今回は、チト長くなりますが、私なりのFCV論を書きたいと思いました。
■FCVに飛びついた政府
FCVは水素を燃料に走行し、二酸化炭素(CO2)などを排出しないことから「究極のエコカ ー」と呼ばれ、地球温暖化防止やエネルギー対策として期待されている。
自動車大手は、CAFÉやZEV法など70年代のエミッション規制を思い出すような厳しい規制を目の当たりにして、FCVの研究開発を加速している。
アベノミクスの三本の矢は「大胆な金融緩和」「機動的な財政政策」「民間投資を喚起する成長戦略」だが、この成長戦略の中では、クリーンで経済的なエネルギー需給の実現が大きな柱となっており、FCVに目をつけた。FCVの市場投入を本格化することを踏まえ、補助金や税制優遇など後押しを実施している。
FCVの技術者から見れば、まだまだ研究段階のものが、「将来の矢」を探していた政府から目をつけられ、また社内でも先進技術イメージで他社を引き離して良いブランドイメージが作れて量産車の販売につながる、また補助金も出るので販売台数が期待できFCV研究の投資の回収も早く出来るかもしれない、等など、いわゆる「FCV一人歩き」的な状況になっていると思う。
現実的に政府の後押しのもと、2014年末にトヨタが世界初の一般向け燃料電池車「MIRAI(ミライ)」を発売。
基本的に世の中にためになるモノで、お客さんが欲しいと思うモノだが時期尚早で価格が高くて買えないモノは、当初税金面などの後押しをして、お客さんもこれなら買おうと数が出て、メーカーは量産体制に入り安くなる。インフラもそんなに数が出るなら投資効率OKとなり充実する。
つまり、的確に将来のあるべき姿を見据え上で、税金投入して後押しするのは正しいことだ。
残念ながら、FCVは「的確に将来のあるべき姿」かもしれないが、問題は技術進化とのリンクだ。
例えば「宇宙旅行」なども「的確に将来のあるべき姿」だが技術がおいついていない。そういうものに、税金投入して後押しするのか? やはり、ある程度見えないとね。
■FCVは何がダメか
FCV最大の商品課題は、クルマのパッケージ効率が大幅に落ちることだ。
HEVでもパッケージ効率は落ちたが、元々あまり使わないのに無用に大きかったリヤトランク部分をいじめて成立させているために、ユーザーの被害レベルは小さかった。
しかし、FCVはあまりにもユーザー被害が大きい。
ホンダのFCXクラリティはユーザーがそう感じないように5人乗りとしているが、トヨタのFCXミライは気にせず4人乗りだ。
最も基本的なことは、ユーザーがFCVを「欲しい」と思ってないことにある。鶏卵の関係の水素スタンドの事もあるが、基本的に今のガソリン車、HEVで不満はない。
FCVに乗ると何が良いの、何が楽しいの?
「その走りはFCVそのもの」なんてことはなく、EVそのものだ。その上で水素発電システムのお陰で、スペースはとられ、重量も重く・・FCVという新しいクルマがユーザーに提供できる新しい魅力は何だ?
それがない。
HEVは、自動車の新技術でエンジンでなくモーターで音もなく走る感じが新しく、そこに未来感を感じて、日本のユーザーは追加費用を払っている。
ホンダのIMAはユーザー実利のことを良く考えた良いシステムだと思うが、走りに新しさがなかった。
燃費良いと言う事は勿論あるが、つまり実質的なメリットもだが、それ以上に未来的なクルマを買って乗ることにユーザーが喜びを見出せるということは大切だ。
FCVに未来を感じない?
地球環境に良いかも知れないが、それをユーザーが実感できない。つまり、造り供給側は良いが、使い手がつまらない。これでは、FCVは絶対にひろがらない。今のままじゃ、富裕層に「地球環境の為にお金持ちなんだから買ってよ」しかない。
■FCVへの税金投入は無駄?
何れにしても、FCVに税金投入は無駄遣いと考える。(EVも同様?)。
また、FCVに税金入れるのは、FCVを持っていないメーカーとの差別になっているのではないか?それでも、FCVを持っていないメーカーがそんなに騒がないのは、地球環境に対する正義なので言えないのかもしれない?あるいは、どうせFCVは売れないと読んでいるのか?
じゃ、永遠にガソリン、ディーゼル、HEVのままで良いのか? そんな事はいっていない。時期の問題なのだ。
普及を目指す前に、技術と商品でやることがまだある。ユーザーに欲しいと思ってもらえるまでには、あまりにも多くの技術課題があり過ぎる。
そこで、私の提案は、
勿論、環境車は必要なのだが、末端の話題性のあるFCVやEVで騒ぐのでなく、(いくら騒いでも、騒ぎでしかない)思考の範囲をひろげ、深めて、今の自動車の代替えでEVやFCVと騒ぐのでなく、つまり、クルマや電車飛行機というような、移動体端末の議論でなく、
これからの未来の、生活・街づくり、つまりエネルギーを基本とした人の社会のあるべき姿コンセプトを構築して、その後に順にクルマのような移動体端末に行くのが本来ではないか?
この順番が間違っていると思う。
民間主導だと、つまり民間への丸投げでは、解決しない課題だという事です。自分で考えないで、民間に丸投げするから、末端議論になってしまう。
■どうすれば良いか?
また、民間もスマートシティがうまくいかないことでわかるように、本来のあるべき協業が中々できません。
つまり、電気・建物・通信・IT・モビリティなど専門化した民間企業で、まあ言えば縦組織の集合体みたいなもので、それぞれの既得権益やメリットは追いかけられるが、全体最適の話がうまくいかない。
一時期、IBMのようなインテグレーターと呼ばれるようなヨコ刺し、企画本部、みたいな立場の民間企業もありましたが、結局うまくいかない。
民間はどうしても、世の為人の為とは言え、それぞれ株式会社なので自分達の利益を追求せざるを得ない。それぞれに都合の良いように考えるものです。
「地球環境」ですから、地球レベルなので国単位でもダメですが、なかなか国という縦組織の集合体をまとめるのにも難しさがあります。
野球の何とかジャパンじゃないけど、各カーメーカーから優秀な人材を提供してもらって、国の予算で、国家レベルの視野で、ヨコ刺しして研究開発していくしかないのではと思います。
その為には、トップになる政府というか役所も縦割りを超えたところが必要で、そこに超優秀な人材を投入して、その人に「地球環境」「エネルギー」「街やモビリティ」など、縦組織部分を勉強していただいた上で、采配をふるってもらえれば最高です。
超小型モビリティだって、政府はこういうふうに進めず丸投げ状態でしたから、トンズラしてしまいます。
日産自動車はすでにあるルノーのトゥイジーを持ってきただけですからリスクは少ないですが、真剣に取り組んだトヨタやホンダはつらいですよね。
やはり、FCVを推し進めようと思うと本質的、本来的に考えないとダメだと思います。
しかし、大変ですが、この取り組み方の方が、税金(補助金)バラマキより、ずっと良い話ではないでしょうか?
成果が読みきれないので、今の政府では無理でしょうが、こういうお金、税金の使い方の方が、将来に繋がると思います。
ただひとつの大きな課題は、「超優秀な人材」が役所にいないことでしょうね。
これは、教育システムから変えないといけません。
今は、クリエーティブな事より、つまりクリエーターより、オペレーター作りの教育がはびこっていますからね。
なんだか芋づる式になっていきますね。
最後にミライの場合の補助金額 ⇒ 約225万/台
車両価格は723.6万円ながら、エコカー減税、自動車グリーン税制に政府補助金202万円を加えると優遇額は225万円を超える状況。
これ、我々の税金ですよ。
ホントにFCVに税金投入していることは、いいことなのでしょうか?
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