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日本製鉄、試験炉で高炉水素還元 世界初CO2削減40%超

2024-12-20 17:30:13 | 環境・エネルギー、資源


高炉水素還元の技術開発を進める試験炉(千葉県君津市)

 

日本製鉄は20日、脱炭素戦略の一環として開発中の高炉水素還元の製鉄手法で、二酸化炭素(CO2)を40%以上削減する技術を試験炉で確立したと発表した。

40%を超える削減は世界で初めてといい、開発目標としていた2025年末から1年前倒しで達成した。今後は50%以上の削減と実機高炉での活用を目指す。

 

東日本製鉄所君津地区(千葉県君津市)で24年11~12月に実施した試験で43%の削減を確認した。加熱した水素を使ったり、高炉内の熱のバランスを調整したりして比率を向上させた。

従来の世界最高の数値は日鉄が23年に確認した33%だった。高炉による製鉄では、鉄鉱石に含まれる酸素を石炭を使った化学反応で取り除く。

 

だがこの方法だと石炭からCO2が大量に発生するため、水素での代替に取り組んでいる。水素を使うと熱を奪う反応が起きるため、酸素を取り除きにくいという課題があった。

日鉄は26年4月に君津地区の第2高炉で実機規模の実証試験を始める予定。第2高炉に水素を吹き込むための工事を今後進めていく。

 


エネルギー変革、今が絶好の機会 田中IEA元事務局長 直言

2024-12-14 10:48:55 | 環境・エネルギー、資源




日本のエネルギー自給率はたった15%だ。電力の安定供給はかねて国家の生命線だが、同時に脱炭素との両立が世界的な課題になった。

経済成長も求められている。安全保障、産業競争力に目配りしつつ地球温暖化対策を着実に進める方策について、国際エネルギー機関(IEA)の元事務局長、田中伸男氏に聞いた。

 

 

原子力の新ビジョン示せ

日本の貿易は昨年、化石燃料の赤字額が26兆円になった。自動車や機械の輸出で稼いだ黒字のほとんどが帳消しになる勘定だ。
 
 

――燃料輸入による国富の流出をどう食い止めるか。

 

「国富の流出は輸入している限り続く。といってエネルギーがないと経済も生活も成り立たない。

第1次石油危機以来、日本がしてきた重要なことの一つに省エネがある。

 

もう一つは石油やガスや石炭に代えて国内でつくれる再生可能エネルギーだ。太陽光、風力、地熱をいかに安く大量に使えるようにするかという政策が重要だ」

「大きいのが原子力だ。新たに原子力発電所を建てるのはコストがかかるが、既存の原子炉でつくるエネルギーは安い。米国では事故後に閉鎖されたスリーマイル島原発を再稼働し、マイクロソフトに電力を供給しようとしている」

 

 

「日本も原発再稼働へ政府が努力しているが、うまくいっていない。持続可能な原子力の活用策を打ち出さないといけない

。地震で万が一事故が起きても影響がそこまで大きく及ばない小型炉や、核のごみを減らしていく方法などを考え、原子力の新しいビジョンを打ち出さないと、国民は再稼働しても結構だとは言わないかもしれない」

 

「新しいエネルギーの技術や使い方を日本から海外に売れれば、逆に国富を増やすことになる。大きな絵で日本のエネルギー政策を変えていくことが必要だ」

 


日本には非常に大きなチャンスがある」と語る

 

――自然災害が多く原発事故も経験した日本で原発への慎重論は強い。

「原子力と発言すると票が減ってしまうので(政治家が)言いたくない気持ちはよく分かる。

しかし言わないと、政府が目指す2050年までのネットゼロ(温暖化ガスの実質排出ゼロ)はできない。大きな変革をしないと脱炭素は無理だ。知恵もイノベーションも技術も持つ日本は非常に大きなチャンスがある」

 

「核のごみの放射能レベル低減にかかる時間を高速炉で300年に短縮できるという議論がある。

核のごみの処理もできると政府がきちんと説明することで、国民は納得できるのではないか」

 

 

――欧州など海外ではエネルギー政策が政治主導で大胆に変わる。


「日本は9つの電力会社が安定した電源を供給し、戦後の経済成長に成功した。

大型の発電所から供給するモデルは、地域分散型の風力や太陽光などを大量に使うとなるとうまくいかない。そのゆがみが起こっている」

 

「欧州ではドイツが最大の切り替えを実行した。原子力をやめ、風力や太陽光を増やすために分散型システムにした。

足りない電源はフランスの原子力や北欧の水力から調達した」

 

 

「メルケル独首相(当時)になぜ原子力を使わないのか尋ねると『私は科学者で原子力の重要性をよく知っている。

しかしそれを使うには票が必要だ』と答えていた。メルケル氏は国民がどう言っているかに敏感に反応しながら政策を変えた。もっとも、ロシアの天然ガスに依存したことで今の危機(ウクライナ侵略による供給不安)を招いた反省は必要だろう」

 

「エネルギー安全保障は重要だ。政治家がよく理解してやらなければいけない。

変化、競争を起こしながら安定供給する、風力、太陽光、原子力もうまく使っていくシステムが日本に求められている。今が絶好のチャンスという気がしている」

 

 

ガソリン補助金を水素に

政府は次期エネルギー基本計画を年度内に決める。電源構成の目標や脱炭素のシナリオは産業界にも大きく影響する。
 

――脱炭素電源は産業競争力を左右する。足りないと日本企業の足かせになる。

 

「日本の産業がよりグリーンにならないと、製品が海外に売れなくなる。

アップルは全製品を2030年までにカーボンニュートラルにするとし、供給企業にも呼び掛けている。独メルセデス・ベンツグループも、39年までに供給網全体でカーボンニュートラルにすると表明した」

 

「日本企業もそうしないと世界のマーケットに入っていけない。国内にグリーンな電源がないと海外に生産を移すことになりかねない。

日本で風力、太陽光、原子力で安い電力をつくっていかないと産業が逃げていく」

「二酸化炭素(CO2)を回収して地下に埋める『CCS』ができる場所、クリーンな電気がある場所に産業は移っていく。

 

電力消費の多い半導体製造や、脱炭素へ高炉から電炉に転換する鉄鋼業が典型だ。過去に日本の電力コスト上昇でアルミニウム製錬業はすべて海外に出た。同じことが起こる可能性は十分ある」

 

 

――次期エネルギー基本計画で考えるべき変数は多い。電力需要が人工知能(AI)の普及で増える一方、再生エネのコストは高止まりしている。

 

「2050年のネットゼロは大前提だ。そのために何が必要か、逆算して政策を考えるべきだ。再生エネを分散型で増やすと同時に、原子力活用のビジョンを示す。

政府が議論中のカーボンプライシングでは、将来のCO2の値段を示す必要がある。さもないと本格的な投資が起こらない」

 

「半世紀前に日本が液化天然ガス(LNG)を輸入したとき、高くてできるはずがないといわれた。できたのは(コストから料金水準をはじく)総括原価方式だったからだ。

今の自由化された市場ではなかなかできない。水素供給の新プロジェクトについて(既存燃料との)価格差を支援するとしているが、一つ二つだけやっても意味が乏しい。増やすには財源が全く足りない」

 

「財源の議論は政治が担わなければならない。ひとつの財源は、電気やガソリンにかけている補助金をやめることだ。

CO2の値段を上げていくときに、値下げする補助金は全くナンセンスだ。その数兆円を水素の補助金に回すとはっきりさせないと、水素経済はなかなか立ち上がらない」

 


日米韓の原子力協力を訴える

 

――トランプ次期米大統領は化石燃料の増産を打ち出し、脱炭素が減速する懸念が強い。日本は巧みな協調が必要だ。

 

「トランプ政権は国連気候変動枠組み条約から再離脱するだろう。化石燃料を復活させるとも主張している。

日本は天然ガスを脱炭素の移行期の燃料としてうまく使い、投資する必要がある。天然ガスの利用をトランプ氏と一緒にやるのは面白い。共和党の地盤でもあるアラスカ州の天然ガスの開発や輸入で協力していくのは十分あり得る」

 

「米国と一緒にできる大きな柱の一つは原子力だ。トランプ氏はもともと原子力好き。日本は韓国と組んで米国と原子力で協力してはどうか。

日本とエネルギー構造のよく似た韓国は小型炉に特化すると決め、売り出そうとしている。福島の核のごみの処理などで日米韓が協力するのは十分ありうるオプションだ。小型炉のビジョンを日米韓でつくるのは地政学的にも面白い」

 

 

たなか・のぶお 1950年生まれ。東大経卒、73年通商産業省(現経済産業省)入省。通商機構部長などを経て2007〜11年に国際エネルギー機関(IEA)事務局長。笹川平和財団理事長などを務め、現在タナカグローバル最高経営責任者(CEO)。
 
 

脱炭素を脱皮のバネに(インタビュアーから)

化石燃料高は日本のアキレス腱(けん)を再認識させた。輸入に巨額を費やし、国際情勢に揺さぶられるもろさを抱えたままだ。

再生可能エネルギーへの移行は弱点を克服する手掛かりになる。これに逆行するガソリン補助金を「ナンセンス」と断じた田中氏の指摘は重要だ。ゆがんだ資源配分を続ける余裕はないはずだ。

 

脱炭素は今や個々の企業にとって差し迫った要請になった。電化がもたらす変化にも取り残されてはならない。

欧州やアジアの一部では越境売電が活発になり、石油やガスに恵まれない国であっても発電と送電網の力で優位に立つ時代が来た。

 

環境変化を逆手にとって劣勢をはね返す道を探りたい。半世紀前、石油危機に苦しんだ日本は省エネを磨き原発を活用して、資源が乏しくても繁栄するモデルをつくってみせた。難題だらけの今も脱皮の好機だ。

(編集委員 久門武史)

写真 宮口穣 映像 小倉広志

 

 
 
 
 
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石炭灰の廃棄物に大量のレアアース、米科学者が発見 クリーンエネルギーの宝庫?

2024-12-11 22:22:29 | 環境・エネルギー、資源

2014年、米国史上最大規模の石炭灰流出で川面に現れた石炭灰の渦=バージニア州/Gerry Broome/AP
2014年、米国史上最大規模の石炭灰流出で川面に現れた石炭灰の渦=バージニア州

 

(CNN) 

石炭を燃焼させた後に残る大量の石炭灰は池や埋め立て地に廃棄されており、水路に流出したり、土壌を汚染させたりする恐れがある。

その一方で、こうした有害廃棄物は、クリーンエネルギーの推進に必要な希土類元素(レアアース)の宝庫となる可能性も秘めている。

 

テキサス大学が主導した最近の研究によると、科学者らは米国各地の発電所から発生した石炭灰を分析し、最大1100万トンのレアアースを含有していることを発見した。

これは米国国内の埋蔵量の8倍近い量で、金額にして約84億ドル(約1兆2600億円)に上る。

 

今回の発見は、新たな採掘の必要なしに米国内でレアアースを調達する大きなポテンシャルを秘めている――。

論文を執筆したテキサス大学ジャクソン地球科学大学院の研究教授、ブリジェット・スキャンロン氏はそう語る。

 

「まさに『ゴミを宝に』というスローガンの実例だ」「我々が試みているのは基本的に、サイクルを完結させて廃棄物を利用し、廃棄物の中にある資源を回収することだ」

こうしたいわゆるレアアースは、スカンジウムやネオジム、イットリウムといった地球のコアに存在する金属元素の集合体を指す。

 

レアアースは電気自動車(EV)や太陽光パネル、風力タービンを含むクリーンテクノロジーにおいて重要な役割を果たす。

その名前とは裏腹に、レアアースは自然界では珍しくない。ただ、周囲の鉱石から抽出・分離するのは難しく、需要に供給が追いついていない状況だ。

 

イリノイ州スプリングフィールドの火力発電所近くにある石炭灰廃棄用の池/Register/USA Today Network/Imagn Images
イリノイ州スプリングフィールドの火力発電所近くにある石炭灰廃棄用の池/Register

 

世界が地球温暖化を招く化石燃料からの脱却を進める中、今後はさらに多くのレアアースが必要になる見通し。

国際エネルギー機関(IEA)によると、レアアースの需要は2040年までに最大で現在の7倍に跳ね上がるとみられている。

 

ただ、米国の供給量は依然として少なく、国内にある大規模なレアアース鉱山はカリフォルニア州のマウンテンパスのみだ。

米国は現在レアアースの95%以上を輸入しているが、その大部分は中国から来ており、サプライチェーン(供給網)や安全保障上の問題を突きつけている。

 

スキャンロン氏はCNNの取材に、「我々は状況を改善する必要がある」と説明。このため、従来とは異なるレアアースの供給源に目を向ける動きが出ており、「こうした供給源の一つが石炭や石炭副産物だ」と指摘した。

地下の鉱床から直接採掘する場合に比べ、石炭灰はレアアースの濃度が比較的低い。長所は入手のしやすさで、米国では毎年約7000万トンの石炭灰が発生している。

 

 

CNN記事2024.12.07より引用

 

 


電力「爆食」日本の技術で満たす 小型原発や洋上風力

2024-12-08 08:57:38 | 環境・エネルギー、資源

 

札幌市内から車で45分。海上に高さ196メートルの風車14基が羽を回している。日本で2番目に稼働した大規模洋上風力の石狩湾新港洋上風力発電所だ。

東京電力ホールディングス中部電力が設立したJERAの出資企業が運営する。総事業費約1000億円、発電容量は計約11万キロワットと国内最大規模だ。

 

中国や欧米に押される中、この洋上風力には日本勢の技術が結集された。

風車をのせる土台は日本製鉄系企業、送電システムなどは古河電気工業住友電気工業――。政府目標の国産比率6割を達成。JERAは2028年にも秋田県で洋上風力稼働を目指す。

 

 

世界で需要急増

大規模発電の建設の背景には電力需要の拡大がある。半導体工場やデータセンターの新増設で電力需要は約20年ぶりに増加に転じる。

電力各社に9月末までに申し入れがあったデータセンターなどの需要だけでも30年度までに約1500万キロワット、夏の最大電力需要の約1割に当たる。

 

「私たちは電力の時代に移行している」と国際エネルギー機関(IEA)のビロル事務局長は指摘する

生成AI(人工知能)の活用、エアコンや電気自動車(EV)の普及、製鉄など産業で使うエネルギーの石炭や石油からのシフトが進む。IEAによると世界の需要は23年から35年まで年平均3%で増える。先進国に加え、中国やインドなど新興国も電力を爆食する。

 

IEAは需要増加の多くを風力や太陽光など再生可能エネルギーが賄うと予想する。

発電コストが新興国で主流の石炭火力より安くなり経済合理性が働く。すでに世界の24年の再エネや系統安定のための蓄電池などクリーン投資額は2兆ドル(300兆円)と化石燃料投資の2倍だ。

 

日本政府が策定中の第7次エネルギー基本計画でも化石燃料からの移行は進みそうだ。40年度の電源構成は「再エネが全体の5割程度、原子力が2割程度になる」(みずほ銀行産業調査部)との声がある。

 

 

日本の小型原発

産業界が求める電力の安定供給には天候に左右される太陽光や風力だけでは難しい。注目されるのは原子力だ。

米グーグルは10月、データセンター向けに次世代原発の小型モジュール炉(SMR)開発のカイロス・パワーと電力購買契約を結んだと公表した。アマゾン・ドット・コムマイクロソフトも開発に資金を出すと発表。工期短縮や建設費抑制が期待される。

 

世界原子力協会によると投資決定前も含め世界で約50のSMR計画が進む。GEベルノバと協力しSMR商業化に取り組む日立製作所は「需要を取り込み事業成長を目指したい」(原子力経営戦略本部の舛井崇・担当本部長)と意気込む。

燃やしても水しか出ない水素も注目される。世界で水素戦略の策定が進んでおり、旭化成は25年度から販売する水電解装置について欧米やインドなどで需要を見込む。

 

米国では25年1月、トランプ氏が大統領に再任する。バイデン政権のインフレ抑制法(IRA)が修正され、気候変動対応が後退するとの懸念は根強い。

ただIRAは中国製品などの締め出しの面もあり、米シティバンクのアシュワニ・クバニ氏は「トランプ氏は製造業の米国回帰を重視する。IRAは米国に投資を呼び込んでおり、全てとりやめにはできない」とみる。

 

IRAでは22年から10年間で気候変動対策に3700億ドルを投じる。これまで公表された投資の85%が共和党地盤の州に向かうという。

エクソンモービル最高経営責任者(CEO)がトランプ氏の「パリ協定離脱」に反対表明するなど企業も路線変更に否定的だ。

 

デロイトグループのDTFAインスティテュートの小松潔マネジャーも「多くの国では法律に基づき政策を実行している。少なくとも今後数年は現在の方針が続く」と分析する。

石炭・石油から電力の時代へと突き動かす原動力は生成AI需要に伴うデータセンターの拡大など産業界や経済面からの要請だ。時代を勝ち抜ける技術を持つ日本企業を探った。

 

 

日立、小型原発で狙う世界需要

原子力発電に追い風が吹いている。産業界で電力需要が高まるなか、24時間絶えず電力を供給できる電源として注目される。

世界原子力協会によると約65の原子炉が建設中で、さらに90基の建設計画がある。日本国内でも再稼働が進んでおり、国際エネルギー機関(IEA)によると2025年には世界の原発発電容量は過去最高を更新する見通しだ。原発を取り巻く事業環境は大きく好転し始めている。

 


日立製作所はGEベルノバとSMRを開発する(完成イメージ)

 

「設計はほぼ終わっている。着工に向けパートナーと共に顧客を支援している」。日立製作所の原子力経営戦略本部の舛井崇担当本部長は力を込める。

GEベルノバとの合弁会社がカナダで建設予定の小型モジュール炉(SMR)は北米で初めて系統接続を目指すプロジェクトで、早ければ29年にも稼働する。

 

SMRはその名の通り小型の原子炉だ。一般的な原子力発電所は出力が1基あたり100万キロワット程度なのに対し、SMRは30万キロワット以下になる。小さいため原子炉が冷却しやすく安全性が高いとされる。

大型炉では建設コストが当初予定を大幅に上回ったり建設期間が長期化したりする例が相次ぐ。日立とGEベルノバのSMRは大型炉の既存技術を生かした上で、構造をなるべく単純化して部品数を減らしコストを抑えた。

 

SMR建設計画は世界各国で持ち上がっており、小型で建設しやすいとなれば「爆発的に建設基数が増える可能性がある」と舛井氏はいう。

大型炉も新設が広がる。これまでも積極的に建設してきた中国やロシアに加え、英国も50年までに最大24ギガ(ギガは10億)ワットの原子力を導入する方針を打ち出した。石炭依存の脱却を目指すポーランドやルーマニアでも大型炉の新設が計画されている。

 

 

 

海外の原発新設の恩恵を受けているのがステラケミファだ。国内で初めて濃縮ホウ素の大量生産技術を確立した。

原子炉の出力安定などに使われる濃縮ホウ素化合物の販売が伸びている。濃縮ホウ素化合物を含むエネルギー部門の売上高は25年3月期に約25億円と前期比2倍超となる見通し。

 

中国や欧州での原発新設の流れを受け「濃縮ホウ素化合物の需要は今後ますます高まる」という。

国内の原発再稼働の需要をつかむ企業もある。三菱重工業は再稼働対応から保守工事、燃料サイクル施設の竣工対応など幅広い事業を手掛ける。先行した加圧水型軽水炉(PWR)の再稼働対応が評価され、足元で再稼働が始まった沸騰水型軽水炉(BWR)でも耐震補強など依頼がきているという。

 

政府が掲げる原子力比率の目標(20〜22%)を達成するには原発25〜28基の稼働が必要とみられ、「30年ごろまで一定程度の事業規模が継続する」という。

岡野バルブ製造はBWR向けバルブとメンテナンスに強みを持つ。原子炉1基に対し同社の数百台のバルブが使われているという。

 

再稼働の1年程前からメンテナンスが始まり、古くなったバルブや部品の取り換え需要も発生する。11年の福島第1原発の事故以降に撤退したバルブメーカーもあり「2割ほどは他社製品のメンテナンスとなっている」(丹野信康メンテナンス事業部長)。

24年11月期の連結営業利益は8億8000万円と10年11月期以来の高水準を見込む。

 

良好な環境は当面続きそうだ。「全てが見えているわけではないが2〜3年で3〜4基の再稼働が予定される」(丹野氏)という。

再稼働後も13カ月ごとに定期検査があるため、稼働する原発が増えるほど事業基盤は底堅さを増す。

(松本裕子、高垣祐郷、鈴木大洋、安田亜紀代が担当した。グラフィックスは田口寿一)

[日経ヴェリタス2024年12月8日号]

 

 

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AI電力需要への対応「原子力発電が重要」 IEA国際会議

2024-12-06 17:05:16 | 環境・エネルギー、資源


エネルギーとAIに関する国際会議で発言するIEAのビロル事務局長(中央、5日、パリ)=IEA提供

 

【パリ=北松円香】

パリで国際エネルギー機関(IEA)が開催した「エネルギーとAIに関するグローバル会議」が5日閉幕した。IEAのビロル事務局長が発表したサマリーによると、参加者からは人工知能(AI)による電力需要増加に対応するため、原子力や地熱発電などの再生可能エネルギーが重要だとの指摘があった。

同サミットは4日から2日間にわたって開催され、およそ25カ国の高官に加えて米グーグルや米マイクロソフト日立製作所の送配電子会社である日立エナジーなど民間企業が多数参加した。日本からは松尾剛彦経済産業審議官が出席した。

 

AIの普及と発展はエネルギーの効率的な生産や使用に役立つ一方で、データセンターの増加で電力需要が急増する原因にもなるとみられている。IEAによると、例えばアイルランドではすでに電力需要の20%をデータセンターが占める。

今回の開催は来年以降の国際会議につなげる狙いもある。25年の主要7カ国首脳会議(G7サミット)の議長国を務めるカナダは、AIとエネルギーを議題として取り上げる方針だ。フランスも25年2月にパリで大規模な「AIアクションサミット」を開催する。

 

 

 

 

日経記事2024.12.06より引用

 

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(関連情報)


・ロスチャイルド財閥ー18 キューリー夫人
 https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/1feb6656b6dbdb2c32f498c6cd841d94

・ロスチャイルド財閥ー19 キューリー夫人とRTZ(リオ・チント・ジンク)そして原子力産業 https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/3f899728fe268d13f0714305cf0ad65b