老いの途中で・・・

人生という“旅”は自分でゴールを設定できない旅。
“老い”を身近に感じつつ、近況や色々な思いを記します。

原発廃炉の課題  その③  ~原発廃炉作業の遅れと、今後の懸念~

2019年11月22日 20時02分49秒 | 原発関係
 先に見たように、東海原発の廃炉については、当初は2017年度の終了のはずが、現在ではまだ第2段階の作業中で、完了は2030年度と先延ばしされています。

 また、63年に国内で初めて原子力発電に成功した日本原子力研究所(現・日本原子力研究開発機構)の試験炉「JPDR」は、76年に運転を終えて96年に廃炉を完了させたとしていますが、廃炉で生じた放射性廃棄物約3,770トンは、今も敷地内に残ったままで、正確には廃炉完了とは言えないでしょう。

 このように先延ばしされ続けている理由は、初めての作業であり、作業の段取りや使用する機材の段取りに手間取ったりということもあるようですが、最大の理由は「処分方法・容器や、処分場が未決定」ということの様です。即ち、

◆その②で延べた、廃炉作業の流れと、発生する放射性廃棄物の関係で言えば、
   L3:第1/2段階で
   L2:第2/3段階で
   L1:第3段階で
 発生すると言われています。

◆しかし、規制委が「L1」の処分場に関する規制の基準作りをまだ終えていないので、作業主体者である電事連は処分先を探すのもままならないし、「L2」についても基準こそあるが、容器基準などは未設定の様ですし、処分先は未定です。
 このため、原電は「L1」や「L2」の廃棄物が出る「第3段階」に進めず、終了予定を延期せざるを得ないというのが実情のようです。
 また、「L3」は東海原発の敷地内に埋めることにしているが、「L1」「L2」の処分場を確保できなければ、解体しても行き場のない大量の「ごみ」であふれ、作業が滞りかねない状況です。


 以上、我が国の商業用原発で初めての廃炉作業中である、東海原発の状況を見てきましたが、今後の我が国の原発の廃炉のことを考えると、うすら寒い思いがします。即ち、

◆既に廃炉作業に入っている原発を見て見ると、「第1段階」を終え、原子炉の周辺にある設備などを解体する「第2段階」に進んでいるのは、原電の東海の他、中部電力の浜岡1、2号機(静岡県)や原電敦賀1号機(福井県)の計4基です。
 浜岡の1号機は76年、2号機は78年にそれぞれ営業運転を始めたが、老朽化などにより、いずれも09年1月に運転を終え、その年の11月に始まった廃炉作業は、共に36年度迄の予定です。

◆解体中の原発のうち、原子炉の本体を解体する「第3段階」に入った施設はまだありあません。順調に進んだとしても、多くは20年代半ば以降になる見通しです。

◆福島第1原発事故を契機に原発の安全対策費がかさんだり、原発の運転期間が原則40年に制限されたので、老朽化したり、効率の悪い比較的出力の小さいものや、更に近くに活断層が見つかった原発の「廃炉」が増えており、現在では廃炉予定の原発はすでに作業に入っている物も含めて、計24基にもなります。
 これは、日本に建設された商業用原子炉全57基の4割にもなりますが、原発を取り巻く社会環境を考えれば、廃炉に向う原発の数はますます増えて行くようです。

電事連の試算によると日本にある原発全57基が廃炉になると、その放射性廃棄物の総量は何と計45万トンと見込まれるようです。


以上見てきたように、原発というのは順調に稼働していたとしても、その廃炉には極めて長期にわたる作業を要し、発生する放射性廃棄物の処理方法・場所などもまだ正式に決まっていません。

そして、まだ明らかにはなっていませんが、今後廃炉作業が増えるにつれ、危険作業に従事する作業員の確保も大きな問題になるでしょう。

正に、以前から指摘されている“トイレのない家”の問題が、現実として突きつけられたということです。
更に使用済み核燃料の問題などを考えれば、良くぞまあ、こんな危険性とリスクのある事業に突き進んだもんだという、目先の利益だけを考える企業や政治の仕組みの愚かさに唖然とするのが、正常な精神ではないでしょうか。


 一方、事故を起こした福島第1原発の1~4号機は、核燃料などが溶け落ちた「燃料デブリ」の存在や、地下水が原子炉建屋内に流れ込んで増加する汚染水の対策などの特殊な要素があり、通常の廃炉工程とは全く異なるため、政府と東電が決めた工程表に基づいて作業が進められています。
予定では、11年12月から30~40年後までに廃炉を完了するとしているが果してどうでしょうか。
(まさ)