「吟醸会」のベース基地であり、やや大げさに言うと「庶民の酒飲みの楽園」のテルさんの鮨店の”東屋”は、H製作所の本拠地のH市の南端で、G力研究の”日本のメッカ”と言われるT村に接する、H市K浜にあります。 H市の中では古い伝統が残っている地区でもあり、常磐沖のアンコウの水揚げの一番多い漁港を抱えた地区としても知られています。毎年9月の「吟醸会」はアンコウ鍋と決まっています。現在K浜港に水揚げされるアンコウは、それを獲った漁師さんの名前が記入されたタグが付けられており、「本物の常磐沖のアンコウ」の証明になっています。残念ながらこのアンコウのほとんどは築地に送られており、地元の私の周囲ですら食べたことがある人がきわめて少ない状態です。 もちろん「吟醸会」のアンコウ鍋は、「本物の常磐沖のアンコウ」で、私が個人的に面識のある名前のタグが付いていることも珍しいことではありません。
当然ながらテルさんはアンコウも捌けますしふぐも料理できます。テルさんの息子の光ちゃんは、料理専門学校、卒業後の修行先も京都だったため、ハモの料理が得意です。 酒は、お燗器による燗酒もありますが、ビールと一緒に冷蔵庫に、〆張鶴 純、八海山吟醸、鶴の友別撰(特撰)、千代の光吟醸造りが入っています。もちろん一合1500円などという”とんでもない価格”ではなく、ごく常識的価格で「庶民の酒飲み」に提供されています。
「吟醸会」や”友の会”を中心にしたテルさんの鮨店の常連は、漁師の親類がいたり漁港の関係者に知り合いがいたりすることで、子供のころから新鮮な魚を食べ慣れているし知識もある”厳しい消費者”とも言えます。若いころから、義兄でもある「吟醸会」のG来会長を筆頭とする常連に鍛えられてきたテルさんの鮨店は、鮨も料理もその料金より”価値”が高いものになっています。 私は友達や知り合いを連れて行くことはあまりないのですが、一緒に行くと必ず「そんな安くていいの」と言われるほど、「庶民の酒飲み」に優しい料金なのです。
テルさんの鮨店は、地元の常連だけしか相手しない排他的なお店でもありません。 東京や京都、大阪、神戸、仙台、北海道出身のG力研究所の人間も気楽に常連になり、大学に帰ってからもT村に来るときは必ずテルさんの鮨店に顔を見せに来るくらい、親しまれているのです。
「吟醸会」はテルさんの鮨店の定休日を利用し、2階の宴会のスペースを開放して開かれています。会費はおおむね五千円なのですが、その料理と”労力”だけでも赤字と思われます。飲み物は日本酒だけというのが唯一のルールで、「来るもの拒まず、去るもの追わず」ですが毎回25人~30人が参加します。料理と酒を楽しむだけの会で理屈や余計な規約がないため26年も続いています。酒の能書は誰も言いませんが、25年も造りのシーズンにテルさんやG力研究所のS高研究員の「吟醸会」の中心メンバーが通い続ける、南会津の國権の細井冷一蔵元は、「K浜の連中は、ふなぐちを飲んで楽しく笑い騒ぐだけだが、彼らは酒が分かっている蔵にとっては”怖い”連中」と言われています。 〆張鶴の宮尾行男社長にも、「酒の楽しみ方をよく知っている皆さんの姿が目に浮かぶようです」とのお言葉をFAXで頂いたこともあるのです。もちろん鶴の友の樋木尚一郎社長からも評価をいただいております。
樋木尚一郎社長や早福岩男さん、宮尾行男社長、嶋悌司先生、池田哲郎社長-----新潟の皆様のおかげで、私はほんの少しですが酒が分かるようになりましたが、テルさんと「吟醸会」の存在がなければ今も私は、「専門用語の羅列」でしか”酒を語る”ことができなかったのではないかと感じています。
もしあなたが、テルさんの鮨店の”東屋”の場所を特定でき、行ける地域に住んでいるのならぜひ一度行ってみて下さい、やや大げさではありますがなぜ私が「庶民の酒飲みの楽園」と書いたのか、その理由を納得してもらえると思うからです。
これで鶴の友について-2は終了です。最後まで見てくれた方、本当にありがとうございました。