中国の経済発展と巨大な人口、購買力は政治経済に大きな影響を与えています。その力を無視することはできません。中国、インドなどの経済的な発展は世界における政治経済関係を大きく変える要因となります。これらの国家を無視した外交関係、経済関係はあり得ないでしょう。そのことはアメリカであっても同じです。
[中央日報日本語版]「中国の経済は強大…周辺国を“封臣”にする」<インタビュー>
「中国は周辺国を経済的な封臣(vassal)のように中国に依存させる」。チャタムハウスのロビン・ニブレット所長の診断だ。「中国が望むためというより、中国の経済的な大きさと比重のため」と語った。しかしニブレット氏は中国が米国のようなグローバルスーパーパワーにはならないという見方を示した。先月24日に英ロンドンで朴振(パク・ジン)元国会外交通商統一委員長(韓国外大国際関係大学院客員教授)と行った対談でだ。オックスフォード大出身のニブレット氏は2007年からチャタムハウス所長を務めている。直前は米戦略国際問題研究所(CSIS)副所長だった。
--パクス・アメリカーナは予想より長く続くと思うか。
「今日の世界をみると、パクス・アメリカーナという言葉自体が粗雑に感じられる。しかし米国の軍事力が東アジアでは抑制的な効果を発揮するだろう。中国がアジア太平洋の安保秩序で米国と同等になっていくとみられる。米国を退けようとはしないだろうが、米国の自由にはさせないだろう」
--キッシンジャー元米国務長官は米中関係について共進化(co-evolutionary)的な関係だと表現した。
「米露関係よりはるかに相互補完的だとみる。中国は米国のようにグローバル化の勝者ということを立証している。そこに共進化の要素がある。米国と中国の利害は世界経済・金融・地域安保などシステムを安定的に維持するところにある。お互いを必要とすることをワシントンと北京のリーダーシップが理解している」
--米国は韓国の唯一の同盟であり、中国は最も大きな貿易パートナーだ。米中の間で韓国の役割は。
「韓国がさらに重要な役割をすることになるとみる。韓国は徐々に中国に依存する。しかし韓国と米国の安保関係は依然として核心的な部分として残るべきだとみる。これは北朝鮮とも関係がある。中国はある意味では韓国の統一を望まないと考える。(統一韓国が)米国の同盟として残るかもしれないからだ」
--中国の浮上に対応し、日本は米国と同盟を強化している。
「日本のような経済力を持つ国が人為的に小さな国防力を持つのはおかしい。日本は米国と密接に結びついている。(集団的自衛権が導入されても)安保体制内で自由行為者になるのではないという意味だ。重要なことは、日本の政党が軍国主義の過去から決別しなければいけない。日本の首相と議員が靖国神社などを訪問するのは、隣国に挑発と見なされるだろう」
--北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)政権は軍事的冒険主義の動きを続けている。
「私が懸念するのは、北朝鮮が(金正恩の)私有システムによって統治されるという点だ。狂信的な集団文化(cult)によるもののようだ。そのような統治は予測不可能だ。北朝鮮はミャンマー式の変化ができない。結局、韓国によって吸収されるという恐れのためだ。このため期待できる最善の方法、北朝鮮がもう少し経済開放を許容し、弾力性のある経済に発展していくことだ。10年、20年かかるプロセスかもしれない」
--金正恩政権はそのような変化を実現できるほど安定的か。
「政権の安定のための唯一の方法は、経済成長をしなければいけないという点だ。中国などで見られるように、一党体制でも経済成長をすれば長く執権できる。もし(北朝鮮が)成長できなければ非常に危険になるだろう。南北の統一は、東ドイツ政府が『我々の負けだ。我々が行く』といった冷戦当時のように平和な方式ではないだろう。韓半島(朝鮮半島)には当分は統一が難しい地政学的な環境がある。統一はかなりの時間がかかるだろう」
--西欧の国では英国が最初に中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)に加入すると発表した。
「総選挙を2カ月後に控えて参加決定をするほど、英国政府が中国と新興国を重視していることを見せる。創立メンバーになるのが透明性を高め、AIIB内で英国の影響力を最大化できると判断したようだ。外部からこのような原則に対して圧力を加えるべきだという米国の考えに英国政府は同意しない」
--中東でイスラム国(IS)が ばっこ(跋扈) するなど深刻な混乱状態だ。
「国際社会が中東のためにできることはほとんどないことを悟ったと考える。中東は自ら解決しなければいけない。外部の人が介入すれば分裂をさらに加速させる。一方を助ければ他方には敵となる。軍事的には変化させることができない。西側は介入の限界を知らなければいけない」
--国際的な原油安がグローバル地政学に及ぼす影響は。
「米国は石油輸出国機構(OPEC)を委縮させるほどの原油生産能力を持った。OPECが過去の影響力を取り戻すのは難しくなるかもしれない。近いうちに原油価格が1バレルあたり100ドルに上がることはなさそうだ。中期的には不安定になる可能性がある。地政学的にサウジアラビアは恩恵を受け、イラン・ロシアは打撃を受けた。最も重要なのはグローバル経済が原油安のおかげで上向いているということだ」
◆チャタムハウス=1920年にロンドンで王立国際問題研究所として設立された外交・安保分野の世界的な研究機関。今年1月の米ペンシルベニア大世界研究所の評価で、米ブルッキングス研究所に次ぐ2位となった。昨年から中央日報・維民文化財団・JTBCとともに「Jグローバル-チャタムハウスフォーラム」を開催している。討論の内容は報道するものの発言者はもちろん討論出席者の身分を公開しない報道準則である、いわゆる「チャタムハウスルール」でも有名だ。