【花形参上、愛を語る(1)】
飛ぶ鳥を落とす勢いとはこの人のことか。舞台を中心にテレビ、映画と、縦横無尽の活躍ぶりだ。テレビドラマ「半沢直樹」で演じた“おねえキャラ”の金融庁主任検査官、黒崎役が強烈な印象を残したが、長らく低迷状態にあった上方歌舞伎再興の使命も担う。疾走し続ける花形役者に話を聞いた。(聞き手 亀岡典子)
--毎日、忙しそうですね。愛之助さんが働きづめで休みがない、というのは関係者の間ではよく知られています。もうどれぐらい休んでいないのですか
愛之助 自慢に聞こえるとつらいんですけど、もう13年ぐらいになるかな。でも仕事があるのはありがたいことです。
--このインタビューも舞台の開演前に無理やり、時間を取ってもらっています
愛之助 歌舞伎だけじゃなくて、テレビとか映画とかいろんなことをさせていただいているから時間がなくなるんです。最初は歌舞伎をごらんになるきっかけ作りに、と思って映像の仕事を始めました。テレビで顔を知っていただくと、「あの人、歌舞伎やってるんだ」と、見に来てもらえるじゃないですか。でもだんだん、俳優としてもっと挑戦したい、と思うようになりました。
--歌舞伎の舞台の後、夜から明け方にかけてドラマの収録に駆け付けることもありますよね。体も大変ですが、気持ちの切り替えも大変なのでは
愛之助 ところがそれはあまり大変じゃないんですよ。歌舞伎の公演は、たいてい違った演目が4つ、5つ並んでいる。1日で、二枚目、悪役、女形といろいろやることもある。だから歌舞伎俳優はスイッチの切り替えがうまいと思います。「早(はや)替(がわ)り」なんか、何秒かのうちに別の役に変わらないといけないし。
--そういえば、市川中車(香川照之)さんが、歌舞伎の世界に入って驚いたことは、幕が開く間際まで歌舞伎俳優が楽屋にあいさつに行っていること、と言っていました
愛之助 歌舞伎役者は幕が開く直前まで、普通にしているんですよ。
--それはつまり、幕が上がってからの集中力がすごいとも言えるのでしょうね。そういえば、香川さんとは、「半沢直樹」で共演していました。やはりあのドラマは愛之助さんの人生を変えましたか
愛之助 ドラマの後、大阪松竹座に出演したら人だかりで歩けなくなりました。それまで普通に歩けたのに。「黒崎さんの歌舞伎、初めて見ました」とか言われて。心斎橋を歩いたら黒服のお兄さんにも「お疲れさまでーす」って声をかけられましたよ(笑)。世の中ってこんなに変わるものかとびっくりしました。 =続く
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【プロフィル】片岡愛之助(かたおか・あいのすけ) 昭和47(1972)年3月4日、大阪府堺市生まれ。56年、十三代目片岡仁左衛門の部屋子となり、片岡千代丸を名乗って初舞台。平成4(1992)年、片岡秀太郎の養子となり、六代目片岡愛之助を襲名。咲くやこの花賞、大阪文化賞など受賞多数。屋号は松嶋屋。
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