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「いのちぼうにふろう」映画版

2005年02月03日 | ★ぐっとくる時代劇
先月劇場で無名塾のお芝居版を見たので、
小林正樹監督による映画を再見。

脚本は舞台と同じ仲代達矢の妻だった隆巴。

深川縁にある、安楽亭という一膳めし屋に集まる荒くれ男たち。
主人(中村翫右衛門)は
世の中からはじきだされたそれらの若者を雇い、
ご禁制の抜荷をしていた。

そこへ独りの若者(山本圭)が飛び込んできて、
貧しさのため女郎に売られそうな恋人(酒井和歌子)を助けたいと告白する。
最初は若者をからかっていたならずものたちだったが、
この二人の恋を成就させてやるために人肌脱ごうと言い出す。

山本周五郎原作。
悪のふきだまりのような安楽亭が舞台なので
全体的にトーンは明るくはない。
武満徹の音楽もモノトーンで無機的。

若い塾生たちによる熱気に溢れた芝居も素晴らしかったが、
映画版は佐藤慶、岸田森、山本圭、栗原小巻、神山繁、
中村翫右衛門、勝新太郎、仲代達矢などという
名優の、味のある芝居が楽しめる。
中でも勝新太郎にゃ~参った。参りました。

勝が演じたのは、安楽亭に夜毎やってきては
のんだくれる謎の男なのだが、
この映画のキーになるような重要な役だ。
長い独白シーンがある。
ここが聞かせどころ、見せ所。
江戸っ子弁、ほろ酔い加減の語り口が聞かせる!
男の身の上話に引きずり込まれ、心底泣けた!
やっぱりこの人は天才だ。
ダイアモンドのような素晴らしい独り芝居だった。

仲代達矢は小林監督の作品に出ていると
生き生きしているように見える。
俳優さんと監督にも相性があるように思う。
つらい過去を背負ったはぐれもの定七を演じて、
ルビーのようにあかあかと輝いていた。

仲代達矢がルビーなら山本圭の演技はサファイアのようだ。
硬質の光を放ってすがすがしい。
舞台では勝新太郎の演じた酔っ払いをやって貫禄を見せていたが、
こちらの役のほうがあっているように思う。
真面目でいちずな若者・・

あらくれものたちの中で紅一点の栗原小巻は
まるで一粒の真珠のようだった。
「あたし、おとっつあんの娘だもの。」芯の強い娘役。

なんだか宝石箱のようになってしまった、安楽亭。

葦が生い茂る暗く寂しい深川で男たちが一瞬きらりと光り、散っていった。
百両、千両の金がなんだ!
もっと大事なものがある・・と言ってみたくなる映画!

1971年 小林正樹監督作品 隆巴脚本 東宝 
原作 山本周五郎「深川安楽亭」より

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