湖の子守唄

琵琶湖・湖北での生活、四季おりおりの
風景の移り変わり、旅先でのふれ逢いなど、
つれづれなるままに、語りたい。

敦賀・トンネル温泉

2011年03月07日 | 詩歌・歳時記

明治のみ世、まず東海道にレールが敷かれ、次に北陸線の計画が立てられた訳だが、長浜のちりめん組合の猛反対にあって、路線を変えなければならなくなった。曰く、ちりめんの布地が蒸気機関車の煙りで汚れると言う訳だ。そのため、関ヶ原から山裾を迂回して越前海岸へ至ったのが、当時のルートであった。

今庄から杉津へ行く途中、むかしの汽車のトンネルが、一方通行の車道になっている。青信号で進入するのだが、インディ・ジョーンズの世界に紛れ込んだごとき、不思議な体験を味わえる。それはともかく、昭和になって米原を経由して、長浜から敦賀へて新しい北陸線がひかれた訳だが、そのトンネル工事の際、温泉が吹き出したのだった。それ故、「トンネル温泉」と称する。

敦賀の町の外れ、ひとつの山にホテル、旅館などいくつかの温泉施設が建っている。以前は日帰りの利用ができた、国民宿舎があったのだが、老朽化により閉鎖され、新しく建てられたのが、敦賀インター・チェンジを見下ろす高台に、豪華客船を思わせる風貌の「リラ・ポート」である。ゆったりとし
た造り、清潔で広々とした空間である。一階が受付、売店。二階に洋間と和室の休憩室とレストランがあり、三階が浴室だ。地下1500メートルから汲み上げた温泉とトンネル温泉を引いた、二つの湯槽があり、2倍楽しめる訳だ。肌がつるつるになる良いお湯である。露天風呂もあり、雪の日の風情は堪えられない。反対端には、温泉プールがあり、ジェット水流に身体を当てていると、1週間の疲れがスーと抜けていく気がする。お湯のなかをひたすら歩くひと。インストラクチャーの指導のもと、水中体操するひと。思い思いに楽しんでいる。入浴後もお楽しみが待っている。越前の海の豊富な魚介類、越前おろしそばも、処の名物である。車で10分ほど走ればたくさんの海産物店が集まった市場があり、今なら越前カニを求める人たちで、大にぎわいだ。この地は古代から、大陸との交流の窓口になっていた。鎧兜の異国人を見て「頭に角を生やした人が来る所」つのが……敦賀の名の謂われである。