明け方に 隣りで『痛い、痛い』と 唸っている人がいた。
鈍感な妻でも たまには 夫のピンチに目が覚める。。。と
我ながら愛情の深さに感心し 卒倒しそうになったが
実は 「ま」さんが 私をゆすり起こしていたのであった。
その夜は 諸般の事情で エアコンをドライ運転していた。
事情と言うほどのことでもないが 私の友達がリビングのソファーで寝ていたのだ。
この夏初めての <エアコンの夜>である。
当然のように私はベッドで 布団をかぶっていた。
「ま」さんは 私の友達が家の中にいる、という緊張感からか
パンツは脱いでいなかった。
パンツ一丁で それ以外は丸出しで爆睡していた。
そして よく冷えた部屋の中で 突然、足がつった。
足がつる寸前まで 「ま」さんは夢を見ていた。
・・・・
SMAPxSMAP に出演していたらしい。
巨大な電器店の店員がSMAPのメンバーで
「ま」さんは売り場を回り 最後にキムタクと会話をしたそうだ。
「ま」 『イロイロあったんですよ・・・』
キムタク 『その話、今度 ゆっくりききたいなぁ…』
…という男同士の心通わすシーンから 一転
華やかなステージで「ま」さんはマイクを握り
自慢ののどでメンバーと共演するハズだったらしい。
『俺の歌を聴いたら、全員泣くぜぇ・・・』くらいの 意気込みだったが
マイクに手を伸ばした瞬間に 足がつって歌えなくなった。
「ま」さんはものすごく 口惜しかったらしい。
その悔しさを ココロにそっとしまうことができなかったので
痛みに耐え、寝ている私を起こし
痛がりながら 半泣きで 夢の内容を語り聞かせるのである。
痛みと 歌えなかった無念さとがごっちゃになった中年男の表情に
私は爆笑し、それから心底同情した。。
(無理やり起こされて 笑わされている私は それでもシアワセ者である。)
夢の話が終わってしまうと つっている足がさらに痛くなったらしい。
「ま」さんは 下半身をベッドからはみ出させ 足が楽な角度を探し始めた。
『ボール!ボール!』とサケビながら
バランスボールを膝の下に置いてその角度を保てるようにしてくれ、という指示をした。
愛する夫のためであるから
眠い目をこすりつつ 喜んで従った。
「ま」さんが下半身をバランスボールで支える姿を見ながら
私は ふと エアコンが運転中なことを思い出した。
ここで一発、エアコン様には悪者になっていただこう。
そうすれば 「ま」さんが<とっても涼しい快適な夜をエアコンで>の気持ちを
きっぱりと捨て去るかもしれない。
野心に燃える 計算高い私は
「足がつったのはエアコンで冷えたせいだ」と雄弁に語り
勝手な結論を付け
大袈裟に 窓を全開にした。
明け方の 心地よい風が吹く部屋で
痛みに耐え ベッドを斜めに占領する「ま」さんには 強く強く同情しながらも
やっぱり自分の眠りへの欲求を優先させてしまい
床に掛布団を広げて とっとと寝てしまった冷たい妻は私です。
やっぱり、大きいベッドを買うべき?
それとも 夏は別に寝る方が良い?
別に寝て 冷却ジェルパッドのようなものを「ま」さんに使ってもらうのも方法かも。
そろそろ結論を出さなくちゃ。