26日の日経平均株価は前日比437円(1%)高の3万9568円で取引を終えた。欧米市場の休場もあり商いは低調ななか、好調だったのが百貨店株。
かねての円安進行と前日に伝わった中国人向けの査証(ビザ)発給の緩和措置で、インバウンド(訪日外国人)消費への期待が高まった。「閑散に売りなし」の相場格言を地で行く展開で、日経平均の年末最高値更新が視野に入ってきた。
この日の東京株式市場は前日の欧米市場がクリスマス休場だったため、追加材料が乏しいまま取引開始を迎えた。小幅に反落して寄りついた後、上昇方向へ切り返すなかで光ったのが百貨店株の躍進だ。
J・フロントリテイリングは一時前日比180円(9%)高の2174円まで上げ、年初来高値をつけた。東証プライム市場の上昇率ランキングで一時首位に立ち、終値でも2位だった。三越伊勢丹ホールディングスの終値は8%高で同4位となった。高島屋は一時5%高まで上昇するなど、投資マネーが集まった。
Jフロントの買いのきっかけは、前日の取引終了後に発表した2024年3〜11月期の連結決算(国際会計基準)。
純利益が前年同期比71%増の370億円となり、同期間として最高益を7年ぶりに更新した。インバウンド(訪日外国人)需要が好調で、百貨店事業では店頭の売上高を示す総額売上高が11%増の5901億円だった。
SMBC日興証券の金森都シニアアナリストは25日付のリポートで「百貨店の免税売上は春節(旧正月)に向けて上り調子であることに安心感がある」と評価した。
この日の百貨店株高はJフロントの好決算が起点だが、別の追い風も吹いた。
岩屋毅外相は25日、訪問先の北京で中国人向けの査証(ビザ)発給に関する緩和措置を表明した。
富裕層向けに10年間有効な観光ビザを新設し、団体旅行で取得するビザは滞在可能な日数を30日に延長する。中国人旅行客のインバウンド消費が拡大するとの思惑につながった。
為替相場の見通し変化も見逃せない。米連邦準備理事会(FRB)の利下げ鈍化観測と日銀の利上げ見送りにより、日米の金利差縮小による円高シナリオが遠のいたとの見方が市場で広がっている。百貨店株はインバウンド消費の観点で円安環境がより好感される。
SBI証券の鈴木英之投資情報部長は「ビザ緩和や円安基調といった百貨店株を物色しやすい要素が増えている」と指摘する。
26日は12月期決算企業の期末配当や優待の権利付き最終売買日とあって、権利取りを狙った個人投資家などの買いも食品株で散見された。サッポロホールディングスやアサヒグループホールディングス、キリンホールディングスなどが選好され、相場を支えた。
市場全体で見ると、年末が近づくにつれて売買は細っている。東証プライムでは24日の売買代金が約3兆円と今年最低を記録。翌25日も同様に低調だった。
26日も取引量は少ないものの、「『閑散に売りなし』の相場格言通り」(三井住友DSアセットマネジメントの市川雅浩チーフマーケットストラテジスト)と指摘されるように、一部の銘柄を吟味する動きは盛んだ。
高値圏での停滞が続く日経平均は30日に大納会を迎える。34年ぶりの最高値更新となった24年をどう終えるか。市場関係者の間では年末終値での1989年の年末最高値(3万8915円)超えの期待はついえていない。
(桝田大暉)