画像はフォトショップの画像解像度の画面。
私は長らくこの画面に書いてあることの意味がよくわからなかった。
画面の「ドキュメントのサイズ」の項目にある「mm」は長さの単位だからいわゆる紙の大きさでわかるが、「pixel」という言葉の意味「pixel/inch」に至っては何を言ってるのか分からなかったが、この度ようやく一定のレベルで把握した。
pixelがドット(点)と同じようなものであることは私もわかっている。
しかしpixel/inch(ピクセルパーインチ)というものは良く分かってはいなかった。
pixel per inchとは、ppiとも表されるもので、密度を示す単位である。下図をご覧いただきたい。
ここにppiではなくdpiと書いてあるが、本質的には同じ意味である。
1インチあたりの密度、それがppiである。
dpi=ドットパーインチ。 (主にプリンターの1インチあたりの印刷密度を表す数値)
ppi=ピクセルパーインチ。 (主にモニターの1インチあたりの表示密度を表す数値)
1インチ四方の密度ではない。1インチの密度である。
ppiは密度の話である。しかしまだ大きさの話はしていない。モニターは大きいものから小さいものまである。密度も高く大きさも大きければ高級といってもいいだろう。600ppiの100インチモニターなら最高だろう。しかしそんなものは巷に売ってはいない。その話をすると話がそれるので、まずは本題から進めていこう。
さてモニターの大きさの話である。
96ppiの1インチ四方のモニターがあったと仮定しよう。もちろんこんなモニターは巷には売られていない。縦2.54センチ×横2.54センチの真四角の小さすぎるモニターだからだ。(これは1インチモニターではない。モニターのインチとは横幅でも縦幅でもなく対角線の幅を指す用語)
さてこのモニターは96×96=9216個のピクセルの細かさで写真を表示する。
ppiを上げたらどうなるだろう。例えば600ppiの1インチ四方のモニターを考える。
600×600=360000個のピクセルの細かさで写真を表示できる。素晴らしい!
しかしそんなモニターはない。1インチに600ピクセルも入れられるような液晶素子は少なくともモニターにはない。トフォンの最新機器のiphone11のRetinaディスプレイは458ppiもあるそうだが、PCモニターでそこまでの密度を誇るディスプレイは(高すぎて)市販されてはいない。
さすがに1インチ四方のテレビは荒唐無稽だ、96ppiの23インチモニターで計算してみよう。23インチモニターの縦横の長さをミリメートルで表すと以下のようになる。
https://pen64.com/document/monitor-size.html
横幅508.3mm(50.83cm) 高さ286.3mm(28.63cm)
ppiはインチなので分かりづらいので、ミリメートルに置き換えてみよう
式 96÷25.4(mm)=3.779 1ミリメートルに3.779個。この密度である。
23インチの横幅は508.3ミリなので、508.3×3.779=1920.86個
23インチの高さは286.3ミリなので、286.3×3.779=1081.92個
横が約1920個。高さが約1080個。1920×1080=207万個。
さて、ここで1920×1080という数字をどこかで見たことがないだろうか?
そう、モニターの解像度である。
HDは1280×720 約92万個
FHDは1920×1080 約207万個
4Kは3840×2160 約829万個
8Kは7680×4320 約3317万個
23インチだろうと28インチだろうと、FHDモニターである以上は1920×1080の解像度までしか出力しない。FHDに代表される規格とはそういうものである。しかし、だとすれば、23インチだろうと28インチだろうとどんなにモニターが大きくなったとしても、FHDの規格である限りは、ピクセル総数は1920×1080=207万個である。23インチの面積は1,454cm、28インチの面積は2,156cm。しかしピクセル総数は207万個。小さな23インチのモニターのほうが面積あたりのピクセル数は多くなる。
https://pen64.com/document/monitor-size.html
ということはモニターが大きくなると、ppiは落ちるのではないか?
フォトショップの画像解像度で入力して確かめてみた。
28インチのモニター 1920×1080 幅618.7mm 高さ348.5mmの場合のppiは・・・
79が近似値。落ちている。
https://www.ipentec.com/document/hardware-display-dot-pitch
このページを参照するとそのことがよくわかる。モニターがでかくなればppiは落ちる。つまりインチ当たりの密度は落ちるワケ。
さて、上で1920×1080=207万個と書いたが、207万画素といってしまっても差し支えない。ピクセルの総数=画素なのだ。
ただし、これまで書いてきたように、どんなに画素数があがっても、ppiが落ちたら密度は落ちるから、見た目の画質は荒く感じる。つまり画素なる言葉は決して画質を保証しない。画素など写真のサイズが大きくなれば画質は荒くなるわけで、あくまで画素数は写真サイズと比較することによってはじめて意味をもつ単位となる。
さて、相対指標の画素よりも、絶対指標のppiを重視するべきであることは確認したが、ここで「人間の肉眼」というものについて述べなければならないだろう。
はたして人間は、どの程度のppiまで識別することができるだろうか?
ppiは理論上、技術がすすめばどこまでも高めることはできるだろう。それこそ10000ppiという密度も未来においては可能かもしれない。
しかし、人間の視覚(明視距離25cm)で識別できるppiは、およそ360ppiといわれている。写真を虫眼鏡や顕微鏡を使ってみるのではないとしたら、25cm先から見るのであれば、360ppi以上は必要ないということになる。
技術の進歩は、 人間の生得的なセンサー(例えば肉眼)を越えたところで、人間が識別できなければ意味をなさない。
スマートフォンのRetinaデスプレイは400ppi以上あるというが、スマートフォンは25cm以内で見ることになるので、人間の識別可能域はもっとあがり、たぶん600~800あたりになるのではないか?
私の持っているEOS5Dはもう15年も前のカメラである。
フルサイズの撮像素子をもったカメラで有効画素は1280万画素。
4368×2912ピクセル=1271万画素
サイズ46.2cm 30.8cm
A3サイズ=42cm 29.7cm
解像度 240ppi
これで撮った写真をWEB上で載せても意味がない。240ppiは96ppiまで落とされてしまう。4Kの23型で200ppi。8Kの23型で400ppiなので、4Kを買えば、モニターで200ppiまでの画質なら再現できる。しかし肉眼にはまだ余裕がある。
なので、写真サイズをこの半分にしたとする。つまりA4サイズに縮小したとする。サイズの縮小によってカメラの解像度はあがり340ppiになる。この場合、4Kのモニターだと200ppiまでしか対応していないので、4Kの23型よりもかなり小さなものを選ぶか、もしくは8Kの23型に買い替えることになる。すると400ppiまで表示できるので問題ない。そして肉眼も360ppiまで25cmの範囲なら識別できるので、非常に画質がよくなるわけだ。
これは5Dの写真をモニター鑑賞する場合である。
印刷の場合はどうだろう。
プリンターの性能は300dpi以上といわれている。この際肉眼である360ppiを超える必要はない。360dpiのプリンターで、A4サイズの340ppiの5Dの写真を印刷し、360ppiの肉眼で鑑賞すれば、すくなくとも肉眼では340ppiの画質を感じることができるのである。
もちろん写真をA4より大きく引き伸ばすとしたら、まずEOS5Dが障害になる。また、印刷して鑑賞することが目的だとするならば、モニターは別に96dpiのFHDでも問題はない。モニター上では実物よりもショボくみえるだろうが、印刷するのであれば、画質を左右するのはプリンターのdpiと肉眼のppiだけになるのだから。
ということで、お買い物が難しくなるのである。