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成田亨 美術/特撮/怪獣

2015-01-17 | アート
福岡まで足をのばして、福岡市美術館で2月11日まで開催の
「成田亨 美術/特撮/怪獣」展を見てまいりました。

「ウルトラQ」「ウルトラマン」「ウルトラセブン」「マイティジャック」の
怪獣やメカニックデザインで特に知られるデザイナーであるとともに
武蔵野美術大学で絵画・彫刻を学んだ抽象彫刻で知られる芸術家であり
数々の映画・・・「トラック野郎」や「新幹線大爆破」「麻雀放浪記」などの特撮美術を担当。
後年は「鬼」や「龍」「天狗」といった日本のモンスターたちに目を向けた作品を作っていた成田ですが
今回の展覧会では美大時代の作品から2002年に亡くなるまでのすべての作品・・・
個人所有の未発表作や、実現しなかった幻の企画案、
そして表に出ない特撮美術の仕事の絵コンテなどの展示も行われています。

作品のボリュームとしてはやはり「ウルトラ」関係のデザイン画がメインとなり
各ヒーロー・怪獣の初期案からの変遷(M1号とか全然違う!)や
怪獣を生み出すための発想法の片鱗もうかがえます。
(1体だけ額装もされていないデザインがあったりもします・・・これは是非会場で)
曲線と直線の美しさが反映されたメカニックデザインも魅力です。
(この魅力が一番発揮された「MJ」が円谷と袂を分かつ原因になるとは)

円谷から離れた成田は自分の事務所を立ち上げ、新たなヒーローを企画します。
それが「ライブショーの公開録画」という形式をとった「突撃!ヒューマン」でした。
映像に比べて格段に制約の多いライブショーという状況を活かした
ステンレスできらきらと輝くヒーローマスク、舞台上で怪獣を映えさせるギミックなどが
盛り込まれた作品ではあったものの、この番組最大の不幸は、
裏番組が「仮面ライダー」だったことでした。
そしてその映像も残っておらず、現在ではデザイン画とマスク、少しのスチル写真が残るのみ・・・
続いて手掛けた「円盤戦争バンキッド」でもさまざまなデザイン的な挑戦を行いますが
「ゴレンジャーの亜種」という扱いで、これも特撮史の中に沈んでいきます。
(奥田瑛二のデビュー作というトピックはあるのですが・・・)

70年代~80年代は特撮・アニメなどの企画を立てるも実現せず、
主に彼が映像の世界に入るきっかけとなった「特撮美術」の世界・・・
それも「特撮映画」でないものが中心となっていきます。
長崎原爆を描いた「この子を残して」の原爆投下~廃墟になった長崎、
数々の戦争映画や、戦後直後を描いた作品の美術、
さらには菅原文太の代表作である「トラック野郎」シリーズのデコトラデザインまで。

さらにこの時期には、アトリエを使わせてもらう対価としての
個人向けオリジナル怪獣のデザインを大量に行っていたほか、
雑誌などでの企画もスタートさせていました。
それは世界の神話や、ゲーム(当時のPC用RPGなど。まだファミコン初期の時代でした)に登場する
モンスターを絵とともに紹介する、という企画でした。

ゲームのモンスターに触れる中で、成田はひとつのことに気がつきます。
日本の怪物が、世界ではあまりに知られておらず、
”ニンジャ”や”サムライ”がモンスター扱いされていること。
(これは「ウィザードリィ」だと思いますが・・・ちなみに前述のモンスター紹介の成田デザインモンスターが
 のちのファミコン版「ウィザードリィ」の末弥純デザインモンスターの下敷きになってる感があります)
この状況を危惧した成田は、「鬼」を中心とした日本のモンスターたちを
迫力の筆致や造形で描き出すことを活動の中心としていきます。
「鬼」「龍」「天狗」といった古来から伝わるモンスターたちに、新たな命を吹き込むかのように。

また、その一方でかつてデザインしたウルトラ怪獣たちをモチーフにした芸術作品の制作も行います。
よりメカニックに、抽象的にデザインされたメカニック・バルタン、略してメバや
「宇宙人の気配」シリーズなど。

「ウルトラマンに角や髭や乳房をつけたり、服を着せたりしてはいけない」と
かつて「鎮魂歌」という作品で語った成田にとって、
ウルトラマンに乳房をつけたウルトラの母が服を着てCMをしているこの博多の街での展覧会は
多少ひっかかるものはあるかもしれませんが、
彼が彫刻家として影響を受けたジャコメッティの「雄鶏」と同じ美術館での展示については
四次元宇宙の片隅で喜んでいてくれるのではないかなぁ、と思ったりもいたしました。

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