額に灰の十字を描き、灰の水曜日の伝統的な儀式に出席する女性。
復活祭までの40日間にわたる四旬節の始まりを告げる。
コスタリカの首都サンホセのメトロポリタン大聖堂で撮影。
なぜキリスト教徒は年に一度、自分の額に灰で十字を描くのだろう? それは、「灰の水曜日」を祝うためだ。
灰の水曜日は、多くのキリスト教徒にとって、復活祭(イースター)まで40日にわたってざんげと内省を行う四旬節の初日にあたる。それでは、灰の十字や断食を特徴とする、この祝日について紹介しよう。
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灰の水曜日はいつ?
灰の水曜日となるのは、世界中のキリスト教徒の間でイエス・キリストが復活した日と信じられている復活祭の日から6週間半前の水曜日(日曜日は四旬節の40日間にカウントされない)。
2025年の灰の水曜日は、3月5日だ。
(参考記事:「リエカのカーニバル、2月ベストフォト」)
しかし、東方教会と西方教会では、四旬節の始まりの日が異なる。
西方教会では、灰の水曜日に四旬節が始まる。東方教会では、四旬節は復活祭の7週間前の月曜日に始まり、灰の水曜日は行われない。
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灰の水曜日の起源は?
四旬節の起源は西暦325年までさかのぼる。
当時、四旬節は洗礼の準備期間として広く利用されていた。40日という期間は、キリストが洗礼を受けた後、公生活を始める前に荒野を旅したとき、40日にわたって断食したことにちなむ。
キリスト教徒の間では、キリストはこの40日間、神から精神性と誘惑に耐える力を試されたと考えられている。
フィリピンの首都マニラの教会で、灰の水曜日に祈りをささげるカトリック教徒。2019年3月6日撮影。
現在、キリスト教徒は四旬節にざんげと内省を行う。
その初日である灰の水曜日には、死すべき運命と罪のざんげを意味する灰の十字を額に描く。
朝のミサで聖職者によって描かれ、多くの場合、「あなたは土からつくられ、土に返ることを忘れてはいけない」という短い祈りがささげられる。多くの人は灰の十字を付けたまま一日を過ごす。
灰そのものは、キリストが十字架にかけられ復活する1週間前にエルサレムに入城したことを記念するパームサンデーに使用したヤシの葉を燃やしてつくったものだ。エルサレムの住民はヤシの葉を振って、キリストを歓迎したと信じられている。
四旬節の決意
灰の水曜日は、自己改善の時期と考えられている四旬節を方向付ける日だ。キリスト教徒はもともと、四旬節の期間中、一日一食しか許されておらず、肉や魚を食べることを禁じられていた。
この伝統は第2次世界大戦のころ、カトリック教会によって緩和された。
(参考記事:「100万人の祝祭『マルディグラ』について知っておきたい10のこと」)
四旬節の期間中、金曜日に厳格な断食を行う人もいるが、多くの人はアルコールやソーシャルメディアなどの嗜好(しこう)品を断つ。

1617年頃に『カイアファの前のキリスト』を描いた。(PHOTOGRAPH BY PANTHEON STUDIOS, INC.)
キリストの物語、キリスト教の起源、世界最大の宗教に成長した経緯について学ぼう。(解説は英語です)