津東高校の塾対象説明会は本当に良かった。
まずは校長先生の挨拶。今年赴任されたそうで、前校長から引き継ぐ『自分らしくプロジェクト』を軽く説明。続いて教務部の先生の説明、通り一遍。ところが進路指導の笹山先生が登壇するや、まずはスクリーンに現れたのが「呪術廻戦」の五条悟。「我が校はこの人物を目指します」
笹山先生は50歳あたり、氷河期を生き抜いた過去の経験を振り返りながら「我々の世代はある意味で国家のボリュームゾーンを構築している。しかし、失われた30年は我々の世代をいわば切り捨ててきたとも言えます。過去30年の日本の失速はこの層をないがしろにしてきた、言い換えれば従来の教育の価値観・・・偏差値で子ども達たちを測るという手法を改めようとせず、世界の趨勢に気づかなかったことに、失速の原因があると思います。しかしその反省に立ち帰ってか、あるいは少子化などの背景もあり、このボリュームゾーンをいかに活性化させるか・・・これが文部省など、国の最優先課題となってきています。私立ではなく公立高校として何ができるのか、ことに津東はボリュームゾーンの中央に位置している高校です。最近は国公立の合格者数が減ったとのお叱りも実際あります。しかし、偏差値に立脚した従来の教育が見直される時期に来ているのではないでしょうか。答があらかじめ用意されている問題を解く、その能力はこれからも無くなりはしません。しかし、世界を取り巻く多様化の時代を迎え、そのメソッドが通用するジャンルは狭くなったと思います。では、どのような子ども達を我々は育てべきなのか。それに対する我が校の答が『自分らしくプロジェクト』です。これからの時代を生き抜いていける武器を持たせたい。学校とは、高校とは、生徒一人一人の個人と社会との接点です。その場に立ち会う私たちは、生徒たちに『自ら問いを立てて、その解決策を見いだせる』・・・そんな生徒を育てたいのです。学力の多様化が顕著となっています。企業などの社会においてもウォーレン・バフェットの著作にあるように管理職にも多様性を求める時代です。他の進学校とは一線を画して、我が校では生徒たちに『勉強の本来の目的は?』を真摯に問いかけ、将来のキャリア選択を目的として、この『自分らしくプロジェクト』という活動を続けていこうと思っています。ゆえに五条悟です・・・彼は六眼、複数の視点を持つ人物です。我が校の生徒には、彼のような多様な目を津東という環境の中で養ってほしいのです。まあ、他の進学校とはベクトルが違う高校があってもいいんじゃないでしょうか・・・私はそう思っています」
ちなみに俺の書き散らしたメモからの要約・・・気に障る箇所があれば、笹川先生にではなく俺の責任です。
帰りしな、佐藤先生と笹山先生のレクチャーについて話す。「いやあ、良かったですね」「本当に、熱かった」「塾の先生たちが生徒でしたね」「津西の皴くれた梨のような説明会の後やったから、めっちゃ感動ですよ」
ある意味で偏差値基準の受験では高校としての通知票が生徒の卒業とともに出る。その意味ではここ数年の津東、劣勢に立たされているのは事実だ。しかし、教育は人だ。笹山先生の想い・・・生徒たちが五条悟に続くものになれるかどうか、その気持ちが新たなる通知票を生み出すかもしれない。ただ、その検証には時間の壁が立ちはだかる。長期のスパンでしか、その効果を測る術はないのだ。それでも、なんとかやり遂げたい・・・そんな強い意志を感じた説明だった。
教育は人なのだ。