ソウル市立美術館「微妙な三角関係」展、日本の映像アーティスト・小泉明郎氏
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
従軍慰安婦・神風特攻隊・嫌韓…日本政府の歴史歪曲を真正面から批判、「韓国人慰安婦の女性の作品も作りたい」
日本政府の歴史歪曲(わいきょく)を真正面から批判する若い日本人アーティストがいる。従軍慰安婦・神風特攻隊(第二次世界大戦時の日本軍による自爆攻撃)・嫌韓など、日本が背を向けたり歪曲したりする敏感な問題をテーマとして取り上げている小泉明郎氏(39)だ。米ニューヨーク近代美術館(MoMA)や英ロンドンのテート・モダンなど有名な美術館で展示会を開催、世界の舞台で活躍している。
この日本人アーティストが取り上げる歴史と直接関連のある国・韓国にその作品がやって来た。ソウル市立美術館で開催される韓中日3カ国のアーティスト展「微妙な三角関係」展(5月10日まで)に日本代表として出品したものだ。
教育学教授で、日本の教育システムに批判的だった父親の考えに基づき高校時代をカナダで過ごしたため、故国の歴史を一歩離れて客観的に見つめることができるという小泉氏に電子メールでインタビューした。メールを十数回やりとりする過程で、小泉氏は1つの質問に対しA4用紙の半分を使って誠実に答え、「絶対に伝えたい気持ち」には赤線を引いた。
-なぜ敏感な歴史問題を取り上げようとするのですか。
「今、日本は歴史に背を向け、ナショナリズム(国家主義)が極限にまで達しようとしている。好戦的で暴力的だった歴史を忘れている姿はあまりにも危険に見える。こうした視点からアーティストとして神風特攻隊をはじめとする日本のナショナリズムを取り上げなければ絶対に後悔する気がした。自分の本当の姿を知るには醜い面をまず知るべきだが、日本はそうでない」
-日本政府は「不都合で問題のあるアーティスト」と思っています。
「日本の歴史の恥部、ナショナリズムを取り上げているため、政府との関係が良いはずがない。私は慰安婦の歴史を書き換えようとしている政治家や歴史学者たちの方に深刻な問題があると思う。必要があるなら、日本の恥部を明らかにする作業をやめないだろう」
-韓国の入場者の中には「若き侍の肖像」(アーティストが神風特攻隊員役の俳優に繰り返し指示を出し、感情移入させる過程を描いた映像作品)が神風特攻隊のことを取り上げていること自体に拒否反応を示す人がいます。
「私の作品は違う文化的文脈から見れば誤解される可能性もある。だが、この作品は神風特攻隊が今の日本で再び美化されているという現実への批判だ。戦後長い間、神風特攻隊はタブーだった。その単語を使えばかつては『極端な国家主義者』というレッテルを貼られたが、今では人気ワードになった。(神風特攻隊の精神武装に使われた)『侍』という単語が『天皇のための軍隊』を作る際、完ぺきで理想的な道具として用いられ、若者たちを自殺特攻隊に追いやったという事実も知らない」
-「オーラル・ヒストリー」(日本人に1900年から46年までに起こった歴史の出来事について問う映像作品)には、日本人が間違って認識している歴史の知識がありのままに出てくる。
「日本人たちの歴史に対する無知さは予想よりもはるかに深刻だった。もしかしたら、このような現実が韓国の観客を怒らせるかもしれない。しかし、日本のそうした姿を隠したくはなかった。現在の日本人の心の状態を見せるためには、美しい面も醜い面もすべて見せなければならなかった」
-オランダに留学し、オランダ人慰安婦の話を知ったと聞きました。
「慰安婦の歴史が完全に消えたり、誤った歴史教科書によって歪曲されたりしてはならないと思った。2009年、日本人男性の醜いファンタジーを表現したパフォーマンス作品「男達のメロドラマ(Melodrama for Men)」を作った。オランダ人慰安婦(ジャン・ラフ・オハーンさん)の話も取り上げた。韓国人慰安婦の女性の話も取り上げたい。人々の記憶から彼女たちが消えないように、新たな方式で日本人たちに伝えたい」
-あなたが望む芸術とは?
「芸術は政治的な宣伝ではない。世の中が持つ複雑さや矛盾をとらえ、ありのまま見せたい。世の中の恥部を作品に込めていきたい。美しい世界を作るために」