ジョーカーによる大量殺人をいつものように解決し、
ジョーカーを裏切って金を持ち逃げしたチンピラを追いかけていたバットマン。
自殺しようとしたその男はこう告げる。
ジョーカーにひどい目に遭わされる前に妻と子どもを手にかけた、と。
体と心に深い傷を負い、ケイブに戻ったブルース。
「もう無理だ、これ以上は…」
そう言ったブルースの前に現れたのは『バットマン』だった。
ブルース・ウェインとバットマン。
ブルースが「夜の活動」をするための扮装がバットマンである、とともに
バットマンこそが真の人格であり、ブルースは彼の本性を隠す姿に過ぎない、という
解釈をしている作品も見ることができます。
今作ではブルースが「理性」、バットマンが「怒り」や「恐怖」の人格として描かれ
その対話…論戦が「バットマン」というキャラクター像を浮き上がらせています。
もうすぐ公開の「ザ・バットマン」にも影響を与えた作品…ということで
今回邦訳が出た、ということでもあるのですが
理性と狂気の間に立つ存在、ということこそがバットマン最大の魅力に思えます。
そして今作は、2016年に53歳でこの世を去ったダーウィン・クック
(「DC:ニューフロンティア」)によるバットマン作品集でもあります。
「ブラック&ホワイト」2作品や、
マフィアから金を強奪するためにチームを集める「キャットウーマン:セリーナズ・ビッグ・スコア」など
バラエティに富んだ作品の数々は、アニメ版バットマンのスタッフとして参加していたクックの
バットマンに対する愛情やレンジの広さを感じられます。
「バットマン」というキャラの本質、を知るための1冊、として
映画を観る前、観た後に読んでほしい1冊です。