野田政権の大飯原子力発電所、再稼動をめぐる決定、姿勢が大きな問題となっています。野田政権、野田氏の原子力発電所事故に対する認識、感覚が問われている問題です。
原子力発電は、科学技術の問題として、優先的な検討が必要な課題です。この点では、現在の科学技術では安全に管理できる技術ではありません。事故が発生した場合は、一地域ではなく、国境を越えて、放射能汚染が拡散する激甚災害です。また、正常に稼動しても、核廃棄物の最終処理が、世界的にも定式化できない条件の産業です。したがって、稼動すること自体が技術的に、大きな禍根を残すような産業です。
エネルギー確保の視点からの検証が第二です。この点では、先進工業国ドイツは原子力発電所の全廃を決めました。それ以外でも、スイス、イタリアなども脱原子力政策をとっています。日本は海洋国家であり、風力発電、太陽電池エネルギー、水力発電などの可能性、潜在発電能力が十分あるといわれています。その開発に、国家として投資を行う必要があります。この点が、まったく、あいまいにされています。原子力発電が電力供給量の3割といわれていますが、2011年4月16日時点で、北海道泊原発の一基しか稼動はしていません。53基が停止していても電力供給には大きな障害はでていません。
第三は、電力コスト問題です。原子力が一番安いといわれていますが、核廃棄物処理費用、原子力事故などを考慮した場合、とてつもない(天井知らず)費用がかかっています。このコストを合算して、電力コストを計算すれば、原子力発電は最安値の電力とならないことは、誰が考えても明らかです。
第四は、国民にとって必要なエネルギー源かという点です。コストは安くない。科学技術の面からは安全性は保障できない。代替エネルギーはあるし、開発途上である。これらの点を、考えると、電力会社、原子力産業にとって必要な原子力発電所としか、存在価値がありません。電力会社、原子力産業にとって利益が出せる産業だから、原子力発電所を維持、再稼動させるべきとの理屈しか見当たりません。そこに、1年前の野田氏の発言が明らかになり、彼らの思惑と、姿勢がより鮮明となっています。
東京電力福島第一原発事故をめぐり、野田佳彦財務相(当時)が2011年3月31日夜の原子力災害対策本部会議で、東電の株価急落を懸念し、「(東電を)弱める発言は控えてほしい」と発言していたことがわかった。経済産業省原子力安全・保安院が4月13日、情報公開請求に対し、複数の会議メモを開示した。
会議は事故の約3週間後(2011年)で、このころ、原子力損害賠償法に基づく事故の補償が巨額になる見通しから、東電の株価は急落していた。2011年3月30日には東電の勝俣恒久会長は会社存続が厳しいとの見通しを示していた。
会議で野田財務相が「東電に国有化の話が出て、株価がストップ安に。株主60万人のうち、59万人ほどは個人で、経済への影響も大きい。東電を弱める発言は控えてほしい」と、東電への批判を牽制(けんせい)していた。