無理しないでボチボチ

ジョークとニュース間違え無いように  

全てNETのコピペで出来ています。不都合なものは連絡ください。

世界びっくりニュース一覧 2015.10.6

2015年10月06日 | ニュース

世界中の仰天ニュースをお届け!

人間には理解不能な猫の理論「猫ロジック」の法則にもとづいた猫たちの行動 カラパイア (10月6日)

猫は時として不可解な行動をとる。謎すぎてわけがわからなくなる。理解しようと思えば思うほど混乱してしまうわけだが、実は猫ロジックが働いているのだそうだ。人間ごときに理解できるロジックではないのだ。むしろ...

男性の脳と女性の脳の働きは異なることが判明、動物実験の見直しへ(米研究) カラパイア (10月6日)

脳障害のなかには、程度や状態に男女差が見られるものがあるが、その差異にどのように生物学的または文化的な要因が関係しているのかについてははっきりしていない。しかしこのほど、男女の脳の働きは分子レベルで異...

一度失った体の一部がまた元に戻る。驚くべき10の接合手術成功例(閲覧注意) カラパイア (10月6日)

突拍子もない事故や事件に巻き込まれ、腕や足など体の一部が切断されるという事例は後を絶たない。つい100年前まで接合手術はとても難しく成功率も低かったそうだが、最近の医療技術の発達により、一度は失った体...

W杯代表ホテルで英国王の亡霊「目撃」、ウェールズ選手が証言 ロイター (10月6日)

[ロンドン5日ロイター]-ラグビーのワールドカップ(W杯)イングランド大会で3連勝と好調なウェールズ代表チームの宿泊先に、16世紀のイングランド王ヘンリー8世の亡霊が現れたとの証言が相次ぎ、話題を呼ん...

ドリフト走行が原因の国も!生まれた国でこんなに違う、各国別早死の主要な原因 カラパイア (10月6日)

この世の死には様々な原因があるが、その中の最も不公平で理不尽な理由が「生まれた国」であろう。生まれた国が違うだけで、寿命も死因も大きく変わってくる。Voxが作製したこの動画では、各国における早死にの主...

カリフォルニア州が「死ぬ権利」認める、医師ほう助自殺を合法化 ロイター (10月6日)

[サクラメント(米カリフォルニア州)5日ロイター]-米カリフォルニア州のブラウン知事は5日、末期患者に対し医師のほう助を伴う自殺を合法化する法案に署名した。法案は、2人の医師が患者の余命を6カ月と判断...

ロンドン紳士服通りに羊の群れ、「ウール週間」のPRイベント ロイター (10月6日)

[ロンドン5日ロイター]-オーダーメイドの紳士服店が並ぶことで知られる英ロンドンのサビル・ロウで5日、道の一角に羊の群れが現れ、道行く人たちの注目を集めた。この企画は、英国で11日まで開催されている「...

「UFOと遭遇したのに、BBCが全部カットした」エイリアン研究者マット・ライオンズが衝撃暴露 TOCANA (10月6日)

メディアがもみ消した、幻のUFOの姿――。ある大物が出演したBBCのドキュメンタリー番組にまつわる疑惑が、英国のオカルト愛好家たちの"聖地"誕生50周年に合わせて再燃している。【その他の画像と動画はこ...

ヒトデって強烈なプレデター属性だったんだ。ヒトデがムール貝を捕食する高画質タイムラプス映像 カラパイア(10月6日)

そもそもヒトデって人の手の形をしているし、よく見ると表面ツブツブ注意だし、超深海から浅瀬まで水温問わずどこにでもいるし、約5億年前に誕生したって話だし、わりとマジで相当凄い生物なのかもしれない。でもっ...

96%の的中率で「死期を予測する」スーパーコンピューター! 医師の診断ミスも指摘できる可能性=米 TOCANA(10月6日)

自分の死期が迫っているのがわかる!?テクノロジーの進歩は吉と出るのだろうか、まるでデスノートの死神を彷彿させるスパコンが話題になっている。【その他の動画と画像はコチラから→http://tocana....

婚活サービスも「ハラル」、マレーシアのイスラム教徒 ロイター (10月6日)

[クアラルンプール5日ロイター]-マレーシアの若い男女の間で、イスラム教の教えに従った方式で将来のパートナーを探すサービスが人気だ。人口の約3分の2をイスラム教徒が占める同国では、婚活サービスもイスラ...

怪奇!ハムスターが乗っていないのに回転している回し車 カラパイア (10月6日)

しかもいつもより多く回っているような気もしなくもない。ハムスター専用車両であるところの回し車だが、確かにハムスターは乗っていない。だが回っている。その真相はこの後すぐ!なのだupside-downru...

人類史の解明のヒントか! 280万年前のヒト属新種「ホモ・ナレディ」とは? TOCANA (10月6日)

突然だが、ちょっと昔を振り返ってみていただきたい。中学1年の社会・歴史で最初に習った授業は何であったか覚えているだろうか?人により学習した時代や場所は変われど、ほぼ普遍的なトピック......そう、我...

カナダ連邦裁、ムスリム女性のベール着用を支持 ロイター (10月6日)

[オタワ5日ロイター]-カナダ連邦控訴裁判所は5日、イスラム教徒の女性が市民宣誓式でニカブと呼ばれるベールを着用することを認める判断を下した。着用禁止を求めた保守党政権の要請は却下されたことになる。政...

閲覧注意?  動物愛護団体の「擬人化・屠畜場演技」が不評!! TOCANA (10月6日)

動物の権利を擁護する団体は世界各地で見られるが、この度、動物の権利活動家が集い、パリで過激なパフォーマンスを行った。人間の利己的な理由により、毎年1,500億匹以上の動物が殺害されている。この狂気(?...

トランプ氏の侮辱発言、メキシコ人がパロディ劇で反撃 ロイター (10月6日)

[メキシコ市5日ロイター]-メキシコで米不動産王ドナルド・トランプ氏を風刺した劇が始まった。米統領選挙に出馬表明し、メキシコ人に対する侮辱発言で物議を醸しているトランプ氏だが、メキシコのコメディアンや...

火星で「体育座りをするオジサン」が激写される! TOCANA (10月6日)

NASAが火星に送り込んだ無人探査機・キュリオシティからは定期的に火星画像が地球に送り届けられているが、一部の愛好家の間ではその写真の中に写り込んでしまった奇妙なものを探すことが恒例となっている。過去...

終わりなき北朝鮮の拉致問題 ― 被害者認定すらされない者たちが超えねばならぬ3つのハードル TOCANA (10月6日)

北朝鮮による拉致被害者らの再調査が始まってから1年以上が経過したが、いまだ北朝鮮からの「報告」は届かない。膠着状態が続くなか、1日に松原仁元拉致問題担当大臣が記者会見し、拉致の疑いが排除できない特定失...

「人間の死臭」はアノ動物に似ている? 科学的に解明された腐乱臭の謎 TOCANA (10月6日)

9月16日付けのオンライン科学ジャーナルの「PLOSONE」によると、ルーヴェン大学の分析化学者エヴァ・カイパーズ率いる研究チームが、人間の死体が腐敗分解されていく過程で放出する固有のガスの成分の特定...

なぜヘルメット? 安保闘争の場で使われた身分を隠すグッズ TOCANA (10月6日)

安保法制をめぐる、強引な議論の進め方は多くの国民の怒りを買った。審議の最中、国会前は連日のように安保法制に反対する人々が駆けつけた。その中でとりわけ注目を集めたのが、大学生による緊急行動として結成した...

北は中国、東西南はインドと国境を接する"幸福の国"ブータン。人口75万人ほどの小さな同国で現在、薬物事犯の逮捕者が2年前の倍に上るほど急増、薬物汚染が深刻な問題となっている。覚せい剤使用者、所持者には...

  

 

面白かったら、「ブログランキング」 

  

人気ブログランキングへ↑↑↑↑↑↑↑↑

 

サッと見ニュース日々のニュースを写真で早分かり 2015.10.6

2015年10月06日 | ニュース

桂米朝 菊江佛壇(下)

2015年10月06日 | 落語・民話

菊江佛壇(下)

【主な登場人物】
 若旦那  親旦那  番頭  菊江(芸妓)  店の皆さん

【事の成り行き】その119「菊江佛壇(上)」からのつづき

             * * * * *

●おい、ちょっと皆、ちょっと聞ぃてくれ。あの、今日は早じまいっちゅう
ことなったんや。いやいや、番頭の言ぅことよりわたしの言ぅことを聞きな
はれ、今日は早じまい。で、銘々好きなものを取り寄して、ここで一杯呑ん
でワ~ッと騒ごちゅうことになったんやさかいな、早いこと店片付けてしま
え。

 何や分からんけどね、悪い話やおまへんさかいなぁ、バタバタバタバタバタ……

★若旦那が「店片付け」て、どぉいぅことになりまんねや?

●さぁさぁ、お膳を出しお膳を、ズ~ッと並べんねで。それからな、徳利やとか盃やとか、
ぎょ~さん出して来い、ぎょ~さん出して来い。で、燗してドンドン、酒も
段取りあんじょ~やっときや。それから今から好きなもん言ぅねん、みんな
銘々好きなもん。わしゃ控えていくよってな「みんなこれで食べぇ、これで
呑めぇ」や、そんなんちゃうで。番頭、お前から言ぃ。

▲わたしゃ、もぉ何でも結構で

●おまはんが言わなんだら、誰も言われへん
やないかいな。言ぃいな、好きなもんあるんねやろ?

▲さいでやすか……、
ほな厚かましやすけど、夏場のこってございますよって、何かこぉ洗いか水
貝てなもん●贅沢なもん知ってんねやないか。ほな、何か白身の魚の洗いと、
水貝。結構やけっこぉや。

●源助、おまはん何?

★わたい、ほんだら蓮根の天ぷらお願いいたしますわ

●蓮根の天ぷら? ケッタイなもんが好きやなぁ、エビの天ぷら嫌いかえ?

★エビはあんた、口の中がクシャクシャしまっしゃろがな

●安もんしか食わへんさかいやお前、車エビ食べてみ、うまいでおい。車エビと蓮根の天ぷら
か、なるほどな。

●おい徳造、お前は?

★鯛の塩焼きをお願いいたします

●本膳やなぁおい、鯛の塩焼き? モッチャリしたもん言ぃよるなぁ。まぁまぁ見た目は立派で
えぇけどなぁ。ほな次は? おまはんは?

★餡巻きをお願いいたします

●餡巻き? あぁ、お前甘党やったなぁおい。せやけどお前、お膳の上へ餡巻き
乗せて座ってられへんでこんなもん。ちぃ~と、せや、栗のキントンにしと
き、食べたことないかい栗のキントン? うまいで。ほなこれ、五人前ぐら
い取ったるさかいな、こんだけあったらえぇやろ。栗のキントンと……

●おまはんは?

★ほなわたしは、鰻の蒲焼きでも

●夏場、結構けっこぉ、鰻の蒲焼か、なるほどなぁ。鰻の蒲焼きと……。芳造、お前は?

★鮪(まぐろ)の付け焼きをな

●えげつないもん食ぅんやなぁ、ハツの付け焼き? 脂でア
ブラで、そんなもん食われへんで……

●お清、お前は?

■ほな、鱧(はも)の落としでも

●おぉ、女ごが一番洒落たこと言ぅやないか、こらオモロイなぁ。一番粋(すい)なこと言ぃよったなぁ、
お清が鱧の落とし、梅肉かい? ほぉほぉワサビ醤油で? なかなか大した
もんやなぁお前。

●おもと、お前も遠慮せんでえぇ、遠慮せんでもえぇんや女ごしやかて言ぅ
たらえぇんや、欲しぃもん何でも言ぃなはれ

★ほんなら、あのぉ~、箪笥と
鏡台と針刺し

●嫁入りするねやないねやでおい、箪笥や鏡台ちゅうやつがあ
るかい、違うがなちょっとした食べるもんで、好きなもんを言ぃちゅうてん
ねや

★ほな、コンニャクのおでん

●いっぺんに下落しよったなぁ……

●次は何や次は? ナマブシの炒り付け、それからトビウオの塩焼き、あん
まりえぇもん食わんなぁみんな。お前は?

★海布(めぇ)と油揚げ(あぶらげ)を

●葬礼(そぉれん)やがな、メェとアブラゲてなもんが出て来やがったなぁ。

●あのな、まだ何人か抜けてるし、丁稚連中まだや、済まんけどおまはんな、
ズ~ッと聞ぃて銘々書いて、注文に行く先が一軒やないで、いろいろやさか
いな。料理屋、仕出屋行かなんのんと、それから煮売屋の方がえぇのんとそ
れぞれあるさかい、てんで手分けして。

●それから藤七っとん、ちょっと……

★へッ

●こら、おまはんやないとあかん……、

あのな、北の新地の、曽根崎の真ん中へんに「大滝(だいたき)」っ
ちゅう御茶屋があるねん、聞きゃじき分かる。そこでな、この手紙……、こ
れを渡して、菊江っちゅう女ごや「化粧も、衣装も、髪も、なんにも要らん、
そのままでえぇさかいちょっとでも早よ来てくれ」っちゅうて、えぇか。

●ほで、駕籠で裏から回って、で、裏の木戸から駕籠のまま庭入れるねんで、
えぇな。これ、駕籠屋にやる祝儀や、半分やって半分おまはんの懐入れとき

★へっ、さいでやすか、ほなちょっと……、心得とります。

 ちょっと気の利いたやつに走らせます。

●さぁ、みなドンドン酒運び、酒。おぉ、済まんなぁ、そんなとこへ座った
んが因果やと諦めてな、お清とおもととお滝も燗番手伝(てっと)ぉて、いず
れまた丁稚連中に代わらすよってにな。さぁさぁ、とりあえず漬けもんでも
ザクザクッと切ってもっといで、当座のアテや。さぁいこ、さぁさぁ、さぁ
いこ。

▲若旦さん、あんさんから

●まぁまぁまぁ……

▲さいでやすか、でわ、頂戴
をいたしますが、わたしこんなお店で昼の日なかからお酒をいただくやなん
て、お正月以外にこんなことあれしまへん、頂戴をいたしますです……。昼
酒といぅのはよぉ回るちゅうこと聞ぃとりますねん

●まぁまぁまぁ

▲そないいただいたら、わたしポ~ッとじきに顔へ出ます。

●出たらえぇねやないかいな、さぁみんなもぉ、勝手に盃選んでドンドンや
りや。

             * * * * *

 えらいことになりましたが……。キタの菊江さん、若旦那からの手紙やっ
ちゅうんで広げて見ますといぅと、見覚えのある筆跡やさかい疑いはいたし
ませんが「衣装も要らん、化粧も要らん、髪もそのままでえぇ、ちょっとで
も早よぉ来て欲しぃ」と書いてある。

 「何事か知らん?」と思いながら、まぁ常着でございますが、白の帷子(か
たびら)麻ですなぁ、それに草色の薄い一重帯を締めまして、

スカ~ッとした格好ですが、もちろんお座敷着ではございません。

駕籠に乗ります……。

 明治になりましても、この色街だけは駕籠があったんでございますなぁ。
だいぶ長いことあったそぉでございまして、東京も今でもあるんですかなぁ、
花柳界に人力車が走っとりましてね、学生アルバイトなんかが走ってます。
あれはその、島田の大きな髪を結いますといぅと、タクシー、車では上へつ
かえますので、人力車の方が具合がえぇっちゅうてな、何台か走っとぉりま
したが。

 まぁ、駕籠が明治時代でも色街だけはあったんでございます。それに乗り
まして蜆(しじみ)橋を渡ります。大江橋、淀屋橋、橋を三つ渡る。浮世小路
(うきよしょ~じ)を東へ曲がると、そこで提灯の火を消しまして……

★駕籠屋はん、その木戸やその木戸や。いや、止めんねやない、駕籠のまま
ズッと入ってズッと。庭石気ぃ付けとくなはれや……

▼へッ、このへんでよろしますか?

★そのへんでえぇ

▼おい相棒、じっくり下ろせよ。へい、どぉぞお出ましを……

◆ここは? あの、どちらはんだんのん?

★若旦那のおうちでございますねん

◆若旦那のおうち! かめしまへん?

★かめしまへん大丈夫、ご心配要りまへん。どぉぞ、どぉぞお通りを……

 奥庭から中庭、仏間、中の間と通りまして、広いところへ出てまいります
と、煌々と明かりがついて燭台が並んどります。左右にお膳をずら~っと並
べて、その上に皆けったいな色んなもん乗せましてな、一同が並んでます。

◆まぁ、こんなところへ、大勢さん居はります……

●おぉ菊江、待ってたんや。こっちおいで、こっちおいで

◆「そのままで来てくれ」言われたんで、このまま来ましたけど、こんな晴れがましぃところへ。

ちょっとお化粧と髪の毛だけ……

●何を言ぅてんねん、気ぃ遣うやつ一人も居れへん、皆うちの
店のもんばっかり、これ皆うちの店のもんや。

◆まぁ、お店のお方でございますかいな、ご挨拶もせんと勝手なおしゃべり
をいたしまして申し訳ございません。わたくし北の……

●挨拶なんかせぇで
もえぇ、こっちおいでっ。これが番頭や、この番頭のお陰で、粋な番頭の計
らいで家でお前と会えることができたんや

◆まぁまぁ、ご番頭さんでござい
ますかいな、いっつもご迷惑ばっかりお掛けいたしとぉります。わたくし、
北の新地の菊江と申します。

▲いえ、お名前は伺ごぉとります。キタの菊江はんといぅたら立派な芸妓は
んやちゅうことは、わたしゃ聞ぃとります。なるほどなぁ、やっぱりキタの
お方はどことなし粋なところがございますなぁ。わたしら、キタなんか柄に
合やいたしまへんけれどもな、また若旦那のお供でいっぺん寄せていただき
たいと。あぁ、さいでございますか、こら恐れ入ります。へぇへぇ……

▲まぁ~お酌の仕手で味がこないに違うもんでございますかいな。ありがと
さんで、こっちからも、まぁまぁ……、おっと、こら気ぃ付きませぇで。わ
たいらの酌より若旦那の酌で、要らん手ぇ出しまして済まんこって。今日も
若旦那に一番痛いとこをキュッと押さえられたもんでやっさかい、もぉコト~
ンと極楽往生安楽国サッパリわや。へっ、へっ、へっ、へっ……

 番頭、太鼓持ちになっとります。

●おいおい、皆こっちばっかり見て、盃の手ぇが止まってしもたら何にもな
らへんやないか、ドンドン呑みぃな、ドンドン呑みぃな……。おい佐助、やっ
てるか佐助

★佐助、いただいております

●あぁ、いただいてるか。いや結構
けっこぉ、今日は過ごしや、過ごしたらえぇねん

★いただいとぉります、佐助……。若旦那、せやけどあんた偉い。若いけど、偉いなぁ……、若いもん
こないして集めて、ごっつぉ並べて酒呑まそやなんて、立派なもんじゃわい。

★に、人間何だっせ、か、か、堅いばっかりではあかん、うん。やっぱり、
使うときゃ使わなあかんねん。極道する時はう~んと極道して、その代わり
いざといぅ時には、また、極道せなあかんねん……。若旦那、わしら何だっ
せ。佐助、ご当家へ初めて寄してもぉた時は、あんさんまだ四つでやしたで。
溝またげてションベンしてなはったんや。

★あんさん悪さな子ぉやったで。言ぅことなんかなかなか聞きなはらん。ム
カムカしてきてな、蔵の横手へ連れて行て、拳骨でボ~ンとやったら「うぇ~
ん」いぅて泣きゃがった……

●おい、そんなことしたんかお前? 何をすんねん

★む、む、昔のこったす、昔のこってんがな(クゥ、クゥ、クゥ……)
藤七っとん、ちょっと注いでくれ! かめへん、ちょっと注げ! お前の酒
やないねやないかい、遠慮せんとグッと注げっちゅうねん。

★若旦那、わたいなぁ、初めてご当家へ寄してもぉた時、あんさんまだ四つ
でやした。溝またげてションベンして……●あぁ、分った、分った★な、何
が「分かった、分かった」や? どぉ分かったちゅうねん、何が分かった?
●悪い酒やなぁ★どないやっちゅうねんッ▲佐助どん……★心配要るかい、
何やねん。怒ったはらへんわい。怒ったって何やねん、蔵の横手へ連れてっ
てボ~ン「うぇ~ん」いぅて泣きよんねん、何が恐いねんこんなもん(クゥ、
クゥ、クゥ……)

★なぁ、若旦那。わたい、初めてご当家寄してもぉた時は、あんさん四つで
やしたで。溝またげてションベン……、なぁなぁ、もし、これッ……

▲うるさいなぁ

★「うるさい」? うるそぉて悪かったなぁおい、どぉうるさいね
や? おい、うるさけりゃ……、何やねん、放っとけっちゅうねん、若旦那
怒ったはらへん、怒ったはらへん。何をいぅても古い奉公人やちゅうて笑ろ
て聞ぃてくれたはるやないかい。

★若旦那、堪忍しとぉくなはれや。佐助、喜んでまんねん、悲しぃて泣いて
んねんやおまへん、嬉しぃて泣いてま。古い奉公人やと思やこそ、あんたホ
ンマ……、おい注げ! 注がんかい、注げっちゅうたら注ぎさらさんのかッ!
ハッハッハッ、ビックリして徳利持って逃げて行てまいよった。ハハハハッ、
こっち注げ注げ、注げて……、いてもたろかッ、ホンマにもぉ。何かしてケ
ツカル、おのれの酒みたいな顔しやがって、ウワッ!

★若旦那、皆逃げて行てしまいよった、ハハハハッ……。若旦那、佐助喜ん
どります、喜んどりま。あんたなぁ、わて初めてご当家寄してもろた時、あ
んさんまだ四つでやした。溝またげてションベンしてな、蔵の横手へ連れ行っ
てボ~ン「うぇ~ん」いぅて……、それが色気付きやがってお前、女ご傍へ
置いてイチャイチャ、イチャイチャさらして、えぇかげんにせぇっちゅうね
んッ! ハハハハッ……、おかしぃもんやなぁ、ハハハハッ……佐助、喜ん
でまんねん、堪忍しとくなはれや……

★寝てしまいやがった……。悪い酒やなぁ、一人で三人上戸みなやってまい
よった。みんなこいつにクダ巻かれて酔いが覚めたやろ、皆景気よぉやれ景
気よぉやれ、ドンドン呑め。菊江、お前もちょっと呑んだらどやねん

◆若旦さん、あんさんこそちょっとお呑みやしたら

●わしゃ、もぉ呑んでるがな。

◆いぃえぇ、ちょっとも呑んだはらしまへん。そら、呑まれしまへんわなぁ。
大事の大事の奥さんが……、御寮人さん患ろぉたはるそぉやおまへんかいな
●そんなもんお前、御寮人さんてなこと言わんといてくれ。わしゃ何とも思
てへんねやさかい、見舞いにでもいっぺんも行ってへんねやがな

◆嘘つきなはれ、心配でかなわんなら、心配でかなわんと正直に言ぃはったらよろしぃ
の。顔に「心配や」て書いておまっしゃないか

●何をすんねや……

●おいおいおい、皆こっちジ~ッと見て何をすんねやいな、こいつとちょっ
と話があるんやさかいな。そっちいっぺん踊るなり……、あッそや、いっぺ
んこいつら踊らしたろワ~ッと。三味線持って来い三味線。かまへんかまへ
ん、弾ぃたってくれ。それからな、太鼓の代わりや、丼鉢でも皿でも何でも
チャンチキ、ワ~ッと陽気にいこ。調子合ぉたか、合ぉたらひとつ、弾ぃた
弾ぃた……♪

●さぁ、ほんだらわしもひとつ呑むよってな、注いでくれ。おい、こん中で
唄うやつ、踊るやつ、ひとつドンドン派手にやりや、派手にやりやッ

▲ほんだらな、久し振りでわてがちょっとここで踊らしてもらいまっさかいな

●やったらえぇ、やったらえぇがな。さぁ、さぁさぁ……♪

             ♪ ♪ ♪ ♪ ♪

■定、遅れんよぉに付いといでや。南無阿弥陀仏、なむあみだぶ……、あぁ
長生きするとこんな悲しぃことにも遭わないかん。なぁ定、泣きの涙のこっ
ちにひきかえ、どっかおめでたいことでもあるとみえて、陽気に散財してな
はるうちもあるがな……

★親旦さん、あらうちでっせ。

■何じゃと?

★うちや

■何でうちがお前、あんな……、ホンに、こらうっちゃ
ないかい! 何をさらすやら、また……。これこれ、ちょっと開けとぉくれ
(ドンドン)これ、開けとぉくれ、開けんかこれ(ドンドン、ドンドン)

★あ、コリャコリャコリャコリャ……。あ、よいと、よいとよいと……

■これ(ドンドン)開けとぉくれ(ドンドン)これ番頭! 佐助、太七、藤
七、これッ藤助、開けろ(ドンドン、ドンドン)

★ちょっと待った、ちょっ
と待った、おかしぃ具合やおかしぃ具合やで……、えらいこっちゃ、えらい
こっちゃ、親旦さん帰って来はりました。

●お、親父が帰って来た? そらえらいこっちゃ。どぉ、どぉしょ~……?
誰や、こないぎょ~さん燭台出したん?

★あんたが「出せ」て言ぃなはったんやおませんかいな

●お前にやる、食てしまえ

★そんなもんが食べられます
かいな、背中へ燭台突っ込んだらいかん、体がシャッチョコばってもて……

●この鍋もこっちへ……、もぉ鯛の塩焼きやみな、どっかへなおして……、
菊江や、菊江や

◆若旦那、わたし、どないしたらよろしまんの?

●せやせや、
奥へおいで奥へ。あのな、うちの仏間、お仏壇入れ、あそこんとこ大きぃ、
ここへ入っとき。じきに出したるさかいな、もの言ぅたらあかんで、ちょっ
と待っててや……

●さぁ、表開け

★誰が開けまんねん?

●お前が開けんかいな

★悪い役やなぁホンマ……、へぇ、開けますあけます。お帰りやす……

★お、お帰りやす。おかえり、やす。お、か、え、り、やす~ウイッ

■派手な出迎えよぉじゃなぁまた……、え? 何じゃお前、背中から突き出てんのん

★燭台でお辞儀がでけしまへんねん、背中へ入ってまっさかい燭台

■お前の股ぐらから、鍋が顔出してるやないか

★痔ぃが悪いんでな、温めてまんねん

■何を言ぃくさる。おもと、お前の懐から鯛が顔出してるぞ

★まぁ、この子は、ネンネンヨォ……

■何を言ぃくさる。番頭どんはどこに居てます? 番頭わ

▲こ、ここに、控え居りまするッ

■さてさて、頼みがいのあるお方じゃなぁ

▲こ、堪(こた)えまっせ~ッ

■何を言ぅ、堪えぇでかい。せがれは?

●お父っつぁん、バァ~
■「お父っつぁん、バァ~」やないで……、とぉとぉこなたはお花を見舞い
に行てやらなんだな……

■わしが入って行くと、うつろな目ぇで顔あげて、お前の姿探してる。わし
一人じゃと分かったら「若旦那、今日もお越しやございまへんか。よくよく、
嫌われたもんだすなぁ」と、たったいっぺん恨みがましぃこと言ぃよったで。

■「いやいや、今日はどんなことがあっても、わしも連れて来ると言ぅて、
本人も来る気ぃになってたんじゃが、極道の罰(ばち)が当たったかして、朝
からえらい熱でな。体に震えがきて、どぉしても来ることがでけんことになっ
たんじゃ」と言ぅたら「さいでございますか、心付かんこってございました。
どぉぞお父っつぁん、若旦那によろしゅ~」と、わしの手を握りに来たと思
たらな、顔の相がす~っと崩れた「これ、お花……」

■見たら、この世のものやなかったがな……、南無阿弥陀仏、南無……。こ
れからじきにわしゃとって返す。お前も頭から水でも浴びて、酔い覚まして
じきに失せくされッ! あんな女じゃ、極楽往生は間違いないがなぁ、うち
には親鸞さんのありがたいお姿がある。あれをいただかしてやらんならん、
ちょっと……

●お、お父っつぁん、どこへ?

■お仏壇の引き出しに入れたぁる

●いや、あ、あかん

■「あかん」て何があかん?

●あのお姿はそんなとこ入ってぇしまへんで

■あそこへわしが入れといた

●いえ、場所が変わってます、場所が変わってます

■「場所が変わってる?」どこへ入れた?

●あの、あの、箱、箱へ入れた

■何の箱?

●いえその、箱、下駄箱

■下駄箱入れるやつがあるかいな、何をすんのじゃい……

 仏間へ行く。お仏壇をギィ~ッ、と開けますといぅと、中に白い帷子の菊
江がこぉ立ってる。

■うわぁ~ッ、迷ぉて出たか……。お花、無理もない、無理もない。あぁ、
その気持ちはよぉ分かるが、堪忍してやっとぉくれ。せがれはわしが命に代
えてでも、まともな人間にしてみせるで、どぉ~ぞ迷わず成仏しとぉくれ。
な、な、迷わず、どぉ~ぞ消えてくだされ……


【さげ】


◆はい、わたしも消えとぉございます。


【プロパティ】
 あんじょう=うまい具合に。味よく→アジヨォ→アンジョ~。
 洗い=刺身の一種。コイ・スズキ・コチなどの新鮮な魚肉を薄く切り、冷
   水や氷にさらして身をしめたもの。
 水貝=新鮮な生のアワビを切って冷やしたもの。三杯酢などで食べる。
 本膳=正式の日本料理の膳立てで、客の正面に置く膳。
 餡巻き=和風ロールケーキ。
 ハツ=鮪(まぐろ)。
 鱧(はも)の落とし=骨きりした鱧をさっと湯引きし、冷水でしめた料理。
   梅肉、酢味噌でいただく関西の夏の味。
 針刺し=裁縫用の針を刺しておくための道具。L字型をした一方に針を刺
   すボンボリが付いており、片方を座布団の下に敷いて固定させる。運
   針の際、布をひっ掛けて安定させる器具も付属する。
 コンニャクのおでん=甘味噌を付けて焼き上げた田楽。
 海布(めぇ)=ヒジキに似た海草の一種。あるいは食用の海草一般。または
   荒布(あらめ)・若布(わかめ)。メが長音化したもの。
 アテ=当て:酒やビールの肴(さかな)。または、食事の副食物。
 帷子(かたびら)=夏用の麻の小袖。
 一重帯=厚地の、かたい織物を用いて裏や芯をつけない帯。主に女帯で夏
   に用いる。
 浮世小路(うきよしょうじ)=中央区高麗橋通と今橋通の間にある小路の通
   称。また、道頓堀(うどんの今井東側)と法善寺横丁のほぼ中央をつな
   ぐ南北約五十メートルの路地。も浮世小路と称する。
 ワヤ=駄目。失敗。無謀。滅茶苦茶。枉惑(わ[お]うわく:ごまかしだま
   すこと)の約訛という。ワウワク→ワワク→ワヤク→ワヤ? 「さっ
   ぱりわや」は散々な目にあった意味。てんやわんやのワンヤもワヤか
   ら移ったもの。
 いてまう=いってしまう→いてしまう→いてまう:目的を達しようとする
   こと。ここでは「やっつけてしまう」の意として用いる。ほかに「死
   んでしまった」「失神してしまった」などもイテマウ。
 クダ=くだくだしい、の略。くどいこと。
 クダを巻く=管(くだ)を連想して巻くという、とりとめのないことを繰り
   返して言う。訳のわからないことをぐずぐず言う。
 失せる=なくなる、紛失する。行く、去る、居なくなる。来る、居るの卑
   俗語として用いる。
 親鸞さん=(1173~1262)鎌倉初期の僧。浄土真宗の開祖。別称、範宴・綽
   空(しゃくくう)・善信。諡号(しごう)、見真大師。日野有範の子と伝
   える。初め比叡山で天台宗を学び、のち法然の専修念仏の門に入る。
   1207年念仏停止の法難に遭い、越後に流罪。赦免ののち長く関東に住
   み布教と著述を行う。法然の思想をさらに徹底させ、絶対他力による
   極楽往生を説き、悪人正機を唱えた。主著「教行信証」は、他力の立
   場から浄土教の教理を純化・体系化したもの。ほかに「唯信鈔文意」
   などがある。唯円編の法語集「歎異抄」は有名。妻は恵信尼。
 私見=親旦さんがお花の幽霊と見まごうほど、菊江とお花は似ていたので
   す。ということは、若旦那は菊江にお花を見ていたのかもしれません。
   斜めにしか生きることが出来なくなってしまった不器用な若旦那です
   が、本当はお花を……、けど、真っ直ぐ上品にお嬢様として育った、
   出来すぎのお花に対しては上手に自身をコントロールできない。菊江
   も女の勘で分かっているようです。価値観の違う者が愛し合った結末、
   それからの若旦那の生き方に興味が湧きます。
 音源:桂米朝 1992/06/11 米朝落語全集(MBS)

  

 

面白かったら、「ブログランキング」 

  

人気ブログランキングへ↑↑↑↑↑↑↑↑

 

桂米朝 菊江佛壇(上)

2015年10月06日 | 落語・民話

菊江佛壇(上)

【主な登場人物】
 若旦那  親旦那  番頭  菊江(芸妓)  店の皆さん

【事の成り行き】
 日本橋といえば電器屋街、松屋町(まっちゃまち)は人形・オモチャの店が
集まり、船場、丼池は繊維・雑貨の店が寄ってます。そのほか鶴橋国際マー
ケットには韓国物産店が多く集まってますし、瀬戸物町なんかも陶器店が多
いですね。

 大阪湾に近い西区には材木商が多く集まり、堀江立花通りには家具店が集
まるのは道理でしょう。また、家具と仏壇というのは親戚みたいなもんです
から、昔は仏壇屋が集まっていたというのもうなずけます。

 堀江の仏壇、菊江仏壇。なんか、サブリミナルCMのようです。
(1998/08/09)

             * * * * *

 お運びありがとぉございます。今日はもぉ滅多にやらんといぅ珍しぃ噺を
聞ぃていただきますが、とにかく難しぃ噺で、誰もやらんにはやらんだけの
理由がございますわ。無茶苦茶に難しぃんでございますなぁ、ほんで「大ネ
タや大ネタや」昔から言われてます。で、あんまりオモロイことないしねぇ、
何でこれがそない大ネタになったんか……?

 まぁ古い腕のある噺家がこのケッタイな噺に挑んでみよぉ、といぅよぉな
気を起こさせるよぉなところは、まぁちょいちょいあるんでございますが、
東京の桂小文治といぅ人がやらはったんですが、これがポ~ンと途中が抜け
ましてね、もぉだいぶの年やったさかい「四十五分ぐらいあるで」ちゅうて
出て二十分ぐらいしかなかった。もぉポ~ンと飛んでしもたらあとへ戻らし
まへんねん、この噺は。

 

 夏のお噺でございます。今のよぉに冷房といぅよぉなものがなかった時代
は、寄席なんかでも夏はこの全部、戸・障子を外しまして、襖やなんか全部
簀戸(すど)にいたします。でこぉ、表の方も楽屋口もみな開けっ放しにする
と風が通りますわね。

 で、表の道が舗装なんかしてありません、地道で水がざぶざぶ打ってある
ので、割りとこのヒンヤリと風が流れたもんでございましてね。さほど、今
考えるほど、今の鉄筋コンクリートで冷房が止まったといぅよぉな、そんな
状態ではございません、よっぽどしのぎ易い。

 下も籐(とぉ)ムシロに変えまして、お客さんが夏は来はらへんさかいよけ
涼しいわけでございます。もぉ、バラバラバラッと座ってはるぐらいで、夏
はそんなんで入りが薄かった。でまぁ、怪談ばなしなんかやったりしたんで
すが。

 お芝居の方もそぉでして、おんなじよぉにやっぱり風が通るよぉにしてあっ
た。わたしも子どもの頃のことでよぉ覚えてませんねやが、焼ける前、戦争
前の中座、何回か行ってまんねんけど、夏にぶつかったことがいっぺんぐら
いで、幕間(まくあい)にね、屋根から雨を降らすんですなぁ、タンク置いと
いてザ~ッと休憩時間に。

 大して涼しぃことないんですけど、気分が違いますわ「うわぁ~、涼しぃ
なぁ」ちゅうて、あんなものはみな気分で涼しなったわけでございます、あ
れを見てるだけでね。確かに効果はあったんでっしゃろけど、それよりも精
神的な、心理的なと言ぃますかなぁ、そんなもんの方が大きかったよぉに思
います。

 風鈴がこぉチリチリ鳴るんでも、別にあれで「涼しぃなぁ」ちゅうほど風
が吹いて来るわけでもないんでっしゃろが、あの音で何かこぉ涼しぃなぁと
いぅ気になるんですなぁ。

 大正時代にこれは有名な話、大正初期ですなぁ、東京に橘家円喬といぅ名
人がおりまして、これが夏の暑いときに団扇や扇子もぉ波打ってますわ、そ
こでその「鰍沢(かじかざわ)」といぅ噺をやる、冬の寒いときに雪がこぉ降
りしきる、信州から甲斐の国へかけてのあの辺の山ん中の噺でございます。

 

 ズ~ッとその描写をやってると、お客さんの団扇の波がピタッと止まって
ね、バ~ッと肌脱いでた人が、こぉ寒さを感じて納めたといぅよぉな、まぁ
名人といぅものは大したもんやといぅよぉな話が残ってます。

 今のざこばがまだ朝丸と言ぅてた時分、大阪の厚生年金会館ちゅうとこで
真夏に「不動坊」といぅ雪の降る噺やってましてね、サ~ッと雪のとこやっ
てると客席のお客さんが、まくり上げてたこの袖を下ろしたりね、後ろに脱
ぎ捨ててあった上着を着たり「こいつ名人になりよったわい」思てね、で、
客席で聞ぃたら冷房が効き過ぎてたんやて。まぁまぁ、そら当たり前ですわ、
そない早よぉ名人になられたらこっちが困りますけど。

 冷房が効き過ぎるのん、困りますんですなぁ。夏やみな薄もの着て出とぉ
ります、ところが冷房が効き過ぎるとかなん。冬なんか暖房が効いてまっさ
かいね、わたしなんか冬暑ぅてかなんことがあって、薄もん着たいなぁちゅ
う気になりまんねん。で、夏こぉ冷房が効き過ぎると袷(あわせ)着て着たら
よかったちゅうよぉな、あべこべになってしまいました、世の中が。

 そぉいぅひと時代もふた時代も前の、明治のお噺でございますが……

■せがれ、これッ

●へッ

■どぉして、こなたはお花を見舞いに行てやらんの
じゃ、なんでいっぺんぐらい見舞いに行ってやらんのじゃ?

●「なんで?」
ちゅわれても、わたいだいたい、病人の見舞いてな嫌いでんねん

■「嫌い」
よぉそんなことが言えるなぁ……。あのお花といぅ女は、あらおまはんのな
んじゃ? 現在連れ添う女房やないかい、偕老同穴(かいろぉどぉけつ)の契
りを結んだ嫁じゃろ。いっぺんも見舞いに行てやらんといぅよぉな、薄情な
ことがあるもんかいな。

■だいたいおまはんはなぁ、移り気すぎるといぅのか飽き性じゃ。小(ち)さ
い時分に母親に死なれた不憫な子ぉじゃと思うさかい、ついつい甘やかして
しもた。わしも商売の忙しぃ最中やったさかい、目が行き届かなんだことも
あるが、甘やかして育てたもんやさかい我が侭になりくさって、物心つくか
つかんかから我が侭の言ぃ放題。ちょっと色気がついてきたら、年端もいか
んのに茶屋酒の味覚えくさって入り浸りじゃ。

■夜泊まり日泊まりしくさる、これではろくな人間になろまいと思ぉて何ぼ
意見しても馬の耳に風じゃ、お前だけわ。まぁまぁ気に入った嫁でももろて、
身ぃ固めたら変わるかも知れん思て、それが親の欲目じゃ「嫁をもらう気は
ないか」と言ぅたらお前が「実は嫁にもろぉて欲しぃ女がある」と言ぅたの
があのお花じゃ。

■「あの女を嫁にもろぉてくれたら、もぉ遊びにも出歩きません。家業にも
精ぇを出す」と、あの時立派なことぬかしたなぁ……。そんなこともあろぉ
かと思ぉて調べてもろたら、まぁ本人はもとよりご両親から、お人柄といぃ
商売仲間の評判といぃ、産毛で突いたほどの申し分もないわ。あぁ結構なご
縁じゃと思ぉて、さっそく人頼んで掛け合ぉてもろたら、先さんはお目が高
いなぁ。

■「承りますれば、お宅の若旦さんはえろぉお遊びなされた粋(すい)なお方
やそぉでございます。酸いも甘いも噛み分けたよぉな、そんなお方にうちら
の娘がもぉお側に置いていただけよぉはずはございません。世間知らずと言ぃ
たいが、まだ子どもでございます。これから仕込まんならんこともあるし、
もぉ少々手塩にかけましてご猶予をいただいたら、また先になってご縁がご
ざいましたら何分よろしゅ~……」といぅ、まぁ態(てぇ)のえぇお断りじゃ。

■縁のないもんならしゃ~ないわい、世間にはえぇ娘さんもぎょ~さん居て
はんねんやしと思て、お前に言ぅたら、あの時何じゃお前「お花が嫁にもら
えんねんやったら、わしゃもぉ誰とも所帯持つよぉな気はない。一生嫁はも
らわん」死ぬの生きるのと駄々け散らして、果てはワァワァワァワァ泣きく
さる。

■こんなやつ、と思たがまぁそこが親ばかじゃい。ヒョッとおかしな気でも
出しよらへんかと思て、恥を忍んでもぉいっぺんお願いに上がったら「それ
ほどまでに言ぅていただきますのを、これ以上強情張ってお断り申したら、
女冥利が尽きまする。行儀作法はもとより、ものの言ぃ方も分からん女でご
ざいますので、実の娘じゃと思ぉて、どぉぞお仕込みの程を願います」

■行き届いたご挨拶で嫁に迎えたんじゃ……。なんの行儀作法知らんどころ
か、言葉の端々にまで行き届いた、あんな利発な嫁女はまぁないわい。縫い
針から走り元の仕事から、華、茶、琴三味線に至るまで、女一通りの道でけ
んものはないわ。読み書き算盤かて男以上じゃ。まぁ、何といぅえぇ嫁さん
をもろたんじゃろと思て、あの時はわしゃ嬉しかったぞ。

■連れ合いを早よぉに亡くした親じゃと思ぉて、何をするにも「お父っつぁ
ん、お父っつぁん」ちゅうて立ててくれる嬉しさ。あの当座な、わしゃお仏
壇(ぶったん)の前で毎日、死んだ女房に言ぅてたわい「お前は早よ死んで可
哀相な、わしゃ長生きをしたお陰でこんな孝行な嫁をもらうことがでけまし
た。今日はあんなこと言ぅてくれた、こんなことしてくれた」ちゅうて嫁の
ノロケを言ぅてたんじゃ。

■お前もあの時は夜が明けたらお花、日が暮れたらお花、お花、お花……、
ちゅうてたが、ふた月と持たなんだなぁ……、ひと月ちょっと経つ時分に、
またぞろちょいちょいと家を空けだした。茶屋通いが始まった。夜泊まり日
泊まり、飽き性と言ぅたんが無理かい? 移り気すぎると言ぅたんが間違ごぉ
てるか?

●いや、ごもっともでおます。なるほど、おっしゃる通り、わたしゃもぉ移
り気で飽き性。えぇ、それに違いおまへんやろなぁ。まぁ、カエルの子ぉは
カエルと言ぃまっさかいなぁ

■何じゃい? その「カエルの子ぉはカエル」
ちゅうのわ? わしゃなぁ、仲間内のお付き合いのほか、御茶屋の梯子段上
がったこともない。お前らの極道と……

●いぃえ、極道が似てると言ぅてんのやおまへんねん。極道どころか、あん
さんはまぁ信心家すぎますわいな。信心は結構なこってございますけど、も
のには程っちゅうもんがおまっしゃろ。今日はどこそこの何かがあるたら、
ご座が勤まるたら、報恩講じゃとか、御開山(ごかいっさん)の、ご聖人の何
年忌じゃ、年会じゃ、あんなことばっかり言ぅて、もぉ一日おきぐらいに外
へ出歩きなはるがな。

●子どもとしたらあんた、あないして外へばっかり出て、ひょっと怪我でも
しはらへんやろか。なんかこぉ騒ぎにでも巻き込まれたりしたらかなんなぁ
と、お顔見るまでやっぱり気が休まりまへん「家に居ったかて信心はでけまっ
しゃろ、朝晩のお勤め以外にかて、あんさん信心しょ~と思たら立派なお仏
間がございまっしゃないか」ちゅうたら「いやいや、うちの小さいお仏壇よ
り、やっぱり立派なお寺さんやら、お飾りの見事なお堂へ行て信心する方が
ありがたさが違う」と、こない言ぃなはった。

●「ほんなやったら、うちにも立派なお仏壇こしらえたらどぉでんねん?」
ちゅうたら「実は立花通りのお仏壇屋に、気に入ったお仏壇があんねやけど
なぁ」とおっしゃる「それやったら買ぉてきはったら」ちゅうて、さっそく
人をもってだっせ、向こ行たところが、仏壇屋も目が高いなぁ……

●「承りますれば、お宅の親旦さんは方々の結構なところへぎょ~さんお参
りしてはります。とてもうちのお仏壇なんかお目だるぅて、お側に置いても
らえまへんやろ」と、こない言ぃはる「いや、そこを」っちゅうたら「それ
に、もぉ少々手入れしたいところもございまっさかい、ちょっとご猶予を」
とまぁ、態のえぇお断りでござましたわいな。

●ほたら、あの時あんさんどんなもんだした「あぁ、あのお仏壇にご縁がな
かったか」ゲソォ~ッとこぉなってポロポロポロポロ涙ばっかしこぼしてな
はる。ひょっと体に障って病気でも出たらいかんと思うさかい、恥を忍んで
だっせ、もぉいっぺん仏壇屋へ頼みに行たところが「それほどまでに言ぅて
いただくのなら、買ぉていただきまひょ。ろくに艶拭きもでけてまへんけど」
ちゅうので買ぉてきましたがな。

●今までのよぉなあの仏壇入れでは足らんさかい、大工やら左官(しゃかん)
やら、経師(きょ~じ)屋まで呼んで、あそこつぶしてだっせ、造作し直して
大ぉ~きな仏壇入れをこしらえましたがな。あの大きなお仏壇ごそっと納め
て、まだ人間が一人や二人入れるよぉな仏壇入れ作ってそこへ納めた。

●さぁ、納めてみるっちゅうと立派……。艶拭きができてないどころか木口
(きぐち)といぃ、飾りといぃ、金具一つとっても「いや、日本にこんなお仏
壇もぉひとつと無いやろなぁ」あの当座、あんさん夜が明けたらチャ~ンな
んまいだ、日が暮れたらチャ~ンなんまいだ。ありがたい、ありがたいちゅ
うて一日で仏間に居てる時間が一番長いといぅぐらいだしたが、ひと月と持
ちまへなんだなぁ。

●ひと月ちょっと少し過ぎた時分にな、もぁあんた「今日は何なにさんの、
今日は何たら講じゃ、御開山の何とかじゃ」言ぅて出歩きなはる……。飽き
性と言ぅたんが間違ごぉてますか?

■じゃかましぃわい! お前の極道とわしの信心とが一つになるかい……。
わしはなぁ、お前が三日帰って来(こ)よまいが、五日居続けしょ~が、そん
なもの何とも「またあのガキ……」と思てるが、来立ての花嫁の気持ちになっ
てみぃな「若旦さん今日もまたお帰りやございません。わたしが至らぬゆえ
にでございます」と、わしの前で申し訳なさそぉな顔をするやないか。

■「何を言ぅのやお花、わしが手ぇついて謝らんならん。あんな極道といぅ
ものがあるもんか」と言ぅと「いえ、わたしが気が利かんせいでございまっ
しゃろ。鈍に生まれたこの身が恨めしゅ~ございます」と、お前を恨まんと
自分の身を責めるやないかい。あんな仏さんみたいな女ごが、またとひとり
あるか……

■あぁ、こない気ぃばっかり遣こてて、身体に障らにゃえぇがなぁと思てた
ら、だんだん顔色が悪なって痩せてくるやないかいな「こりゃいかん、ただ
事っちゃない、とにかく横になっとぉくれ。いっぺんお医者はんに見てもら
わないかん」と言ぅと「いえいえ、ご飯もおいしゅございますし、夜もよぉ
寝られます」と言ぅ「年寄り助けると思て、いっぺん休んどぉくれ」ちゅう
て横にしたら……、頭が上がらんやないかいな。

■わしが見舞いに部屋へ入って行くと、布団の上へ起き直ってちゃんと座っ
て「もぉ二、三日したら、床離れができると思います。あの~、勝手ばっか
りさしてもろて済んまへん」と気ぃ遣う。これでは養生にならん。遠いとこ
ろでもないさかい、わしゃ先方のご両親に会ぉて、実家の方が体が休まるじゃ
ろぉと里へ帰ってもろた……

■どんなことがあっても、わしゃ日にいっぺんは見舞いに行きますが、お前
はちょっとも行ってやらん。向こぉにしてみたら、わしが十(とぉ)来るより、
お前がいっぺん顔見せる方がどれぐらい嬉しぃか……、何でお前は……

●そらまぁ、行かないきまへんねんけどな……。だいたい病間っちゅうのん
はな、襖開けただけでプ~ンと煎じ薬の臭いがしまっしゃろ、あれがわてか
なんのだ。何となしに陰気でなぁ……。で、向こぉもお化粧せぇへんさかい
白粉(おしろい)気もないし、顔もやつれてますし、風呂へ入らへんさかい垢
じみてまんがな、そんな顔、まぁこっちに見せんのも嫌やろと思うしな……。
まぁなんですわ、そぉ急に死ぬてなこともないやろさかい、まぁそのうちに
折を見て……

■「そのうちに……」人事みたいに言ぅてる、お前のよぉなやつは……

●それよりお父っつぁん、あんさん毎日お花んところへ見舞いに行くのがお楽し
みなよぉなご様子で。まぁまぁ、お慰みがてらにせぇぜぇ行ったっとくなはれ

■「お慰みがてら……」お前のよぉな人(ひとでなし)、こんなやつを
世の中へ出したと思たら、わしゃ世間様へ申し訳が立たんわい。勘当じゃい!
出て行きさらせッ!

▲ま、まぁまぁまぁまぁ……■番頭どん、止めんといとぉくれ。こんな人非
人みたいなやつを、わしゃお天道さまに申し訳がないさかい、お前ら家に置
いとくわけにはいかん▲ま、まぁまぁ……、親旦さん、お腹立ちはごもっと
もでございますが、そこが親子の間柄やさかい若旦さんも心にないこと言ぅ
て逆らいなさんので。いずれ後ほどわたくしが篤(とく)とご意見を申し上げ
ますで、今日のところはひとつわたくしに免じまして、どぉぞまぁご了見な
さっとくれやす。

▲いやそれよりなぁ、御寮人(ごりょん)さんのお里から、最前お使いがみえ
ましてな

■何ぞ言ぅて来ましたか?

▲え~「すぐにお越しをいただきたい」と……

■何か、急に変が来たと?

▲いや、そのよぉなこともないとは存じま
すがなぁ……、ちょっとお悪いんやないかと思います

■じ、直に行く、これ
からすぐに行く。ちょっと羽織を出しとぉくれ。番頭どん、この男、このせ
がれ、今日はどんなことがあっても家(うち)から外へ出してもらわんよぉに
な。もしも、ちゅうことがあるでな。

▲あの、定吉をお連れくださいまして。定ッ、お履きもん揃えよ、お杖もこ
れに揃えて出しとくよぉにな

★へぇ~い、ちゃんともぉ揃とります。お杖もこれにございます

■おぉ、よぉ気が利ぃた。商人(あきんど)といぅものはな、
気を走らすといぅのが大事じゃで。わしが出て行きそぉじゃなと思たら、サッ
と履きもんを揃えて杖を横に置く、その息を忘れまいぞな。番頭どんを見習ぉ
て立派な商人になりますのじゃ。

★へぇ~い■必ずともに、うちの極道を見習うでないぞ

★親旦さんも、若旦さん極道で心配なこってんなぁ

■何を言ぃくさる、子どもだてらに……。

でわ番頭どん、かたがた今日はどんなことがあってもせがれを外へ出していた
だいては困ります。もしものことがあったとき家には居らん、行く先が知れ
んてなことがあったら、わしゃ先方さんの親御に腹でも切らな申し訳が立た
んことになりますでな。

▲心得ておりますので、お気を付けられまして、どぉぞお早よお帰りやす。

             * * * * *

●親っさん行てまいよったなぁ

▲若旦那、あんた何ちゅうことおっしゃんね
ん。あんなこと言ぅたら、そら親旦さん怒らはんのん当り前でっせ

●ついな、
こっちも大人気ないとは思たけど、あんなこと言ぅさかいつい逆ろぉたろと
思て

▲逆ろぉたらいきまへんがな。もぉカッカカッカ来てなはんのにホンマ
に、よぉあんなこと言ぃなはったなぁ。けどまたあんさんも、何で御寮人さ
んとこにちょっとお見舞いに行かはらしまへんねや?

●えぇ?

▲お見舞いに行きはったらよろしぃねや

●行けるか行けんか考えて
みお前。病の元はこれ(小指)やで、わしやがな。行たら向こぉの両親に会わ
んならん、どない言ぅて挨拶すんねやいな、かなんがなもぉそんなん。まぁ
まだはじめにでも行っときゃまた行けるちゅなもんやけど、行きにくいもん
やさかいな、そのうちにそのうちに思てるうちに、段々だんだん敷居が高こ
なってしもたがな。いまさら行って、どんな挨拶すんねん。

▲なぁ、はじめのあいだにちょっと行っときはったらよろしおましたのに、
ほんまにあんさんはもぉ……

●ところでな、あない言ぅて行きよったやろ、
今日はな夜通し看病することになるやろ、帰って来ぇへん思うね。ちょっと
頼むわ

▲何でおます?

●二時間

▲えッ?

●二時間だけ

▲「二時間」何でおまんねん?

▲二時間だけ、ちょっと出して

▲あ、あきまへん、あきまへん。なんちゅうことおっしゃる。

●じきに帰って来る、ホンマ二時間だけでシュッと帰って来る

▲いや、なりまへん。今日はあきまへん

●ほな、一時間

▲あきまへん

●ちょっと

▲なりま、へんッ!

●あそぉか……、ほなしゃ~ない。もぉ出て行くのん諦めるわ。ん~ん、出
て行かれへんとなると退屈ななぁ。なぁ、番頭どん、この店で座ってたら邪
魔んなるかえ?

▲何をおっしゃいますやら、若旦那がお店に座ってござると、
ご近所から見ていただいても体裁がよろしゅ~ございます。どぉぞ、どぉぞ。
へッ、わたしもまたお話し相手にならしてもらいますで。

●あ、そらあかん、あんたの仕事の邪魔したらいかんがな、仕事はやってて。
わしゃまぁここへ座って勝手なこと言ぅてるよってな、まぁ気が向いたら返
事したらえぇし、忙しかったら放っといてもぉたら、わしゃ勝手にしゃべっ
てるさかい

▲あぁ、さいでございますか、そんならまぁ、帳合いをしながら
お話を承らしていただきます。

●あぁ、もぉ気楽にやってて、もぉしたいよぉにやっててもろたらえぇさか
い、こっちは勝手にしゃべってる▲ほな、ちょっとご免をこぉむりましてな、
帳合いを……

●しかし何やなぁ、おまはん毎日ご苦労はんや。あんたがそぉやって一生懸
命やっててくれてるお陰で、まぁわしが酒呑んでやな、極道してられるてな
もんや、あんたのお陰やで

▲何をおっしゃいますやら、そんなことはございませんがな

●得意先も、場所によってはうちの親父より、おまはんの方が信
用があるそぉやないかいな?

▲そんなことはございませんがなぁ、十四の歳からご奉公さしていただきま
してな、何ちゅうてもどちらさんのお得意さんもみな古馴染み、昔馴染みで
ございますよってなぁ

●さぁ、さぁさぁ「のぉてはならん白鼠」ちゅうやっ
ちゃなぁ。せやけどなぁ、番頭さんと言ぅても、世間には色々あるで……、
なかにはなぁ、忠実そぉに見せかけて、陰で何してるや分からん「油断のな
らんドブ鼠」っちゅなやつも居るねや。

▲そらまぁ、なかにはそぉいぅお方が居てはるかも分かりまへんなぁ

●居とぉんねや。わしもそんなん一人だけ知ってんねやけどな、そぉいぅやつに限っ
て要領がえぇといぅのかなぁ、なかなかシッポは掴まれん、うまいことやっ
てる。まぁ、向こぉは抜け目のないよぉにしてるだけに、そばで見ててもム
カムカしてくるなぁ

▲さいでおますかなぁ……

●得意先回りするよぉな顔してな、新町や堀江に昼遊び、ケチな遊びでまぁ
チョコチョコと行っとぉったうちに、気に入った妓(こ)ができてやで、それ
を囲こぉとんねん。引かして淀屋小路(しょ~じ)あたりに家一軒借りて、そ
こへ囲ぉとぉねん。でまぁ、ちょいちょい仕事に暇でそこへ行ては楽しんで
るてなもんやなぁ。

▲はぁはぁ、なるほどなぁ、へぇへぇ……

●と、やっぱり、奉公人としては
分(ぶん)に過ぎたこっちゃさかい、どぉしてもこれが続かんよぉになる。と
自然、まぁ帳面にも無理が出て来るわなぁ……

▲はぁはぁ、そらまぁ、順序
として、そぉいぅことにもなりまっしゃろなぁ。

●そこの親父は信用しきってるさかい、当分ばれる心配はないわなぁ

▲へぇへぇ……

●ところが、その家にえらい極道な息子が一人居とんねや

▲……

●帳面付けしててや

▲へぇへぇ……

●こいつはおのれが極道するだけに、蛇の道はヘビっちゅうやっちゃ、

この番頭のやってることがちゃ~んと筋が読めたぁんねや。

▲へぇ……

●帳面付けしててや……。まぁ、この息子にしてもやで、いずれ
自分の財産になる金を、ちょいちょい・ちょいちょい削られてんねやさかい、
まぁ面白いことはないわなぁ

▲へぇ……

●けど、何にも言わんと知らぁ~ん
顔してるといぅのは、やっぱり自分にも弱みがある、融通きかしてもらわん
なん時もある、無理聞ぃてもらわんならん時もあるさかい、知らぁ~ん顔し
とんねやなぁ。

▲へぇ……

●これ、誰やと思う?▲どなただっしゃろなぁ?

●この町内の人や

▲へぇ……

●商売は糸の問屋や

▲同業でおますなぁ……

●番頭……

▲へぇ

●これ、お前と違うか?

▲さぁ~……

●こらッ! 馬鹿にすなッ!

▲大きな声、大きな声を……

●人が何にも分からんと思てるのんか? お前のやって
ること、筋道全部読めたぁる

▲ま、まッ、まぁ……

●お前のこれの家言ぅたろかッ! 女の名前言ぅたろかッ!

▲も、も~ッ、あんさんには頭上がり……、もぉ謝ります、この通り、謝り
ます、この通りこのとおり……

●おいッ! あんまり人馬鹿にしたらあかん
ぞホンマに。これからわしの言ぅことに逆らわんな?

▲もぉ、あんさんのおっしゃることに、な~んにも逆らえしまへん

●何でも聞くな?

▲言ぅこと承りますでございます

●二時間

▲いや、そ、それはあきまへん。

▲今日だけはもぉ、あんさんも事情よぉご存知やおまへんかいな、今日だけ
は……、ほなまぁまぁまぁ、なるよぉな話にしてもらいまひょか

●何じゃ、そのなるよぉな話ちゅうのわ?

▲あのなぁ、どちらのお方や? キタ? 北の新地……、

そぉだんなぁ、キタとこことは近いよぉなけども、さぁといぅ
時にはちょっと遠いさかいねぇ……。どぉだっしゃろ、こっちお呼びしたら?

●何やて?

▲来てもろたら?

●おい、何を言ぅねやいなお前。船場の堅気の
商家へやで、昼日中から芸者が呼べるかいな

▲さぁさぁ、駕籠に乗せまして
裏の木戸からその駕籠なりで奥庭へ入ってもらいましたら、ご近所の目には
触れしまへんがな。

▲で、奥の離れ、今日はお照らしが雲ってますし風がおますよってしのぎ易
いと、ちょっとあそこ障子も閉めてもらいましてな、店のもんあっちへは滅
多に行けしまへん。ちょっと小料理屋から何か取り寄せてだんな、まぁそこ
でゆっくりと呑みながらお話してもろたら。わたしもまた合間見て、お相伴
に預からしてもらいにまいりまっしゃないかいな。

●えぇ? あの部屋を締め切るのか、このくそ暑いのに? 話聞ぃただけで
汗が出て来るやないかい……。ん~ん、しかし、うちぃ呼ぶちゅうんはオモ
ロイなぁ。よしッ! ほんならなぁ、今日は早じまいしょ~

▲何を?

●店早じまいしてな、店のもんみんなにごっつぉしたるわ

▲そんな……

●親父は帰って来ぇへん、親父は今日は帰って来ぇへん、だいぶん容態が重いらしぃ、今
夜は夜通し看病ちゅうことになるさかい大丈夫や。

●何も夜通し騒ぐねやあらへんがな。みんな好きなものをこぉ言わしてな、
でそれで、店のもん一緒にワ~ッと騒ごか

▲そんな無茶なことしてもろたら困ります

●大丈夫や、わしに任しわしに任し……。

             * * * * *

「菊江佛壇(下)」につづく

【プロパティ】
 ケッタイ=妙な・変な・へんてこな・おかしな・奇態な・嫌な・不思議な
   など、実にいろいろな意味を含んだケッタイな言葉。エゲツナイと並
   んで上方言葉の両横綱。怪体とも奇態とも希代とも卦体とも当てる。
 桂小文治=初代(正しくは二代):もと大阪の噺家桂米丸。ひと月の契約で
   橘家円歌(橘ノ円都)とともに東京興行に出かけたまま懇願されて東京
   にとどまり、橘家円蔵の身内となって桂小文治を襲名し真打となる。
   本名、稲田祐次郎。昭和42年12月28日没、享年74才。
 簀戸(すど)=葭(よし)の細いものを使って障子のようにしたもの。簀はス
   ノコ。細い格子戸をもいう。簾戸。
 籐(とう)=ヤシ科のつる性常緑木本。東南アジア・中国南部・台湾などに
   分布。茎は長く伸び強靱な繊維がある。茎で籐椅子や籐細工を作る。
   タイワントウ・ロタントウなどがある。
 籐(とう)ムシロ=籐で編んだ敷物。よく銭湯の床などに敷いてある。
 橘家円喬=四代目:本名、柴田清五郎「名人圓喬」。大正元年11月22日没、
   享年48才。
 鰍沢(かじかざわ)=三遊亭円朝作。客から出された「鉄砲」「卵酒」「毒
   消しの護符」の題を元に作り上げた「三題噺」
 ざこば=桂ざこば:米朝門下。本名、関口弘。昭和22年9月21日生まれ。
 偕老(かいろう)=ともに年をとること。夫婦が老年になるまでむつまじく
   連れ添うこと。相老い。
 同穴(どうけつ)=夫婦が同じ墓穴に葬られること。
 偕老同穴の契り=死ぬまで仲むつまじく暮らそうという、夫婦のかわす約
   束。
 くさる=するという意の下品な悪態口に用いる補助動詞。腐るであろう。
   ヤガル・サラス・ケツカルなども同じ意。
 夜泊まり日泊まり=風俗店に入り浸って家に帰らない。
 馬の耳に風=馬耳東風。馬の耳に念仏。
 ぬかす=言う・ほざく。
 しゃ~ない=仕様が無い→しょうがない→しょ~ない→しゃ~ない。
 ぎょ~さん=たくさん・はなはだ・たいへん。大言海には「希有さに」の
   転とある。「仰々しい」のギョウか?「よぉけ→よぉ~さん」たくさ
   ん、の訛りかも?
 駄々ける=駄々をこねる。無理をいう。子どもが甘えて他人の言に従わな
   いことを駄々というが、それを動詞化したもの。
 駄々け=わがままでよく駄々ける子などを指していう。駄々けもん。
 冥利=ある立場・状態にあることによって受ける恩恵・しあわせ。
 走り元=走り:台所の水まわり。ものを洗った水を流し走らせるところか
   ら出たもの。
 座が勤まる=法座:説法の行われる集会。法席。法筵(ほうえん)。
 報恩講=仏教諸宗派で、一宗の祖師の恩に報ずるため、その忌日に営む法
   会。浄土真宗の西本願寺派では一月九日から一六日まで、東本願寺派
   では一一月二一日から二八日まで、宗祖親鸞をまつって法事を行う。
   御講(おこう)。御正忌(ごしょうき)。お七夜。
 御開山(ごかいっさん)=浄土真宗の開祖、親鸞上人を指して門徒衆がいう
   語。開山上人の略。
 年忌・年回=人の死後、毎年めぐってくる命日。また、その日に行う法要。
 かなん=困惑する。適わない→適わん→かなん。
 立花通り=大阪市西区南堀江1~3丁目。北堀江の材木問屋街、南堀江の
   家具屋街と、堀江は木の香りが漂う。
 お目だるい=しんきくさいの丁寧語。
 辛気=心がくさくさして苛立たしいこと。心がはればれしないこと。もど
   かしい・じれったいこと。また、そのさま。辛気臭い。
 経師屋(きょうじや)=書画や屏風(びょうぶ)・襖(ふすま)などの表装をす
   ることを業とする人。表具屋。
 木口(きぐち)=材木の種類・品質。
 鈍=のろいこと・へまなこと。また、愚鈍。
 さらす=するの罵語。やがる・くさる・けっかるなどの補助。さらしてけっ
   かる。
 篤(とく)と=念を入れて。じっくりと。とっくり。
 了見・料簡・了簡=許すこと。がまんすること。勘弁。
 御寮人(ごりょん)さん=商家など中流家庭の若奥様の称。
 お早よお帰りやす=行ってらっしゃいませ、の意。人を送り出すときの挨
   拶言葉。
 帳合い=金銭の勘定と帳面とを照合して、計算の正否を調べる。
 白鼠=白鼠のすむ家は繁盛するという俗信からとも「ちゅう」と鳴くから
   とも、主人に忠実に仕え、その家の繁栄に功労の多い番頭や雇い人。
   ⇔黒鼠。
 ドブ鼠=主人の目をかすめて金銭をごまかすなど悪い事をする使用人。
 さいで=相手に同意して相づちを打つ言葉。サヨウデ→サヨデ→サイデ。
 淀屋小路(しょうじ)=中央区北浜4。淀屋橋の南浜通りのひと筋南、洋服
   の「淀屋」と「東京三菱銀行」の間を西に入る小路。心斎橋筋から西
   肥後橋の間にあった旧淀屋屋敷内の私道がそのまま残った道。
 えらい=偉い:たいへん。おおいに。ひどく。同じ意味で「いかい」とい
   う言葉があるが、これは京言葉。「でっかい」は「どいかい」「どえ
   らい」などからの派生らしい。
 北の新地=曽根崎新地:宝永年間(1704~1710)に蜆川北岸開発。1708年に
   町割りが行われ、蜆川北岸の曽根崎新地が北の新地の中心となった。
 音源:桂米朝 1992/06/11 米朝落語全集(MBS)

  

 

面白かったら、「ブログランキング」 

  

人気ブログランキングへ↑↑↑↑↑↑↑↑

 

サッと見ニュース日々のニュースを写真で早分かり 2015.10.5

2015年10月06日 | ニュース

 


世界びっくりニュース一覧 2015.10.4

2015年10月06日 | ニュース

世界中の仰天ニュースをお届け!

ここ掘れワンワンしたら出てきた。裏庭に隠されていた奇妙なもの、貴重なもの カラパイア (10月5日)

子どもの頃、秘密基地を作るために掘ったり、埋蔵金を探すべく穴を掘ったり、破壊という名の捜索活動をしながら土にまみれていたものだ。セミの抜け殻すらが勲章なのだ。だが時たま本当に、そこにはお宝が眠っていた...

実りの秋は暴走注意。リスが、ハトが、動物たちが発酵した果実で酔っ払っちまっただー カラパイア (10月5日)

収穫の秋、実りの秋。おいしい果実は食べたい放題となるこの時期だが、その一方で問題が発生する。熟れた果実が発酵することによりアルコール分を帯びてしまうのだ。発酵した果実を食べてしまうと動物たちも酔っ払っ...

過酷な冒険の旅で出会った1匹の捨て犬。その子犬に支えられ困難を乗り越える(アメリカ) カラパイア (10月5日)

プロのロッククライマーであるシーダー・ライトさんと冒険のパートナー、アレックス・オノルドさんはちょっとマゾっ気がある冒険マニアだ。「サファーフェスト(我慢大会)」という名がぴったりな過酷な冒険でカリフ...

ツイッターのつぶやきで人物像や収入レベルを判別できる?(米研究) カラパイア (10月5日)

ソーシャルメディアで発信される言葉から、その人物に関する隠された事実を知ることができる。言語学者たちは予てからこの類の説にご執心で、人が発する言葉と年齢、性別、社会経済的地位などの関係を長い間研究して...

ハエトリグモマニア専用。ハエトリグモさんがマウスポインタ―に興味を持った カラパイア (10月5日)

ハエトリグモさんの愛くるしさを愛でるの会シリーズ(そんな会あったのか?)。ハエトリグモさんは鏡を見せるとダンスを踊ったり、動くものにちょこちょこついてきちゃうとか、キュートポイントをたくさん持ち合わせ...

米GEがSFポッドキャスト、ハイテクマニア向け暗号解読コンテンツ ロイター (10月5日)

[2日ロイター]-米ゼネラル・エレクトリック(GE)が、若いハイテクマニアへのブランド周知活動の一環として、独自のSFコンテンツをポッドキャストで配信する。ポッドキャストのタイトルは「ザ・メッセージ」...

「居眠り」放映され12億円請求、米地裁が野球ファンの訴え棄却 ロイター (10月5日)

[ニューヨーク2日ロイター]-米大リーグの試合を観戦していた男性が球場で居眠りする姿をテレビ番組でからかわれたとして、スポーツ専門チャンネルESPNに1000万ドル(約12億円)の支払いを求めていた訴...

カナダ選挙の討論会で「カーニー」違い、中銀総裁と俳優を混同 ロイター (10月5日)

[オタワ2日ロイター]-2日に行われたカナダ総選挙のテレビ討論で、ケベック州独立派のケベック連合のデュセップ党首が、カナダ中央銀行総裁から英中銀総裁になったマーク・カーニー氏の名前を、米俳優の故アート...

第二次大戦中の知られざる日系人兵士たち10の活躍 カラパイア (10月5日)

第二次世界大戦が太平洋で勃発したとき、アメリカ政府は日系人たちを一斉検挙して強制収容所送りにした。日系二世と呼ばれる第二世代は、スパイの疑いをかけられ、米軍に入ることも禁止された。それが変わったのは1...

熱気球が秋空彩る、米ニューメキシコ州で恒例イベント ロイター (10月5日)

[アルバカーキー4日ロイター]-米ニューメキシコ州アルバカーキーで、毎年恒例の熱気球フェスティバルが3日に始まった。初日には日の出とともにカラフルな熱気球が秋空を彩り、世界中から訪れた多くの観光客を魅...

ヒラリー氏が深夜コメディ番組出演、トランプ氏の物まねも披露 ロイター (10月5日)

[ニューヨーク4日ロイター]-2016年米大統領選に向けた民主党の候補指名争いで現在の最有力候補とされるヒラリー・クリントン氏が3日、深夜の人気コメディー番組「サタデー・ナイト・ライブ」に出演した。ク...

UFOが近づき1人の男性がエイリアンにアブダクションされる瞬間をとらえた衝撃映像【動画】 カラパイア (10月5日)

プエルトリコのリゾート地にある海を見渡せる海岸沿いのテラス。その上空からやってきたのは円盤型のUFOである。人々はUFOの見える位置に集まりだした。その時1人の男性が、真逆の方向へと吸い寄せられるよう...