香の幻想：ホーリーフ

　公園の中央に小山状の木々の植え込みがあります。高い木々の狭間にツツジや沈丁花などの低木が生えています。そんな低木の陰に隠れるようにひとりの青年がかがみこんでいます。黒縁のめがねにサファリウェア。ちょっとした冒険家気取りです。枝にとまった昆虫を眺めています。

　小山の上から７，８歳くらいの１人の男の子が降りてきました。彼は
「おにいちゃん何やってんの？」
と尋ねられるのを期待していました。彼の風貌を見て多くの子どもは不思議がり声をかけてきます。話しかけられると彼は
「今ちょっとした冒険をしてるんだ」
なんて話を膨らませようなんて思っていたのです。
しかし、今すれ違った子は彼について何の興味も示しません。一瞥しただけであっさりと行ってしまいました。

　そこで彼も小山から降りていきました。小山を降りるとそこはブランコと滑り台、そしてベンチが３脚くらい並んだだけの小さな公園です。ベンチの向こうは柵が張り巡らされています。この公園自体が高台の上にあるため公園のベンチに座ると広々とした町並みが見渡せます。小山の木々の間からは公園の柵の向こうは空しか見えませんでした。

　眼下に見える町並みを眺めひとつ深呼吸すると、彼はまた日常に戻っていきました。






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