トランシオンは「グローバルサウス」で低価格スマホなどを販売して急成長してきた
(同社ウェブサイトから)
【広州=藤野逸郎】
スマートフォン世界大手の中国・伝音控股(トランシオン)が、半導体大手の米クアルコムからインドで特許侵害の訴訟を起こされた。
トランシオンはアフリカや南アジアなど「グローバルサウス」と呼ばれる新興・途上国で低価格の機種を販売し急成長してきた。今後の事業モデルに影響が出る可能性がある。
中国メディアなどによると、クアルコムはトランシオンが傘下のブランド「TECNO」、「itel」、「Infinix」について大部分の商品で特許料を支払っていないとしてデリーの高等裁判所に訴えた。
通信規格「4G」や「3G」に関する特許が争点との報道もある。
トランシオンは日本経済新聞の問い合わせに対し「知的財産権を尊重し、特許権者と友好的な交渉を通じて契約を結ぶ用意がある」と回答した。
英フィナンシャル・タイムズによると、オランダのフィリップスも同様にインドでトランシオンを提訴し、フィンランドのノキアも特許料の支払いを求めているという。
これに対しトランシオンは、事業を展開するアフリカや南アジアなど70カ国以上の新興市場は経済発展に差があったり特許のルールが未整備だったりするとし、「世界で一律に過度に高い特許料を要求する特許権者もおり、公平性や合理性などの原則に準拠していない」とコメントした。
中国証券会社の中信証券の分析によると、トランシオンが世界で販売するスマホの平均価格は2022年時点で550元(約12000円)、従来型の携帯電話は65元と低価格だ。特許料支払いなどのコストが発生すれば、価格に上乗せされる可能性もある。
トランシオンは23年、スマホや従来型の携帯電話を1億9400万台出荷した。米調査会社IDCによると世界3位だった。
アフリカはスマホで約46%のシェアを握る。トランシオンにとってインドはアフリカに次ぐ重要市場とみられる。
トランシオンは16日、経営幹部が同日から6カ月以内に合計で1080万〜1400万元分の自社株を購入すると発表した。投資家に対し、会社の成長持続に貢献する姿勢を示す狙いだ。