お盆休みだけれども、あまり集中していないので、本を動かすことにした。三時から四時にかけて家の上を猛烈な雷雲が通過し、どかんどかんと周囲に落雷する音を聞いた。私の場合は、母の亡魂に自分の不甲斐ない生き方を叱られているような気がしてしまうので、謹んで過ごすほかはなかった。雷がすぎてこれを書きはじめたら、少し体調が戻った。
・『露伴評釈 芭蕉七部集』 昭和三十一年一月、中央公論社刊
便利だろうと思って買ったのに、ほとんど利用した覚えがない。岩波の全集の方は、あちこちに散らばってしまっていて、場所に心当たりはあるけれども、全部はまとめて見つからないだろう。とすると、当面はこの本しかないわけだが、いささか前の所有者が使い込んで疲れた感じの古書なので愛情がわかないのか。こういう場合は、ハトロン紙のカバーをかけたりすると気分が変わる場合がある。
・桶谷秀昭『ドストエフスキイ』 昭和五十三年、五十四年五月第三版、河出書房新社刊
ぱらぱらめくってみると、魅力的な登場人物の名前がいくつも出て来る。ただ、気のせいか「精神」という単語が目に飛び込んで来るたびに、とてもうっとうしく感じたのはどうしてか。
・森本和夫『デリダから道元へ』1989年6月刊、福武書店刊
頭の調整用に買ったのだけれども、今日はぜんぜん読む気が起きないので、直ぐ脇に置いた。
・辻邦夫『詩への旅、詩からの旅』装丁栃折久美子 一九七四年一二月、筑摩書房刊
これもお酒を飲みながら読む本ではなかった。
・与謝野迪子『思い出 わが青春の与謝野晶子』1984年8月、三水社刊
これは与謝野光の奥さんの書いた本である。たしか夫の光氏も本を出していて、それも所持しているが、さてどこにあるやら。
・川田順造『富士山と三味線 文化とは何か』2014年1月、青土社刊
これは新刊で買った覚えがある。「現代に生かすべき初期柳田の先進性」あたり、再読に値するのではないか。末尾の「虫かご風の家」の植物記・昆虫記が魅力的な本である。
・大庭みな子『三匹の蟹・青い落葉』昭和47年11月、51年12月刊4版、講談社文庫
解説平岡篤頼。吉本隆明が推奨していたのが頭にあったので買ったまま読んでいない。いつか読もうと思う。
・辻原登『熱い読書 冷たい読書』二〇一三年八月刊、ちくま文庫
ちとむずかしめだが、読んでおもしろくないような本は一切とりあげられていない気がする。選りすぐりの読書案内で、座右の書としたい。私の偏愛するグラックの『シルトの岸辺』がとりあげられているのもうれしい。
・オリバー・サックス『妻を帽子とまちがえた男』一九九二年一月、二〇〇二年二四刷、晶文社刊
これは「ブ」で買って来た。へーえ、と思って。たしか皆川博子が『博士の本棚』で取り上げていた。私はたしか入試問題集でオリバー・サックスの名前をはじめて目にした。入試問題は、日本人の一般教養と基礎教養を嵩上げするのに貢献している。オリバー・サックスの名前は医学部などの問題に頻出してもよい。
・松島松翠編著『現代に生きる若月俊一のことば』2014年、家の光協会刊
先日ネットで買った。「現代」に「いま」と振り仮名がある。たぶん某医大の汚職理事に若月俊一を尊敬するような人は一人もいないだろう。めいわくなのは、真面目な卒業生諸氏である。若月俊一については、このブログだと南木佳士について書いた一文で取り上げた。
・福岡賢正『隠された風景―死の現場を歩くー』二〇〇四年一二月、二〇〇九年十月第四刷、南方新社刊
ペットの処分にあたっている人の現場に取材し、食肉用動物の屠畜に従事している人々に聞き取りをして書かれた本。自殺者の遺書を読むという章もある。
〇どうも置き方が悪かったらしく、背中の本が氷河のようにずるずるとこちらに向かってすべり落ちはじめた。それをあわてて止めてから、また書く。
・今村順子編訳『シモーヌ・ヴェイユ アンソロジー』二〇一八年七月刊
新刊。字も大きく行間も広いので、読みやすい。ありがたい本だ。
・デイヴィッド・シルヴェスター『フランシス・ベイコン・インタヴュー』二〇一八年六
月刊、ちくま文庫
衝撃的な絵について淡々と語る。どきっとするようなことを突然ぱっと言うところに凄みがある。芸術作品は一瞬のひらめきと、そのときの成り行き次第な面があるということもわかっておもしろい。
・小林亜津子『改訂版 看護のための生命倫理』2004年11月、2014年3月改訂版第6刷、ナカニシヤ出版刊
良書である。臨床的実践例30ケースで学ぶ「看護倫理」入門、と帯にある。平易な問題提起と行き届いた実例の提示があり、類書の見本とすべき内容。私は医療看護系志望の学生たちにこれを読ませたいと思った。
☆ 追加 ついに出た、という感じの高校生向け小論文の名著。
・『石関の今すぐ書ける看護・医療系小論文』2018年3月刊、東進ブックス
私がふだん小論文・作文指導をしている時に言っていることとまったく同じことが書かれていたので、実は作文・表現指導の本を書いてみようかと思っていた気持ちが、半分ぐらいなくなった。半分ぐらいというのは、私は言語論や段落論や複文についての研究を参照しながら書いてみたいので、そこは違うので。しかし、実践的にはほぼこれで決まりかな、という簡潔で行き届いた仕上がりである。これにいまは書名うろ覚えだけれども、定番の「吉岡の小論文10章」とたしか河合塾刊の「理科系の小論文」の三冊で足りる。あとは自分で新聞を読み、新書を読み、ニュースを見て考えろ、だ。吉岡の本は、大学生になっても使えるよ、と言って買わせている。
※後日少し文章に手を入れた。18日に追記した。
・『露伴評釈 芭蕉七部集』 昭和三十一年一月、中央公論社刊
便利だろうと思って買ったのに、ほとんど利用した覚えがない。岩波の全集の方は、あちこちに散らばってしまっていて、場所に心当たりはあるけれども、全部はまとめて見つからないだろう。とすると、当面はこの本しかないわけだが、いささか前の所有者が使い込んで疲れた感じの古書なので愛情がわかないのか。こういう場合は、ハトロン紙のカバーをかけたりすると気分が変わる場合がある。
・桶谷秀昭『ドストエフスキイ』 昭和五十三年、五十四年五月第三版、河出書房新社刊
ぱらぱらめくってみると、魅力的な登場人物の名前がいくつも出て来る。ただ、気のせいか「精神」という単語が目に飛び込んで来るたびに、とてもうっとうしく感じたのはどうしてか。
・森本和夫『デリダから道元へ』1989年6月刊、福武書店刊
頭の調整用に買ったのだけれども、今日はぜんぜん読む気が起きないので、直ぐ脇に置いた。
・辻邦夫『詩への旅、詩からの旅』装丁栃折久美子 一九七四年一二月、筑摩書房刊
これもお酒を飲みながら読む本ではなかった。
・与謝野迪子『思い出 わが青春の与謝野晶子』1984年8月、三水社刊
これは与謝野光の奥さんの書いた本である。たしか夫の光氏も本を出していて、それも所持しているが、さてどこにあるやら。
・川田順造『富士山と三味線 文化とは何か』2014年1月、青土社刊
これは新刊で買った覚えがある。「現代に生かすべき初期柳田の先進性」あたり、再読に値するのではないか。末尾の「虫かご風の家」の植物記・昆虫記が魅力的な本である。
・大庭みな子『三匹の蟹・青い落葉』昭和47年11月、51年12月刊4版、講談社文庫
解説平岡篤頼。吉本隆明が推奨していたのが頭にあったので買ったまま読んでいない。いつか読もうと思う。
・辻原登『熱い読書 冷たい読書』二〇一三年八月刊、ちくま文庫
ちとむずかしめだが、読んでおもしろくないような本は一切とりあげられていない気がする。選りすぐりの読書案内で、座右の書としたい。私の偏愛するグラックの『シルトの岸辺』がとりあげられているのもうれしい。
・オリバー・サックス『妻を帽子とまちがえた男』一九九二年一月、二〇〇二年二四刷、晶文社刊
これは「ブ」で買って来た。へーえ、と思って。たしか皆川博子が『博士の本棚』で取り上げていた。私はたしか入試問題集でオリバー・サックスの名前をはじめて目にした。入試問題は、日本人の一般教養と基礎教養を嵩上げするのに貢献している。オリバー・サックスの名前は医学部などの問題に頻出してもよい。
・松島松翠編著『現代に生きる若月俊一のことば』2014年、家の光協会刊
先日ネットで買った。「現代」に「いま」と振り仮名がある。たぶん某医大の汚職理事に若月俊一を尊敬するような人は一人もいないだろう。めいわくなのは、真面目な卒業生諸氏である。若月俊一については、このブログだと南木佳士について書いた一文で取り上げた。
・福岡賢正『隠された風景―死の現場を歩くー』二〇〇四年一二月、二〇〇九年十月第四刷、南方新社刊
ペットの処分にあたっている人の現場に取材し、食肉用動物の屠畜に従事している人々に聞き取りをして書かれた本。自殺者の遺書を読むという章もある。
〇どうも置き方が悪かったらしく、背中の本が氷河のようにずるずるとこちらに向かってすべり落ちはじめた。それをあわてて止めてから、また書く。
・今村順子編訳『シモーヌ・ヴェイユ アンソロジー』二〇一八年七月刊
新刊。字も大きく行間も広いので、読みやすい。ありがたい本だ。
・デイヴィッド・シルヴェスター『フランシス・ベイコン・インタヴュー』二〇一八年六
月刊、ちくま文庫
衝撃的な絵について淡々と語る。どきっとするようなことを突然ぱっと言うところに凄みがある。芸術作品は一瞬のひらめきと、そのときの成り行き次第な面があるということもわかっておもしろい。
・小林亜津子『改訂版 看護のための生命倫理』2004年11月、2014年3月改訂版第6刷、ナカニシヤ出版刊
良書である。臨床的実践例30ケースで学ぶ「看護倫理」入門、と帯にある。平易な問題提起と行き届いた実例の提示があり、類書の見本とすべき内容。私は医療看護系志望の学生たちにこれを読ませたいと思った。
☆ 追加 ついに出た、という感じの高校生向け小論文の名著。
・『石関の今すぐ書ける看護・医療系小論文』2018年3月刊、東進ブックス
私がふだん小論文・作文指導をしている時に言っていることとまったく同じことが書かれていたので、実は作文・表現指導の本を書いてみようかと思っていた気持ちが、半分ぐらいなくなった。半分ぐらいというのは、私は言語論や段落論や複文についての研究を参照しながら書いてみたいので、そこは違うので。しかし、実践的にはほぼこれで決まりかな、という簡潔で行き届いた仕上がりである。これにいまは書名うろ覚えだけれども、定番の「吉岡の小論文10章」とたしか河合塾刊の「理科系の小論文」の三冊で足りる。あとは自分で新聞を読み、新書を読み、ニュースを見て考えろ、だ。吉岡の本は、大学生になっても使えるよ、と言って買わせている。
※後日少し文章に手を入れた。18日に追記した。