湖の子守唄

琵琶湖・湖北での生活、四季おりおりの
風景の移り変わり、旅先でのふれ逢いなど、
つれづれなるままに、語りたい。

旅立ちの衣 ②

2012年02月23日 | 詩歌・歳時記

                 

死んだ母に、納棺の前に死に衣装を着せた。

あらかじめ母が用意をしていたのだった。 畳紙に包まれた、醒ヶ井の湧き水のような

清げな水色の死に衣装であった。 母の文字で「旅立ちの衣」と大書してあり、

その下には 「みなさま、ありがとうございました」 と書かれてあった。

          風花や母のみたまの舞ふごとく

そして自分が選んだ、一葉の写真。 喪服の細工はしないで、普段着のままの写真で・・・

というのが母の願いだった。 

          母逝きぬ手縫いの浴衣身にまとひ

葬儀が終わり、火葬場へ行く。天気予報は大雪注意報だった。 まして火葬場は雪の深い

北方なのだ。 けれども、粉雪がちらほらと詩歌を誘うように舞っているだけであった。

          観音のごとき死に顔

          たらちねの母に寄り添う

          如月の雨

散歩に行って、帰ってくると、空き缶やポイ捨てのごみを老人車に拾い集めてくる母であった。

そんな母の積み重ねた徳と、私たちへの変わらぬ愛情が、よい天気をもたらしてくれたと、

信じています。 天のずっと上で、いつも私たちを見守ってくれている、母なのです。

                         

          おだやかな母の死顔や針供養  

いみじくも、葬儀の日は和裁に一生を捧げた母にふさわしい「針供養」の日でした。

   肩先の蒲団は二度と上下せぬ

   母へ訪のへ

   永久のやすらぎ

   

   わた雪や母はお骨となりたもふ

   雪深し母を思ひて米をとぐ

          長浜・盆梅