沖縄、広島、長崎などの平和宣言は、国内のみならず、世界的にも大きな政治的な意味と価値を持ちます。その理由は、これらの地域、自治体が、戦争による災禍が極端であり、非人間的であるからです。原爆の投下と放射能汚染、地域社会の壊滅的な破壊などは戦争であったとしても許されるような行為ではありません。
沖縄における米軍基地の立地、犯罪、事故は、現代社会においては許される範囲をはるかに超えたレベルです。このような状況を政治が解決することは待ったなしの課題です。にもかかわらず、安倍、自民党政権は、アメリカ言いなり、アメリカ軍の専横を許し、治外法権のような行為を自らとっています。このようなことが許されるはずがありません。
<社説>知事平和宣言 「辺野古反対」民意を反映
翁長雄志知事は6月23日の沖縄全戦没者追悼式で読み上げる平和宣言に、辺野古の新基地建設反対と県外移設要求を盛り込む方針を明らかにした。
新基地建設反対の訴えは、戦争に通ずる基地の過重負担から脱却し、平和な沖縄を希求する県民の意思を反映したものだ。平和宣言の趣旨にかなうものであり、翁長知事の方針を歓迎したい。
辺野古沖ではトンブロックの投下によるサンゴ破壊と人権を脅かす海上保安官の暴力的警備が続いている。キャンプ・シュワブのゲート前では山城博治沖縄平和運動センター議長らが刑特法違反の容疑で逮捕された。
いずれも平和に対する重大な挑戦である。宣言を通じて、これらの暴力行為に対する強い抗議の意思を示してほしい。
県知事が読み上げる平和宣言は戦没者の三十三回忌に当たる1977年に始まった。毎年、沖縄戦の悲惨さに触れ、不戦を誓ってきた。同時に米軍基地の過重負担を批判し、恒久平和の実現に向けた県民の決意を発してきた。
2011年以降は米軍普天間飛行場の県外移設に言及した。ところが仲井真弘多前知事は14年の宣言で県外移設要求の文言を削除しようとした。前年末の辺野古埋め立て承認を踏まえたものだった。
県政与党の再考要請もあり「県外への移設をはじめとするあらゆる方策を講じて」の表現に落ち着いたが、文言をめぐる仲井真弘多前知事の行為は多くの県民の疑念を生んだ。
ことしの宣言で辺野古反対に踏み込むのは、それが県政運営の柱であるというだけではなく、平和希求に裏打ちされた県民要求だからだ。戦後70年の宣言は沖縄発「基地ノー」の明確な意思表明となる。
翁長知事に対し、自民党の稲田朋美政調会長は記者会見で「沖縄県にとって重大な問題であると同時に、わが国の安全保障にも関わる問題であるので、そういったさまざまな観点から検討して、行動していただきたい」とけん制した。
しかし、政府・与党こそ「安全保障」を名目に人権と平和が蹂躙(じゅうりん)され続ける沖縄の現状を直視し、行動することを求めたい。それが平和宣言の具現化につながるからだ。
1977年の平和宣言も、基地による県民不安に触れ、全人類に平和の尊さを訴える沖縄の精神を強く発信した。私たちはこの理念をいささかもゆるがせにしてはならない。