自分セラピー

「自分を好きでいる」ことは人生を豊かにしてくれます。そこに気づかせてくれる沢山のファンタジー文学を紹介していきます

きりこは

2015-07-14 06:00:45 | おもしろかった本
これ、本の書き出し。


「 きりこは、ぶすである 」


西加奈子さんの 「 きりこについて 」 の、最初の一文。


まったく驚いてしまう。


おまけに 「 ぶす 」 の文字は、太字で書かれている。


小説は、その書き出しで決まるという。


トンネルを超えるとそこは雪国だったり、


智に働けば角が立つだったり、


メロスは激怒した、だったり。


でも、きりこはぶすである、は、衝撃だ。


そして、ボクは一気にこのものがたりに引き込まれた。


その、ぶすさ加減と言ったら、「 顔の輪郭はぶよぶよ、点のような目、アフリカ大陸をひっくり返したような鼻、激悪な歯並び 」 なのである。


ちょっと想像しにくいほどの顔立ちなのだけれど、そのきりこが、マァマとパァパに 「 かわいい 」 と言われ続けてそれはそれは大事に育てられる。


そういった意味で、このきりこは、愛情の貯金をたっぷりと心に蓄えて生きていけることがわかる。


きりこは、自分がぶすであることを全く知らずに育つのだ。


いわれたとしても、「ぶす」の意味が分からない。


西加奈子さんの、文体も、運び方も、ボクにとってはとても新鮮だった。


読んだ人とはこの物語について分かち合いたくなるし、読んでいない人にはぜひとも読んでほしい。


猫が大好きなら、さらにこの物語にのめりこむだろう。


オモシロイ、ばっかりで内容はほとんど書かなかったけれど、この人の作品、他も読んでみたくなった。



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