♪窓を開ければ～～……

港は見えない。

……って、古っ。
本当の歌詞は、港が見える～～……だっけ？
昭和という時代に流行っていた歌。Ｍでも知っている。

てか、
窓を開ければ、音、音、音。
Ｍの住んでいるこの地域は、街の中心からは外れているけれど、
幹線道路沿いに店が連なっている商業地帯だった。
近年は幹線道路沿いの古いビルが壊され、
商店ではなくマンションが建つようになってきて、
商業地帯は生活圏にかわってきている。
でも、まず静かな時間ってものはない。
窓を開けるともう……そこは音の洪水。

近くの幹線道を通行する自家用車、営業車、バイク、緊急車両、
これらはひっきりなしに、２４時間絶賛営業中ってカンジで、
ブレーキのきしむ音から、エンジンの音、タイヤの音、
サイレンの音、重量のある車の重たそうな車体の音、
バカ丸出し若いにいちゃんの空ぶかしエンジン音と甲高いクラクション。
さすがに昔のヤンキーの「ゴットファーザー愛のテーマ」の音ではないけど。
……笑える。昔は頑張ってたね。それを考えたら今の若者は雑ね。
いやいや、そんな話ではなかった。
朝から休むことなく１日中、音、音、音の洪水。
ただ、明け方３時から４時くらいが比較的静かな時間帯かも。

朝明けはカラスの声とともに始まる。
裏のゴミ屋敷のオヤジが餌をやっているのを目撃したことがある。
たぶんそのせいなのか、
とにかくカラスが我が物顔でこの辺を占拠するときがある。
……朝早くからカアカアうるさいんだよぉぉぉ～～～

朝７時半から９時ころまでは、
通勤の車の音が増えてきて、それが落ち着いた頃、
近所の駐車場からファンベルトのきしむ音。
Ｍがここに越してから、ずっとその音が聞こえてるってことは、
持ち主は車の点検をしていないのかなあ？？？
ものすごく不思議。
これがまた空気を割くような何とも不快な音。
駐車場の不快な音はそれだけではなく、
車の防犯グッズというか、
クラクションが短くしつこく鳴るしくみになっているものが、
たまに作動してうるさかったりする。

そしてお次は犬の吠える声。
これがまた近所のマンションから聞こえてくる室内犬がしつこい。
飼い主がいないのか、しつけのできないヒトが飼い主なのか、
ひっきりなしに吠えている。
疲れないのかと思うくらい。気が付けば１時間以上も吠えたまま。
なんか……異常だと思う。
でも、これがほとんど毎日のことなんだけど……。
みんな、うるさいって思わないのかなあ？　そこが不思議なところ。
で、その犬の吠える声につられて、これまたバカ犬が吠えだす。
いや、犬がバカなんじゃなくて飼い主がバカなんだと思うけど。
躾のできない飼い主は窓を開けっ放しにしちゃダメっ！！　って言いたいわ。

でもって、天気の良い日は夕方あたりから、
近所のスナックが炭をおこして、店の前でバーベキューを始めるときがある。
これがまた大迷惑。
アルコールが入るので、ものすごい奇声が飛び交う。
これぞ奇声ラッシュ。
２～３時間ほどして、今度はスナックに入ってカラオケ。
店にエアコンがついていないからドアは開けっ放し。
そのまま音は遠慮なしにＭの部屋に侵入してくる。
へえ、いい度胸してんじゃん。Ｍにへたくそな歌を聞かせるなんて。

このカラオケ、毎日朝の３時までやってる。
日曜も祝日も関係なく、朝までカラオケってなに？
これって、どうなのよさ？

うっかり窓をあけてしまうと、気が狂いそうになるくらいうるさい。
そんな場所にＭは住んでしまった。

換気したいと思って窓を開けるとこんな感じ。
テレビの音もかき消され、ボリュームはだんだん大きくなる。
暑い夜は爽やかな夜風を入れたいと思って窓を開けると、
やっぱり↑あんなカンジ。

部屋の下の道路はレンガになっていて凸凹しているので、
タイヤの音がこれまたハンパなくうるさい。
しかも凸凹のせいでみんなエンジンをふかし気味で走る。
更にうるささが増す。

Ｍはそのひとつずつに叫びたくなる。

うるさあ～～～～いっ！！

でも、そんなことしたら近所で評判の変なオバサンになること間違いなし。
アブナイ人物になってしまう。

ダーが「やってみたら？」って言う。
「ヤダ。危険人物になりたくないもん」とＭが言うと、
「きっとＭがいるときは静かになると思うよ」と。
Ｍをダシにする作戦？？

その手には乗りませぬ。

窓を開ければ雑音の世界。
慣れるのが先か、Ｍが壊れるのが先か。

ま、そのうち引越だなあ～～
もう２年ここにいたもんね。

……というと、ダーがもう引越は面倒だ。と、
そっけなく言う。

いやいや、遊牧民はまだ健在なのよ。
そろそろ物件探しを始めようかな。
と、血が騒ぎだす今日この頃デあった。
でも年取るとたしかにメンドーになってくる。


窓さえ開けなければいいだけのハナシなんだけどね。