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「女と三悪人」

2005年05月13日 | ★ぐっとくる時代劇
井上梅次の脚本がいい!
江戸時代版「天井桟敷の人々」。

「知らざあ言って聞かせやしょう・・」

歌舞伎の「弁天小僧」、「娘道成寺」を贅沢にからめて、
山本富士子をめぐるはぐれもの三人・滝運和尚 (勝新太郎)・鶴木勘十郎(大木実)
・芳之助(市川雷蔵)の恋の鞘当て、奇妙な友情を描く。

三悪人というところから黙阿弥の「三人吉三」も思い出してしまう。
(なまぐさ坊主もいるし)

江戸時代も末の頃。
相次ぐ貨幣制度の変化で世間は混乱。
庶民の暮らしは悪くなるばかり。

泥棒横丁と呼ばれる両国界隈。
昼も夜も人の波がひかない。

隅田川の川べり、芝居小屋、
にぎわう江戸の町などの美術も素晴らしい。

芝居小屋の師匠・喜久之助 に山本富士子。
モテモテ。ちょっと歩けば知り合いに出会う。
パトロンが囁く。
「お前の知り人はロクな奴はいないな」
「育ちが泥沼ですもの。でもアタシは泥沼が大好き。
泥が骨まで染み付いてんでしょうねぇ」

名台詞の目白押し。

「医者は無用。呼ぶなら坊主にせい」

あきらめていた夢を再び追い求めようとする二人。
娘道成寺の踊りで雷蔵を想う女心をシンクロさせるところもニクイ演出。

雷蔵の女形の芝居、山本富士子の男役も
見られる欲張りな映画。
大木実+井上梅次といえば、
あの大傑作トンデモ映画「黒蜥蜴」があった!

雑踏で始まり雑踏で終わる。
時代の閉塞感は現代にも似ている。

1962年 井上梅次監督作品  脚本 井上梅次 大映

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