こ)んわい」てなもんや「また、あしたにでもしょ~か」ちゅうて一人帰り、二人帰り、皆帰ってしまいはった。

■そんなことお前ちょっともかもてへん、目ぇつぶって「オガオガ、オガオガ、オガオガ、オガオガ」言ぅてるさかい、目ぇ見えてへんがな。

隣の嫁はん入って来はってんで「えろぉお悪いよぉでしたら、お医者さん呼びましょか?」稽古屋の隣の嫁はんやで、大抵ひどい浄瑠璃も聞ぃたはるはずやで、その耳の肥えた嫁はんが聞ぃても浄瑠璃とは思えなんだんやで。よほどの浄瑠璃やで、前の浄瑠璃わ。

■まさか「浄瑠璃の稽古してまんねん」とも言えず「どぉやら治まりそぉです」言ぅたら、向こぉもお前の顔見て「こら、ちょっと違ごたかいな」てなもんで「どぉぞお大事に」言ぅてとりあえず帰りはった。それでもお前「オガオガ、オガオガ、オガオガ、オガオガ」言ぅてたら、今度巡査が入って来たで。

■「時節柄、悪い病気が流行っておるが、何ならいっぺん交番所へ届けてもらわんけりゃ……」お前、チビスかコレラみたいに思われてんねんで。

まさか巡査に嘘つくこともできず「いえ、こら浄瑠璃の稽古してまんねん」言ぅたら、あの巡査が拍子の悪い、浄瑠璃知らなんだんやねぇ「浄瑠璃とはいかなるものか?」言ぃはったで。

■「いかなるものか?」言ぃはっても、ひと言でこぉいぅもんやと言ぅこともできず「まぁ、こぉして赤い顔してオガオガ、オガオガ言ぅもんです」言わなしゃ~ないがな。したら巡査がお前の顔ジ~ッと見て「そぉか、世の中は広いなぁ」言ぅて「明るいうちはえぇけれども、暗闇になったらこぉいぅ音を外へ流さんよぉに。人心をば不安に陥れんよぉに、間違いのないよぉに」言ぅて帰りはったんや。

■それでもお前、堪えてへん「オガオガ、オガオガ、オガ」言ぅてたら、やっとお師匠はんお便所から出て来はったんや。だいぶの時間あったで。

お師匠はんも恐らく、お便所の中で待ったはったんやろねぇ、お前が諦めて帰るのんを。

■もぉボチボチ帰ったやろ思て出て来たら、お前まだ「オガオガ、オガオガ、オガ」言ぅてるさかい、お師匠はん、しばらくお前の顔ジ~ッと見てはって「あぁ~、ご精が出ますなぁ~」しみじみ言わはったで。自分がウソでも稽古してるお師匠はんに「ご精が出ますな」てなこと言われなや。

●そんなこと、ありましたねぇ

■「ありましたねぇ」やないわい

●あら、すぐ止めた

■止めた方がえぇわい、何百年やっても上手になるかい。あれからしばらく会わなんだんや。助かってたんや。それから半年ほどしてバタ~っと会ぉたんや「わい今度、柔術の稽古してんねん付き合いして」

■あれ聞ぃたときドキッとしたで。当り前やないか「三味線とか浄瑠璃、踊り。こら間違ごぉてもどぉっちゅうことないけれども、柔道てなもん一つ間違ごぉたら命に関わるで。危ないこと止めときや」言ぅてるのに「いやいや、もぉだいぶ稽古上がったぁるねん」いぅて言ぃながら日本橋かかったんや。

■ひょっと向こぉ見て「よし、わしゃこれから、向こぉから来る男投げ飛ばす」「アホなことしぃな」言ぅてるのに、ダァ~ッと走って行って「やぁ~」ちゅうた。わしゃえらいなぁ思たで、あの「やごえ」ちゅうのか、あの声稽古せな、なかなか出んもんやで。

■「いやぁ~ッ」ちゅうたんや。で「ドッボ~ン」ちゅうたんや。

えらいもんやなぁ、やりよんなぁ思てひょ~っと橋の上見たら、ズボ~ッと立ったはるのんその人やで。向こぉから歩いて来はった人や。下で「助けてくれ~」言ぅてるのんお前の声やで。

その人には百ぺらぺん謝って「これ昨日、病院から出たとこだんねん」言ぅて。

■お前助けんならんわ、謝らんならんわ、えらい目におぉてんで

●ハ、ハ、ハ~~ッ……、そんなこと、あったねぇ

■「あったねぇ」やないわい、ホンマにもぉ、笑いごっちゃないわい

●まぁそんなこと言わんと付き合いしてぇな。もぉいっぺんだけ付き合あいして。

これでわい、もぉ稽古やめよと思うねん。

■今度、何の稽古行くねん?

●あくび、あくびのね、稽古

■えっ?

●あくびの稽古にね

■何?

●あくびの稽古……

■あくびの稽古……? あくびて何かい、あの退屈なときに「あぁ、あぁ~」と出る、あの欠伸かい?

●せや

■アホかお前、そんなもん稽古せんかて退屈なったら「あ、あ、あ~ッ」と出るやないかい。

●出るけどね、看板出したんや、うちの横町(よこまち)に「御欠伸稽古処」うどっかオモロい、粋な洒落たとこがあるに違いないと思うで。

先お稽古してもろて、次から来るやつ代稽古てなことしたいと思てるねん。

ちょっと付き合いして。

■アホか、誰がお前のほかにそんなもんの稽古に行くかい

●そんなこと言わんと付き合いしてぇな

■嫌や!

●怒りないな、付き合いしてぇな

■情けない、おら向こぉの辻曲がりかけてたんや。何の気無しにこっちひょいと曲がったら、お前とベタッと会ぉたんや。

災難はどこにあるや分からんわ、ホンマにもぉ。

■お前のふた親はえぇことしたわい、早いこと死んで。

こんなアホらしぃ稽古の付き合いさされんだけでも幸せや

●ボロクソに言ぃないな。

これだけでもぉ稽古のしぃじまいにしょ~思てんねん、付き合いしてんか。

この辻曲がったとこや……、見てみぃ出しよった看板「御欠伸指南処」

■ホンに、揚げよったなぁ。

こら桧の看板、立派なもんや。

なるほど世の中広いわい。

ほな稽古してもらい、わい帰るわ

●待った、待ったぁ、待ちぃな。

ここまで付いて来てもらうだけなら、何も頼んで付いて来てもらえへんやないか。

こっから中へ入んのが初めてやさかい、恥ずかしぃさかい言ぅてんねやないか。入ってぇな。

■分かった、入らんかい

●えぇ~こんちわ、こんちわ

▲はい

●あのぉ~先生(せんせ)は?

▲はい、わたくしが。あなた方は?

●わたいら、この町内のもんでんねん

▲これわこれわ、ご町内のお若い衆で。

失礼(ひつれぇ)しましたなぁ。

何じゃかじゃと手間取りましてな、明日にでも名札を持ってご挨拶にと思ぉておりましたが、先を越されまして恐れ入ります。

今日は何のご用で?

●えぇ、何でんねん、お稽古してもらいたい思いまして。

表、看板出てまんねん。あくびのお稽古を……

▲おぉ、あなたがあくびのお稽古を……、お若いに似ぬご奇特な。どぉぞこちらへお上がりを……。あのお連れのお方は?

●先生、あの男お稽古したい言ぅてまんねんけど、仕事のことで十日ほど旅に出まんので、帰りましたらまたお稽古を

▲さよぉか、それにしても上がってもらやぁよろしぃのに……、どぉぞご随意に。ささ、あなたこちらへ

●どぉぞよろしゅお頼の申しま。

先生、ちょっとお伺いしまっけど、あくびっちゅうたら、あの退屈なったら「あぁ、あ、あ~」と出る、あのあくびですか?

▲はいはい、あれには違いございませんが、あれは手前どもでは「駄あくび」と申しましてな、面白味も何もないもので、やはり、あくびといぅものはお稽古を積みませんとな

●はぁ、そんなもんですか。あくびと一口に言いましても色々?

▲はい、一口にあくびと申しましても春夏秋冬、四季それぞれのあくび、魚釣りのあくび、説法のあくび、お通夜のあくびと色々とありますでな

●ほぉ、いろんなあくびが……、先生、わたし初めてでございますので、なるべく易しぃのを……

▲はい、それではそぉですなぁ……、もらい風呂のあくびなどはどぉですかな

●もらい風呂のあくびちゅうとどんなんです?

▲はい、これは何ですなぁ、知った先や、またご近所でもらい湯をすることがある。

銭湯へ行きますと払うものが払ろぉてあるによって「ぬるい、また熱い」の小言が言えますが、もらい湯の場合はそれが言えませんなぁ。なるたけ辛抱をしなければならん。

▲大抵はそのうちの家人の入った後でぬるい湯が多い。これに小言も言わず、しばらく辛抱して入っておりますと、芯から、底から、ホコホコと温もってまいりましてな。

これに退屈といぅものがない交ぜになって、窓越しに秋の月などを見ながら……

▲「はぁ~~~っ、あ~~~~」これがもらい湯のあくびじゃ……

●先生、あんまり面白いことおませんなぁ。もぉちょっと色気のあるあくびは?

▲色気のあるあくびはございませんが、でわ将棋のあくびといぅのは?

●先生、わたい将棋好きでんねん、それを……

▲はい、それではな、もそっとこれへ、もそっとこちらへ……

▲えぇ~、相手が前に居る、間に盤がある。こぉいぅ心持でな。

よろしぃかな、良くご覧を……、相手が考えに考えていかない、こちらがいくことは勿論できない。

そこの様子をこの扇子をキセルの心で、よろしぃかな良くご覧を。

盤と相手を七分三分に眺めるところから始まりますぞ……

▲長い思案じゃなぁ……、下手な考え休むに似たり、こらもぉどぉ考えても詰んだぁる……。

まだかぁ、将棋もえぇが、こぉ長いこと待たされたら……、退屈で、退屈で……「はぁ~~~っ、あ~~~」たまらんわい……

●えらいことやりまんねんなぁ先生。わて、帰(かい)らしてもらいま

▲いや、帰られては……、どぉぞお稽古を

●そぉですかい、ほなやらしてもらいま。

相手が前に居まんねんな、間に盤がおまんねんな。

のっけは「長い思案じゃな」ですかい、分かりました。

●長い思案じゃなぁっ!

▲いさかい事ではございませんで、もそっとな、柔らかく

●長い思案じゃなぁ、え、下手な考え休むに似たり。こらもぉどぉ考えても詰んだぁるのじゃ! 七分三分七分三分……、まだかぁ~、将棋もえぇけど、こぉ長いこと待たされたら退屈で退屈で「ファ~イ!」たまらんわい!

▲何じゃそら。

お前さんは人に聞かせよぉといぅ気がある。これがいけませんぞ。

芸事にこれが一番いかん「いちびろぉ」といぅ気がありますぞ。

人が聞ぃてよぉが聞ぃいてよまいが、天地間に我れ独りといぅ、無心、無我の境でやる。

これが一番大事なことでな、今一度やってみますで……

             * * * * *

■よぉあんなアホなことやっとんなぁ。

えぇ年した男が、真面目な顔して。

教えよっちゅうやつも教えよっちゅうやっちゃけど、教わろっちゅうやつも教わろっちゅうやっちゃで……。

こんなもんの稽古に、ほかに誰が来るかい。
えらいやつと友達になってしもた……。

どんならんなぁ、ホンマにもぉ。

また今日仕事に行かれへんがな……

■あぁ~あ、長い稽古やなぁ……。下手な稽古は休むに似たり、こらどぉ考
えても止めないかんで……。まだかぁ……、稽古もえぇが、こぉ長いこと待
たされたら……、退屈で退屈で……

■「ふぁ~~~っ、あぁ~~~~」たまらんわい。


【さげ】


▲おぉ~、お連れさんはご器用じゃ!


【プロパティ】
 端唄=地歌の曲種のひとつ。上方のはやり歌(端歌)や芝居歌などの様式を
   摂取した歌物。曲風は多様。十八世紀中に多数作曲され、現行の地歌
   や曲目の大半を占めている。上方端歌。
 ナンバ=[舞踊用語]日本舞踊では右手を前へ出した時には左足を、右足を
   出せば必ずその方へ左手を出すときまっている。それを右手と右足、
   左手と左足を同時に出すのをナンバという。
 電車の停留所=大阪市電は1908(明治41)年、四ツ橋を中心として四ツ橋筋
   を南北線(大阪駅~四天王寺)、長堀通を東西線(築港~上本町2丁目)
   が開通。心斎橋駅は東西線、難波駅は南北線。ちなみに地下鉄御堂筋
   線が開通するのは梅田~心斎橋が1933(昭和8)年、心斎橋~天王寺が
   1942(昭和17)年。御堂筋が開通したのは1937(昭和12)年だから、ほぼ
   同時期に工事をしていたことになる。当時の雰囲気を感じたいなら、
   地下鉄心斎橋駅のホームに立つとよい、ホーム真ん中にある柱を取り
   除いたところを想像していただくと、その他はほとんど当時のままの
   意匠が残る。
 チビス・コレラ大流行=1885(明治18)年、腸チフス、コレラ大流行。大正
   時代では1912(大正1)年から1916(大正5)年にかけてコレラ大流行、
   1914(大正3)年、東京で発疹チフス発生各地に大流行。
 しゃ~ない=仕様が無い→しょうがない→しゃ~ない。
 柔道=1882(明治15)年、嘉納治五郎が創始した講道館柔道。それ以前は各
   流派柔術。
 やごえ=「や」という掛け声。
 いちびる=調子に乗ってはしゃぐ。ふざける。「市振る」市振りの嬌態か
   ら来たもの。市振り:せり市で手を振って値の決定を取り仕切る。
 どんならん=どうにもならない。どうしようもない。
 音源:1982/08/22 枝雀寄席(ABC)

  

 

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五代目柳家小さんの噺、「唖の釣り」

2015年10月04日 | 落語・民話

五代目柳家小さんの噺、「唖の釣り」(おしのつり)によると。
 

 上野の池は古くから殺生禁断の地でした。ところが七兵衛という男は、毎晩こっそりと上野の池へ鯉釣りに出掛け、それを魚屋に卸して生計を立てていた。それを聞いた与太郎さん「おらぁも連れて行ってくれ。ダメだったら、この話みんなに言ってしまうからな。」と脅して頼んだ。これには 七兵衛もしかたがなく、その晩、与太郎を連れて釣りに出掛けた。

 別れて釣り始めたら、与太郎は食いがいいのでキャアキャア言いながら釣っていたら、役人に捕まってしまった。かねて教わっていたとおり「病気のお母ぁが鯉を欲しがるが貧しいので買うことができません。悪いこととは知りながら釣っておりました」。しどろもどろながら教わった通りに申し開きをしたら、「こいつは少し足りない男のようだが、親孝行の為なら、今夜だけは見逃してやろう」、と許してもらった。

 続いて、今度は七兵衛が見つかったのだが、いきなり「また釣っとるかァ」と殴られた。「また」というのだから与太郎がしくじったのだと思った七兵衛、とたんに舌がもつれて声が出なくなってしまった。役人が唖と思い込んだのを幸い、器用に身振り手振りのパント マイムで親孝行の説明をする。
「なんと、今晩は親孝行が流行るわい。なかなか器用な唖だな。大目に見てやるぞ」。
それを聞いた七兵衛さん、「あ、ありがとうございます」。
役人はビックリして 「あ、本当に器用な唖だ。口を利いた」。

 

 

  

 

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ドクター・中松、治療法が追い抜かないと「私は100パーセント死ぬ」

2015年10月04日 | 面白画像

 現代医療では治療できない「前立腺導管がん」になり、医師から今年末までの余命と宣告を受けている発明家のドクター・中松氏(87)が2日、東京・有楽町の日本外国特派員協会で会見し「がん治療の10種の発明」のうち半分まで完成したと明らかにした。

 中松氏によれば、今年中に10種類が完成すれば、晴れて2016年の正月を迎えることができるという。「大みそかに向けて、今はがんが先頭を走っている。後ろを走っている治療法が追い抜いて先にゴールのテープを切らなければ私は100パーセント死ぬ」と断言した。

 現在は以下の5種までは、完成しているという。〈1〉20種類の薬草が入ったお茶「トゥエンティー」〈2〉がん撲滅ソング「Even Cancer Face Very Bad (がんの顔つき悪くても)」〈3〉がんを撲滅する「ガンガンカレー」〈4〉がん撲滅のためのふりかけ「ガンガンおいしい」〈5〉がんに負けない心の健康法。

 年内あと3か月で発明しなくてはいけないのは次の5種だ。〈6〉144歳まで生きる健康法「リボディ」〈7〉がんを治す「ガンガンドリンク」〈8〉がんに立ち向かう「ガンガン筋トレ」〈9〉がんを退治する水を使った「アクア治療法」〈10〉がんを退治する「ガンガンロボット」。

 中松氏によれば、がんの進行は日々進んでおり、この日は車いすに乗って登場。先月17日に米国のハーバード大で行われたイグノーベル賞授賞式の様子をビデオで紹介した後は、自身が発明したという給油ポンプを握りしめながら高らかに「がん撲滅ソング」を歌った。

 会見の終わりには、英国の教育専門誌の世界大学ランキングで、母校の東大が、アジアの首位から転落したことを嘆き「東大に代わって首位になれる大学を死ぬ前に私が作る」と宣言をして締めくくった。



あわせて読みたい

テキトー男・高田純次が散歩番組に引っ張りだこ 「年寄りを早く死なせたいんじゃない?」

2015年10月04日 | ニュース

 タレントの高田純次(68)が、テレビの散歩番組に引っ張りだこだ。BS12 トゥエルビの「高田純次のアジアぷらぷら」では、約4年にわたってアジア諸国を歴訪。さらに、9月下旬からは、テレビ朝日系で新番組「じゅん散歩」がスタートする。「テキトー男」と自他共に認めるタレントを、テレビ局はなぜロケに連れ出すのか-。BS12の番組が10月からリニューアルすることに伴い、取材に応じた高田は、「年寄りを早く死なせたいんじゃないの?」と冗談を連発しつつ、散歩への思いを語った。

旅番組は「安くあがる」

 最近、ちょうど僕、(椎間板ヘルニアと脊柱管狭窄症の)手術をしてね。歩かなくちゃいけないっていうんで、散歩番組はもってこいなんですよ。もう、ほとんどリハビリだと思っています。右足のリハビリ。でも、今度は右足の方が左足より太くなっちゃったらどうしようと思って。右足や左足だけじゃなくて、真ん中の足も強くしなくちゃいけないんだけどね(笑)。

 どうして(テレビ局が)僕を散歩させたがるのかって? 何でだろうね~? 年寄りを早く死なせたいんじゃないですか? でも、僕はもともと、ロケ番組は大好きで、話が来ると、すぐ行っちゃうの。

 最近、旅番組、ありすぎるよね。(ほかの番組を)全部駆逐して、僕が一番面白いのを作らなくちゃいけないよね。ほかにやっているところに電話かけて、つぶすようにしないと。

 旅番組が多いのは、(製作費が)安くあがるからじゃない? 意外とね、歩いているのを撮っていけば、安く上がるから。ただ、僕のギャラが×××万円とかとるから、ちょっとそれだけはネックかなと思うけどね~。

「北朝鮮に行きたい」

 (BS12の番組では)アジアを回ってたんだけど、だんだん行くところがなくなっちゃったから、(10月放送分から)ほかの国にも行くことにしたんです。だから、最初は「北朝鮮に行きたい」とスタッフに伝えたんだけど、「もう少し待ちましょう」と言われたので、(リニューアル第1弾は)サンマルシュ…じゃない、米国のサンディエゴに行くことになったんです。

 世界にはまだ行ってないところたくさんあるからね。ギリシャにドイツ、ロシアや、エジプトにも行ってないね。あとは、北極と南極。究極はそのどっちかだね。南極に行って、タロ・ジロ(昭和30年代、日本の南極観測隊に同行した樺太犬)に会ってこようかな。あ、もういない? そうか。「宗谷」(南極観測に利用された日本の砕氷船)か何かに乗って、南極に行きたいな。氷に閉ざされて、ソ連の「オビ号」に助けてもらったりね。

インド1泊4日の強行軍

 (BS12の番組では)アジアの意外とマニアックなところに行ってきたから、この番組を見て、ほかの番組がパクるときがありますよね。あ、今「パクる」って言葉はだめだから、「まねする」か。チェンマイ(タイ北部)の「水かけ祭り」とか、僕が行った後に(ほかの番組が)やっていることもあったね。だから、すごく先駆的かなって思いますね。

 辛かったのは、インドで1泊4日の旅をしたことかな。飛行機2泊、ホテル1泊。強行軍はきついですね。それとね、若くてきれいな女性がいるようなところにはなかなか行けないんですよ。この前、台湾のウーライ(烏来)っていう、女性がみんなキレイなところに行ったんです。でも、そういうところに限って1泊できない。それが辛いところですね。

 あと、(この4年で)英語が話せるようになったね。「ハワユー」「グッモーニン」「イブニン」「ハウマッチ」…。しゃべれるようになったでしょ? それから、変わったことといえば、僕がちょっと老けたっていうことかな。僕の場合、1年たつと、どうしても前の年より1年分、老けちゃうからね。

「ロケは習性」

 僕はね、残りの人生があと40年くらいしかないのでね。思い切って世界を楽しもうと思って。海外でも国内でも、知らないことがたくさんある。そういうのを全部、吸収して死んでいこうと思うんですけど、どうでしょう? そういう感じで。

 ただね、僕はずっとロケ番組に出てきたので、それが習性みたいになっちゃってますよね。アングラで芝居をやっていた自分ですから、ロケで明るい太陽の下へ行く、というのが夢だった。それに、知らないところに行ける楽しさもあるからね。

 でも、一番は、家から離れられるというのがいいですよね。あまり女房の監視下でウジウジしているのもねえ。それが一番かな。

(聞き手 三品貴志)

 BS12 トゥエルビ「高田純次のアジアぷらぷら」は、10日11日から「高田純次のセカイぷらぷら」とリニューアルして放送。毎週日曜午後9時。

 また、テレビ朝日系では9月28日から「じゅん散歩」がスタート。月~金曜午前9時55分(関東ローカル)。

  

 

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安倍首相が京都で仏首相と会食

2015年10月04日 | ニュース

  安倍晋三首相は3日夕、京都市に新幹線で入り、来日中のフランスのバルス首相と京都迎賓館で夕食を共にした。原子力や科学技術、文化など幅広い分野の協力を確認する見通し。5日の官邸での正式会談を控え、信頼醸成を図る構えだ。

 両首相は4日には同市で開かれる「科学技術と人類の未来に関する国際フォーラム」に出席し、スピーチをする。その後そろって同市左京区の銀閣寺に移動し、庭園内を散策する予定だ。

 バルス首相は初めての来日。国内人気の高さから「将来の大統領候補」(日本外務省関係者)とみられている。投資促進のため、フランスの企業関係者と共に日本入りしている。

 5日の正式会談では、アフリカ支援や安全保障分野の連携も議題となるとみられる。


1648年に発行された世界最古の「無期債券」の利子をイェール大学が2015年に受け取る

2015年10月04日 | ニュース



国や地方の行政機関が事業を行うために公債を発行して資金を調達することはよくありますが、この債券には期間が無期限の「永久債」とされているものもあるようです。オランダで1648年に発行されたある公債がまさにこの「永久債」で、債券を所有するアメリカ・イェール大学が発行から約370年が経過した2015年に実際に利子の支払いを求めたことが明らかになっています。

YaleNews | A living artifact from the Dutch Golden Age: Yale’s 367-year-old water bond still pays interest
http://news.yale.edu/2015/09/22/living-artifact-dutch-golden-age-yale-s-367-year-old-water-bond-still-pays-interest

Yale to Be Paid Interest on Dutch Water Authority Bond From 1648 - Bloomberg Business
http://www.bloomberg.com/news/articles/2015-09-16/yale-to-be-paid-interest-on-dutch-water-authority-bond-from-1648

この永久債「Lekdijk Bovendams」は、オランダの水道管理機関「Hoogheemraadschap De Stichtse Rijnlanden」が1648年に発行した公債のうち、世界でも5枚だけ現存が確認されている債券書類の1枚です。この債券は、近代的な経済の仕組みが形成される初期の段階で発行されたものとして、歴史的にも重要な意味を持っています。書類はなんとヤギ(ゴート)の皮に書かれているとのことで、作製から350年を経てもほとんど劣化した様子が見られないのが驚くべきところです。


債券の額面は「1000ギルダー」と記されているとのこと。ギルダーは15世紀から2003年までオランダで使われていた通貨単位で、ユーロに変わる際に定められた最終のレートに換算すると、債券の額面は453.78ユーロ(約6万1000円)に相当します。

債券の詳細な画像は、以下のイェール大学のサイトで確認・ダウンロードすることが可能です。

Lekdijk Bovendams [water board bond]


イェール大学はこの債券の利子として136.20ユーロ(約1万8300円)を受け取ることが可能で、実際に水道管理機関にコンタクトを取って請求を行ったとのこと。機関のスポークスマンであるClarion Wegerif氏は大学からの接触があったことを確認しています。利子の支払いの際にはダミーの記念小切手が贈呈された後に実際のお金を電信で送金することになっており、2015年9月21日に送金が行われた模様です。

Nederlandse obligatie uit 1648 levert rente op - rtlz.nl
http://www.rtlz.nl/business/bedrijven/nederlandse-obligatie-uit-1648-levert-rente-op

イェール大学はこの公債を2003年に2万4000ユーロ(当時のレートで約310万円)で購入しており、購入時点から2015年までの利子は13年間で0.6%となっているとのこと。額面と利子の計算が少しかみ合わない部分もありますが、支払いの経緯を記したとみられる以下の文書では、2003年を最後に処理が止まっていた様子を伺い知ることができます。なお、2003年に26年間分の支払いをまとめて受けたのも、同年に債券を入手したイェール大学だったとのことで、今回の請求は2度目ということになります。


多額の基金を運用して1兆円以上の資産総額を持つとみられるイェール大学にとって、今回の請求は単純に利益を獲得するということよりも、実際に永久債が今でも有効であることを確認するためのアクションだったようです。1648年にこの公債で集められた30万ギルダーに上る資金は、オランダ国内を流れるレック川の堤防を築くために使われたそうです。

なお、この債券「Lekdijk Bovendams」は、イギリスの世界的オークションハウスの「クリスティーズ」で出品されていたこともある模様。実際に債券を手に入れて、数百年に及ぶ時の流れに身を投じるチャンスも残されているようです。

  

 

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