久遠
旅先の小さな美術館で
あなたの絵に逢いました
春の歓びに揺れるさくら
つかの間の風に散る花びらを
見上げているのは僕ですね
アトリエのあなたの背中が好きでした
春はふらりと行き先告げず
旅に出ましたね
自由に生きるということは
決して我儘に生きることじゃなくて
自由に生きるということは
自分を見つめることですね
あなたは勇気があったのですね
ひとりだけのフロアで
あなたの心に触れました
黄金色に色づく街の
歩道に舞った葉の上の
長い影は僕ですね
アトリエの絵の具の匂いが好きでした
秋にふらりと戻ってきては
キャンバスに向かっていましたね
自分を生きるということは
きっとひとりで生きることじゃなくて
自分を生きるということは
思いを繋ぐことですね
あなたは勇気があったのですね
静かに流れる時間の中で
あなたの声を聞きました
緑深い森にあふれる光へと
迷いながら確かめながら
歩いているのは僕ですね