3メガバンクの各社長は14日午後に記者会見し、決算の内容を説明する
三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)など3メガバンクは14日、2024年4〜9月期の連結決算を発表する。
合計の純利益は前年同期から約3割増の2兆4000億円程度になる見通しで、05年度に3メガバンク体制が発足してから初の2兆円超えとなる。
M&A(合併・買収)を続けてきた海外事業が収益の柱に育ち、日銀の利上げや政策保有株式の売却加速も今期の業績を押し上げる要因となっている。
23年4〜9月期に続く2年連続の最高益更新となる。三井住友FG、みずほFGを含む3メガバンクの利益は、08年に起きた金融危機への対応が一巡してからは1兆円台前半で推移することが多かった。新型コロナウイルス禍前の19年4〜9月期決算と比べると、約8割の増益となる。
13日までに決算発表を終えたりそなホールディングス、三井住友トラストグループをあわせた大手行5行の合算でも最高益を更新する見通しだ。
2年連続の最高益の土台となっているのが海外事業だ。3メガバンクの23年4〜9月期の海外事業部門の利益は合計8500億円程度と、コロナ前の19年4〜9月期に比べ約2倍に増えた。24年4〜9月期も堅調を維持したもようだ。
三菱UFJは米銀が消極的になっているプロジェクトファイナンスで高いシェアを維持する。
英LSEGによると、三菱UFJは協調融資の束ね役であるアレンジャーのランキングで今年1〜9月に首位だった。東南アジアでも消費者金融を手掛ける会社に相次ぎ出資・買収するなど事業を拡大している。
三井住友FGは資本提携する米投資銀行のジェフリーズ・ファイナンシャル・グループと株式・債券の引受業務などで協力し、連携する地域も広げている。
米投資銀行のグリーンヒルを買収したみずほは米国を中心に海外の資本市場で存在感を高め、23年には世界の投資銀行における手数料ランキングで初めてトップ10に入った。
こうした買収・出資による人材獲得やノウハウの吸収が、収益拡大の原動力となっている。
日銀が3月にマイナス金利を解除し、7月には追加利上げに踏み切ったことも追い風になっている。
円金利の上昇で三菱UFJ、三井住友は年800億円規模の増益が見込まれるとの試算を公表している。みずほもマイナス金利政策の解除により、年450億円程度のプラスの影響があるという。
追加利上げの影響は年間を通じて効くため、下期(10月〜翌年3月)の業績押し上げ要因にもなる。日銀が再利上げに踏み込めば増益幅が今後広がる可能性もある。
融資のほかにも大手銀行は「当社の商品を運用してもらえるチャンスが増えてくる」(三井住友トラストグループの高倉透社長)と幅広い利益への貢献を期待する。
決算発表する三井住友トラストグループの高倉透社長(12日、日銀本店)
政策株の売却益も収益を底上げする。4〜6月期決算を公表した時点で、3メガバンクは売却の合意を得た株式の残高が数千億円規模と公表していた。
政策株は含み益の状態になっている場合が多く、実際に売却すれば各社の利益を押し上げる。売却のスピードが想定を上回り、一部の大手行は新たな目標の策定を検討している。
一方、今後の懸念材料となるのが世界の中央銀行の利下げだ。利上げ局面では貸出金利の上昇が海外利益の増加につながっていたが、米連邦準備理事会(FRB)は9月に利下げに転じた。利下げが続けば海外向け貸し出しの利ざやの縮小要因となる。
決算発表するりそなホールディングスの南昌宏社長(12日、日銀本店)
政策株の残高は減り続け、いずれ多額の売却益も計上できなくなる。
円金利の先高観は強く、メガバンクの幹部は「いまは環境が良すぎる。成長へ向けてどのような手を打つかが大事だ」と話す。
りそなHDの南昌宏社長は12日の決算発表時の会見で「(政策株の売却などで)捻出をしていく資本を有効に活用していきたい」と話した。
政策株の売却など一過性の利益をいかに中長期の成長投資につなげられるかが問われることになる。
【関連記事】
日経記事2024.11.14より引用