7月12日、積丹の海辺で朝を迎えました。
べた凪の海を眺めながら、クロワッサンとオレンジジュースで朝食を済ませました。
そして、積丹半島を横切り、古平町へと車を走らせました。
ナビが目的地まで残り数㎞と示す古平町の入口辺りで、海沿いの路傍に幹を伸ばす高木が花を咲かせていました。
少し通り過ぎた車をバックで戻し、木の様子を観察しました。
何の木でしょう?
葉は偶数羽状複葉で、小葉は6~7対程度、小葉に切れ込みはありません。
小さな緑色の花が地面に散り落ちていました。
花片は5枚、雄蕊は9本、雄蕊が短い花もあります。
幹は平滑で、縦方向に縞模様が入ります。
これらの様子からムクロジだろうと考えましたが、帰宅後に調べると、どの図鑑にも、ムクロジは茨木県・新潟県以南に分布と記されています。
もしこの木がムクロジならば、従来からの認識がくつがえります。
メールで古平町に、情報があれば教えて欲しいと頼みましたが、返事はありませんでした。
無理もありません。
研究者でなければ、木に興味を示す人など、そう多くはないのです。
ムクロジの果実はサポニンを含む為、昔はせっけんの代用に用いられましたので人が植えた可能性もありますが、新潟以南に分布する木が、北海道の古平で育つ事実は、非常に示唆に富む現象のように思えます。
朝7時少し前に禅源寺の入口に到着しました。
入口に2本の石柱が建ち、車一台分に舗装された道が本堂へ向かって伸びていました。
道に車の跡があるので、そのまま進むと、本堂の前に出ましたが、寺は静まりかえり、人の気配がありません。
本堂前に車を止めて、茶ノ木を探しましたが見つかりませんでした。
10分ほど境内をウロウロしていると、ご住職が寺から出てこられたので、茶ノ木が見たくて、東京から訪ね来たことを伝えました。
するとご住職は、「ご案内しましょう」と言って、舗装された道の横からヤブに入り、膝の高さほどの茶ノ木の前で、これですと指を指されました。
想像より小さいことに戸惑うと、ご住職はそれを察し、「冬の雪に埋もれる高さより大きくは育ちません」と説明されました。
私は若い頃、山登りを趣味としていましたので、北海道の冬山に登ると、外がマイナス40度以下でも、雪洞の中は温かいことを知っています。
この茶ノ木も、雪に埋もれて、寒さを凌いでいるのでしょう。
茶ノ木は花を咲かせ、実を付けます。
周囲に実生株らしきものを認めました。
ご住職に、今回は北海道のツバキを見たくて訪ね来たことを説明すると、ツバキならここにもありますよと言って、2ⅿほど離れた場所にご案内頂きました。
ツバキはほったらかしだそうで、1m程の高さに折れて曲がった幹が白い木肌を見せていました。
夏草に覆われ、真横からの写真しかなくて、全体像が分かり難いのですが、雪積もる高さ辺りで折れた幹が、そのまま横を向いていました。
しかし、幾つかの枝は新葉を付けて、樹勢に衰えは感じません。
このツバキも雪に埋もれ、冬の寒さから守られている様子でした。
更にご住職は、「古平では、昔から多くの家がツバキを植えています」と仰います。
「本当ですか?」
「ええ、街を探せば、きっとツバキを植えた家が見つかりますよ」とのお話でした。
詳しい話は省略しますが、私は「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」の方法で尋ね歩き、二軒のお宅で、以下の写真のような、庭に育つツバキを見せて頂くことができました。
ということで、古平町では、道南ほどではないにしても、冬の冷たい風に晒される場所を避ければ、ツバキを育てるのは、それほど難しことではなさそうです。
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