本日誕生日でして、用事があって福岡に行かなくてはいかなかったこともあり
自分への誕生日プレゼントとして大宰府天満宮参拝+
九州国立博物館の「ボストン美術館 日本美術の至宝」に行ってきました。
明治期、急速な近代化と西洋文明礼賛、そして廃仏毀釈。
日本的なものは「古臭いもの」「遅れているもの」と顧みられることはなく
廃仏毀釈で潰された寺院に伝わる宝物は二束三文で売り払われておりました。
そんな「失われゆく日本の美」に着目したのが
日本に哲学や政治学を教えるためにやってきたフェノロサ、
大金持ちの医者で大の日本好きのコレクターであるビゲロー、
フェノロサに学び、彼の日本美術収集を受け継いだ岡倉天心の3人でした。
彼らは散逸していた日本の古い美術品・・・仏教絵画、絵巻物、狩野派の日本画、
等伯、光琳、蕭白らの近世絵画を買い集め、
アメリカ・ボストン美術館へと運び、日本文化の紹介と研究を行います。
そして、海外で研究が進んだことで日本でも再度日本独自の文化に目を向ける運動が始まり、
国宝・重文クラスの海外流出が(多少は)抑えられるようになったわけです。
この展覧会は、仏教芸術から絵巻物、水墨画・初期狩野派。近世絵画、そして曽我蕭白特集と
フェノロサ・ビゲローのコレクションから厳選した作品たちが紹介されていきます。
仏教画は歴史が古いこともあり、保存状態が厳しかったのか退色も激しく
細部まで見るにはかなり近寄らなくてはいけない作品も多かったのですが
本地垂迹説(神道と仏教をハイブリッドさせ、日本神話の神=仏教の菩薩が姿を変えて現れた説)を
表現した曼荼羅も面白いものでございました。
絵巻物は「平治物語絵巻」の「三条殿夜討巻」と、「吉備大臣入唐絵巻」の2つ。
ドキュメンタリータッチでの戦闘を表現した「平治」と、
遣唐使として唐に渡った吉備真備の奇妙な冒険を描いた「入唐絵巻」は
まったくカラーの違う読み物なわけですが、
こういう表現が現在の漫画表現に繋がっている部分もあるのかなぁ、と
感じたりもいたしました。
次のコーナーの水墨画はどうしても禅宗との結びつきや山水画が中心となるわけですが
雪舟の若い頃の作品といわれる「三聖・蓮図」にはぐっと惹きつけられたり
続く初期狩野派の作品である「松に麝香猫図屏風」のジャコウネコのふわふわ感なども
つい引き込まれる魅力がありました。
近世絵画のコーナーでは、長谷川等伯の「龍虎図屏風」が
思わずポストカードを買ってしまったほど好きな作品になりました。
光琳の「松島図屏風」も日本画を踏み外して、
この色使いやデザインはポップアートだなぁ・・・とも感じたり。
そして展覧会を締めくくるのは、曽我蕭白の特集。
この人の線のアバンギャルドさはまさにイラストレーション的であり
今回の目玉の「雲龍図」のパワフルさや、世俗を離れたはずの仙人を
非常に生臭く、俗っぽく描く感覚などはまさに現代的な感覚に思えます。
以前見た若冲のブライスコレクションもですが、
日本で「伝統」からこぼれた異端の画家が海外での再評価から
日本でも大人気になる、という図式がつくづく日本的だなあ、と思うとともに
「伝統」の物差しと「感性」の物差し、両方を持つことの大切さを
こういう展覧会を見るたびにひしひしと感じます。
そして常設展示のほうでも「雪と火炎土器」、
「江戸の粋、印籠」といった特集展示が行われており
火炎土器の文様にはどうも集落ごとのルールがあったらしい、という説や
印籠や根付といったコレクター魂を刺激するデザインの魅力などを
じっくり堪能できるいいお出かけでございました。
自分への誕生日プレゼントとして大宰府天満宮参拝+
九州国立博物館の「ボストン美術館 日本美術の至宝」に行ってきました。
明治期、急速な近代化と西洋文明礼賛、そして廃仏毀釈。
日本的なものは「古臭いもの」「遅れているもの」と顧みられることはなく
廃仏毀釈で潰された寺院に伝わる宝物は二束三文で売り払われておりました。
そんな「失われゆく日本の美」に着目したのが
日本に哲学や政治学を教えるためにやってきたフェノロサ、
大金持ちの医者で大の日本好きのコレクターであるビゲロー、
フェノロサに学び、彼の日本美術収集を受け継いだ岡倉天心の3人でした。
彼らは散逸していた日本の古い美術品・・・仏教絵画、絵巻物、狩野派の日本画、
等伯、光琳、蕭白らの近世絵画を買い集め、
アメリカ・ボストン美術館へと運び、日本文化の紹介と研究を行います。
そして、海外で研究が進んだことで日本でも再度日本独自の文化に目を向ける運動が始まり、
国宝・重文クラスの海外流出が(多少は)抑えられるようになったわけです。
この展覧会は、仏教芸術から絵巻物、水墨画・初期狩野派。近世絵画、そして曽我蕭白特集と
フェノロサ・ビゲローのコレクションから厳選した作品たちが紹介されていきます。
仏教画は歴史が古いこともあり、保存状態が厳しかったのか退色も激しく
細部まで見るにはかなり近寄らなくてはいけない作品も多かったのですが
本地垂迹説(神道と仏教をハイブリッドさせ、日本神話の神=仏教の菩薩が姿を変えて現れた説)を
表現した曼荼羅も面白いものでございました。
絵巻物は「平治物語絵巻」の「三条殿夜討巻」と、「吉備大臣入唐絵巻」の2つ。
ドキュメンタリータッチでの戦闘を表現した「平治」と、
遣唐使として唐に渡った吉備真備の奇妙な冒険を描いた「入唐絵巻」は
まったくカラーの違う読み物なわけですが、
こういう表現が現在の漫画表現に繋がっている部分もあるのかなぁ、と
感じたりもいたしました。
次のコーナーの水墨画はどうしても禅宗との結びつきや山水画が中心となるわけですが
雪舟の若い頃の作品といわれる「三聖・蓮図」にはぐっと惹きつけられたり
続く初期狩野派の作品である「松に麝香猫図屏風」のジャコウネコのふわふわ感なども
つい引き込まれる魅力がありました。
近世絵画のコーナーでは、長谷川等伯の「龍虎図屏風」が
思わずポストカードを買ってしまったほど好きな作品になりました。
光琳の「松島図屏風」も日本画を踏み外して、
この色使いやデザインはポップアートだなぁ・・・とも感じたり。
そして展覧会を締めくくるのは、曽我蕭白の特集。
この人の線のアバンギャルドさはまさにイラストレーション的であり
今回の目玉の「雲龍図」のパワフルさや、世俗を離れたはずの仙人を
非常に生臭く、俗っぽく描く感覚などはまさに現代的な感覚に思えます。
以前見た若冲のブライスコレクションもですが、
日本で「伝統」からこぼれた異端の画家が海外での再評価から
日本でも大人気になる、という図式がつくづく日本的だなあ、と思うとともに
「伝統」の物差しと「感性」の物差し、両方を持つことの大切さを
こういう展覧会を見るたびにひしひしと感じます。
そして常設展示のほうでも「雪と火炎土器」、
「江戸の粋、印籠」といった特集展示が行われており
火炎土器の文様にはどうも集落ごとのルールがあったらしい、という説や
印籠や根付といったコレクター魂を刺激するデザインの魅力などを
じっくり堪能できるいいお出かけでございました。