豚も杓子も。

私にすれば上出来じゃん!と開き直って、日々新たに生活しています。

吉例顔見世興行

2006年12月19日 | Weblog
師走の京都に行ってきました。
南座で行われている顔見世興行。南座は、四条大橋のたもとに佇むこじんまりした昔ながらの芝居小屋です。毎年11月末から行われる顔見世は、東西の花形役者が集う華やかな舞台ですが、今年は、第十八代中村勘三郎の襲名披露公演が行われています。


ここでしか味わえない独特の雰囲気を二十数年ぶりに味わってきました。
今回は、家族で。
半世紀を生きて初めて歌舞伎を見るのだと興奮気味なダーリン。娘ふたりも未知の世界に興味津々でした。和風でいながらとても斬新な色彩。侘びさびとはまた違う華やかで粋な世界です。


南座の客席は三階に別れ、一階の両端は桟敷になっています。かつて、総見と呼ばれる芸妓さんや舞妓さんがこの桟敷に打ち揃って観劇する日に遭遇したことがありましたが、まことに艶やか。見事なものでした。
今回も下手の一番前の桟敷に芸妓さんが。しばらくすると舞妓さんも座られました。舞台を観るオペラグラスを左に振っては、お二人の様子を眺めてしまいました。本当に美しいお姿。襟の抜き具合も水際立って、そこだけ光があたっているようです。幕間にロビーですれ違いましたが、しばし見惚れてしまいました。日本が世界に誇るものは富士山と芸者さん・・と言われていたのもあながち誇張ではないと思いました。女性の美しさのひとつの極地を見たような気もいたしました。大金をはたいてお座敷に呼びたいと思う方がいるのも、まったく不思議はないですね。

物珍しくて、あちこち探検してみました。普通だとお花がたくさん並ぶところですが、贈り主の名前が書かれた札だけがずらっと壁に掲げられていました。先斗町や祇園のお姐さんから贈られたお花は松で誂えられた独特な形です。
売店も、関連のグッズで賑わっていました。いろいろ趣向の凝らしてある中で、やはり今回の勘三郎さんの襲名にちなんだものを選んでみました。記念のチョコレートと手ぬぐいです。


襲名披露の最後の舞台となる、ここ南座の顔見世。踊りの名手でもありお芝居も上手、観客を引きつけることに長けた勘三郎さんの魅力をそのままに伝えることの出来る演目が選ばれていたように思います。
二人の息子さん、勘太郎さんと七之助さんの伸びやかな若々しい姿に触れることが出来たのも幸いでした。
昼の部の冒頭、歌舞伎の創始者猿若と出雲の阿国にそれぞれ扮した一幕は、思わず笑みがこぼれてくるフレッシュで楽しい舞台でした。現代にも通じる垢抜けた明るさでありながら、確かな技術がそれを支えているという安定感は、日本の伝統芸能の奥深さを感じさせるものでした。これからの二人が本当に楽しみです。
勘三郎さんは、どの場面も実に素晴らしいの一言でした。中でも、病に侵された忠信が小康を得て久しぶりに主君の義経の会いに行くと言う「義経千本桜 川連法眼館(かわつらほうげんやかた)」。登場する花道での病んだ忠信のこまかな表情、憂いに満ちたえもいわれぬ風情は目に焼きついています。
その後、忠信に変化(へんげ)していた狐として舞台を縦横無尽に駆け抜ける姿にも勝る印象深い一場面でした。